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更新日:2023年2月10日

札苗再発見その16

龍神のルーツを求めて

「燃えれ!わが街」といえば「龍の舞」。若者たちが重さ100キロにもなる龍を緩急自在に操る。

毎年、8月の第1土曜・日曜に札苗中央公園で開催される「燃えれ!わが街」。平成5年に始まり、今年で17回目を迎えたこの夏祭りは、今ではすっかり札苗地区の夏の定番、東区でも屈指の夏祭りに成長しました。
今年も2日間、大勢の方でにぎわいましたが、クライマックスは「モエレ龍神太鼓」の迫力ある響きと「龍の舞」。体長約20メートルの金色の龍を、地元の若者が担ぎ、勇壮な舞を披露しました。
龍神をモチーフとしたお祭りには、日本各地で有名なものがありますが、なぜ、ここ札苗地区でも“龍”を取り入れることになったのか、祭りの余韻がまだ残る夏のある日、初代実行委員長を務めた、モエレまちづくり委員会の菅原守也会長にお話を伺いました。

「あれは平成4年の9月、札苗商店街の夏祭りの反省会をやっていた時でした。札苗会館で半日だけのこじんまりした祭りを始めてから5年経った頃。もっと地域に根差した大きな祭りにしようと、若い連中でいろんな話が出たんです。私も、どうせ祭りをやるのなら飲み食いだけじゃなく、これからの子どもたちのために、何かこの地域ならではのメインになるものが必要じゃないか、とアイデアを出したりしました。私の生まれた岩手では、藤原まつりというものがあるんです。その祭りといえば、「源義経公東下り行列」が特に有名で、祭りは5日間あるんですが、その行列が行われるたった1日のために、義経役がまたがる馬を個人で買った人がいるくらい、熱心な人がいたのを思い出します。
ただ、メインといっても、この札苗には特にこれといったものがない。でも、近くモエレ沼公園ができるので、とりあえず「モエレ」で行こうじゃないかと。でも、モエレ沼公園では火が使えないのが分かって、会場は地区の中心部にある札苗中央公園になりました。ネーミングは、モエレといっても分かりにくいだろうから、みんなで燃えようの「燃えれ!」に掛けてみてはどうかということで決まりました。
名前が決まったところで、取り急ぎ、各連合町内会の会長にあいさつに回ることにしました。頭を下げるのは私の役目。4、5人で連れ立って、当時の中沼連町の谷川会長さんのお宅に伺った時でした。昔から、モエレ沼には龍が棲んでいて、日照りが続いた時、困った住民が雨乞いをしたら、沼から龍が出てきて雨を降らしてくれたという言い伝えがあるんだよという話を偶然してくれたんです。それで、龍をメインにしようということが一気に決まりましたね。
当時、中沼小学校でも、モエレ沼のすぐ近くにある学校ということで、手作りの神輿や龍で龍神祭りという行事をやっていたので、子どもたちにも、新しい祭りに参加してほしいとお願いしました。
龍を祀った祭りといっても、私たちには何のノウハウもありません。でも、地域には祭り好きの銀行の支店長がいて、各地でやっている龍の祭りを探してくれたところ、北檜山でやっているということが分かって、すぐ現地に向かいました。いろいろ話をしているうちに、こちらの思いが伝わったのか、浮島龍神太鼓の皆さんが友情出演してくれることになりました。結局、最初の3年間、うちの祭りに花を添えてくれましたね。
ただ、地方から太鼓や神輿を呼ぶだけじゃ物足りない。やっぱり、自分たちの龍を持って、龍神伝説を復活させようということになりました。龍の制作を専門の業者に頼むと200万もするというので、手作りでやろうということになりました。この地域には、いろんな人材がいるんですよ。床屋さんが設計をして、ついでに頭の部分も作ってくれました。でも、この頭が思っていたよりもでっかくて。それに合わせて、胴体も大きいものになっていきました。骨組みには木や籐を使い、布で覆って龍の形にして…。胴体には、鱗を描くより、何か付けた方がいいだろうということになって、いろいろ試作をして、牛乳パックを使うことになったんです。
大小8種類の鱗は、各町内会で手分けして作ってもらいました。龍は火を噴き、光るイメージがあるので、金色や赤色のペンキを1枚1枚塗るんですが、ロウが付いているため1回では色が付かないんですね。3回目でようやく色が付きました。約1,000枚の牛乳パックから8,000枚の鱗ができたんですが、その次は、鱗をボンドで布に貼り付ける作業。天気の良い日じゃないと作業にならないので、龍の制作には、3月から6月まで4か月くらいかかりました。
龍の舞のモデルは、長崎の龍神祭り。例の銀行さんが調べて、ビデオまで入手してくれたんです。出来上がったばかりの重さ100キロにもなる龍を、地元の若い連中に担がせ、見よう見まねで踊りを練習してもらいました。銀行さんのつてで、和太鼓演奏家の保坂晃二さんが、龍が舞うのに合わせて、龍神太鼓を演奏してくれることになりました。
また、地域在住の漫画家の鍛冶明香さんに、龍神の原画や龍神伝説の物語の制作を依頼して、それを基にポスターやスライドも作成しました。
ほかにも、パレードをやることやら、ステージを作ることやら、フラワーコンテストなどイベントの内容をどうするとか、開催までの1年間というものは、新しい祭りの準備一色でした。とにかく、何もなかった所から、ただ子どもたちのために何かしたい。なるべくお金をかけずに自前でやろうという意気込みだけで、あちこちにお願いに回りました。
寄付もかなり集まりました。周りの皆は、どうせ、1、2年で終わるだろうと思っていたんですね。でも、私らは、続けるつもりでおりました。オリジナルのモエレ音頭まで作ったんですから…。作詞は地域に募集して、曲は地元のアマチュアバンドのリーダーがボランティアで作ってくれました。おまけにテーマソングも作ってくれました。
最初は、なぜ商店街の儲けの手伝いをしなければならないのかという声も一部あったのですが、回を重ねるごとにだんだん協力の輪が広がり、今では本当の意味で地域全体のお祭りになったと思います。祭りバカ何人かと大勢の方の協力がないと、あれだけのものはできないですよ。」

 

パレードを終え、祭り会場に入る金色の龍

当時の思い出を振り返る菅原会長

 

無我夢中で祭りの立ち上げに奔走した当時を振り返る菅原会長。実行委員長は成瀬正昭さんにバトンタッチしましたが、龍は、まだ1代目のまま。だいぶ痛んできたので、毎年祭りの前には、骨組みを補強したり、鱗を貼り替えるなどして、手入れを怠らないのだそうです。

ところで、中沼小学校にも、龍があるのをご存知でしょうか。
菅原会長のお話にもありましたが、中沼小学校でも、当時、児童会活動の一環として、神輿や龍を手作りして、龍神祭りを行っていました。
でも、菅原会長たちから、新しい祭りへの参加の呼び掛けがあったのを機に、中野農事振興組合の組合員だった有志から、平成5年、本格的な龍が学校に寄贈されました。こちらの龍は緑色で体長10メートルほど。札幌市内の業者に依頼して制作したものです。
第1回目から平成12年までの8年間、この緑色の龍と和太鼓演奏で「燃えれ!わが街」のオープニングを飾ってきましたが、龍の痛みが激しくなったため、その翌年からは、和太鼓のみで参加するようになったようです。
和太鼓は、「中沼龍神太鼓の会」などを中心とした活動が年々盛んになり、最初の3台から、今では大小20台以上に増え、学校や地域に欠かせない存在となっています。
一方、当初の役目を終えた緑色の龍は、今でも体育館のギャラリーから、静かに子どもたちの成長を見守っています。

 

平成5年の開校45周年行事で披露された時の様子

体育館に安置されている緑色の龍

 

取材の過程で、中沼には、言い伝えだけでなく、龍神様を祀ってあるという話を聞き、その場所に向かいました。モエレ沼のほとりに建つ中沼モエレ会館。その裏手には、以前、このシリーズでも紹介した「水田発祥の史」碑が建っています。
会館の中には神棚が備え付けられていて、その中には、縦40センチ、横10センチ、厚さ1.5センチの大きさの板に「奉金龍大神」などと書かれたお札が入っていました。日付は、昭和18年7月11日となっていますので、まだ戦争の真っただ中のこと。

 

モエレ会館の右手奥に「水田発祥の史」碑が見える。

「これが龍神様を祀った神棚です」と高橋会長

 

子どもの頃、よくモエレ沼で泳いで遊んだことがあるという、中沼町中野町内会の高橋識亘会長からお話を伺いました。
「昔、この辺一帯は米を作っていて、水田に引く水をモエレ沼から汲み上げていました。この会館のすぐ近くに、水揚場や部落の精米所があったんですよ。毎年、田植えの水を揚げる1週間くらい前の4月20日に、神主さんを呼んで、沼やポンプにお神酒を掛けて、沼の守り神である龍神さんに水の恵みを祈願したんです。中野農事振興組合の40数名が集まり、ポンプの試運転もやりました。
このお札は、当時のポンプ小屋に祀ってあったもの。この会館を建てるのに合わせて、こちらに移したんです。4月20日は、今でも中沼神社で行われる春祭りの日になっているんです。」

 

かろうじて「龍」の文字が見える。

 

裏側には「中野開拓自作農一同」とある。

 

かつて、稲作に汗した自作農たちの願いに応えて、恵みの雨をもたらしてくれた龍神様。時を経て、祭りにかける熱意と多くの人たちの手によって今によみがえった龍は、地域力結集のシンボルといってもいいのかもしれません。
でも、この龍、雨は苦手のようです。

【平成21年(2009年)8月記】

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