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更新日:2026年11月4日

エンリッチメント大賞2026で奨励賞を受賞しました!

フサオマキザルのエンリッチメントな部屋 ウッドチップとエンリッチメント

このたび当園のモンキーハウスのエンリッチメントの取り組みが「エンリッチメント大賞2026 奨励賞」を受賞いたしました。

エンリッチメント大賞とは、環境エンリッチメント(動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策)に取り組む動物園や飼育担当者を応援すると同時に、来園者である市民がエンリッチメントを正しく理解・評価することにより、市民と動物園をつなぎ、市民の動物園に対する意識を高めることを目指して、2002年度より毎年市民ZOOネットワークが実施しているものです。

モンキーハウスは古い獣舎ですが、今回の受賞では、モンキーハウス内の全動物を対象として、環境・採食面など多角的なアプローチから総合的な福祉の向上を達成した点が評価されました。

審査員の方々からは、「地道に動物の飼育環境の改善を繰り返す姿勢は他の動物園・水族館にも奨励されるものです。継続して取り組まれることを期待します。」とコメントもいただきました。

今回頂いた賞を励みに、今後も更なる工夫を重ねていきたいと思っています。

 

 

今回のモンキーハウスでの取り組み

⑴ 背景

当園では、築40年を超える「モンキーハウス」において、6種の小〜中型霊長類を飼育しています。獣舎はコンクリートと鉄製フェンスを主体とした構造であるため、良好な動物福祉の確保に向け、様々なエンリッチメントを継続的に試行しています。

 

⑵ 今回の取り組み

飼育下では、野生動物が本来もっている欲求を十分に満たせないことがあります。そこで、動物たちの欲求不満やその要因を捉え、より適切な飼育環境を整えることを目標に、エンリッチメント器具の充実や温湿度環境の改善に取り組んできました。

動物たちの欲求を考える際には、種ごとの生態的特性だけでなく、個体ごとの性格や行動特性の違いにも目を向けることを大切にしてきました。それぞれの特性に応じてエンリッチメント器具や環境を工夫し、動物の反応を観察・評価しながら、次の改善につなげてきました。その結果、モンキーハウス内には、個々の欲求や特性に応じて、採食行動や登攀、バランス感覚、掘る行動、学習能力などを引き出すエンリッチメント器具が増えていきました。また、担当者個人の熱意や努力に依存することなく、無理なく継続できる取り組みにすることも重視してきました。そのため、器具や餌は設置しやすい構造を工夫するとともに、タイマー式給餌器やミスト装置を導入しました。これにより、動物が予測できない採食環境の創出や、適切な温湿度環境の維持にも取り組んできました。

その一環として、摂餌時間の延長と多様な採食行動の促進を目的に、餌の調理方法について検討を行いました。その結果、サツマイモを過乾燥させた硬い干し芋状に加工することで、生または茹でた状態と比較して摂餌時間が4〜47倍に延長されるなど、良好な効果が得られました。摂餌時間の大幅な延長により、嗜好性が高いにもかかわらず劣位個体も摂餌が可能な状況を作り出すことにも成功しました。

 

⑶ 干し芋づくりにおける外部連携

干し芋づくりには手間がかかり、安定的な量の確保が課題となっていました。当園では、飼育するアジアゾウの糞を全量堆肥化し、循環型社会の実現や二酸化炭素排出削減に取り組んでおり、近隣の農業法人がこのゾウ糞堆肥を活用してサツマイモを栽培し、規格外品を動物の餌として寄附いただいています。そこで、このサツマイモの一部を用いて、児童発達支援・放課後児童クラブの子どもたちや高齢者を対象に収穫体験および、エンリッチメント用として約30kgの干し芋を製作していただきました。参加した子どもたちには、実際に動物が干し芋を採食する様子を観察してもらいながら、エンリッチメントの役割や意義について解説したところ、「どのような形状がそれぞれの動物にとって良いか」、子どもたち自らが考え、干し芋づくりに継続して取り組んでいただけました。この「干し芋プロジェクト」を通じて、動物福祉の向上、飼育員の負担軽減だけでなく、規格外野菜やゾウ糞堆肥の有効活用に加え、子どもたちの食育、高齢者の社会参加など、多面的な価値を創出することができました。

 

受賞の声

この度、多くの方々のお力添えにより、エンリッチメント大賞2026「奨励賞」という栄えある賞をいただき、大変光栄に存じます。心より感謝申し上げます。

モンキーハウスは、霊長類6種を飼育する築40年を超える獣舎です。コンクリートと金属フェンスを主体とした単調な構造で、広さにも制約がありますが、私たちは動物たちのニーズを満たせているのかという問いを持ち続け、数年にわたり試行錯誤を重ねてきました。

種ごとの生態的特性に加え、個体ごとの異なるニーズにも応えるため、環境や機会を整え、それぞれの反応を観察し、その結果を評価して次の工夫につなげるよう取り組んできました。また、担当者の熱意や頑張りに依存せず、無理なく継続できる取り組みにすることも重要視し、器具や餌は設置しやすい構造を工夫し、タイマー式の給餌器やミスト装置を導入することで、動物が予測できない採食環境の創出や適切な温湿度の維持にも取り組んできました。

そのような試行錯誤の一つが、干し芋です。サツマイモの調理方法を工夫し、十分に乾燥させて硬くすることで、採食行動の多様化や摂餌時間の大幅な延長が見られました。特別な設備がなくても、身近な食材の工夫によって、動物たちの採食に関わる経験や選択肢を広げられる可能性があります。また、児童発達支援・放課後児童クラブの子どもたちや高齢者にも干し芋づくりを体験していただき、動物が採食する姿を観察しながら、エンリッチメントの意義や野生での生態について考えていただける機会を設けることができました。一方で、歯への負担や糖代謝への影響については、長期的な観察と検証を続けていく必要があります。

私たちの取り組みは、新しい施設や豪華な装置によるものではありません。廃材や寄付いただいた資材、いつもの餌を活用し、目の前の動物たちのために「できることをやる」という地道な積み重ねです。目の前の動物たちが何を必要としているのか。そのニーズに少しでも応えられるよう、これからも試行錯誤を続けていきたいと思います。

 

札幌市円山動物園

動物専門員 松本直也

 

 

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