第3章 計画の体系 1 基本理念・計画目標   本計画は、さっぽろ障がい者プラン2018を構成する計画であることから、引き続き、プランに掲げる基本理念及び計画目標の推進を目指します。 また、国の基本指針で示された新たな考え方や札幌市の障がい福祉施策の視点から目指すべき共生社会の実現に向けた取組を、本計画に反映させていきます。 ■基本理念 障がいのある人もない人も、その命の尊厳が当然に保障され、市民誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現 ■計画目標 1 地域社会の障がいのある人に対する理解促進 2 障がいのある人の自己決定の尊重と意思決定の支援 3 施設、病院から地域への移行推進と地域生活を支えるためのサービス提供基盤の一層の充実 4 市民、事業者、行政などの連携強化による地域の福祉力の向上 5 障がいのある子どもへの支援 6 障がいを理由とする差別の解消 2 2023年度の成果目標  障がいのある方の自立支援の促進や共生社会の実現に向けて、必要な障がい福祉サービス等の提供体制の確保に係る目標として成果目標を設定します。 なお、国が基本指針で例示する成果目標と札幌市が設定する成果目標との対応関係については、第6章(100〜103頁)に掲載しています。 <新規・強化の表記について> 新規:前計画(障がい福祉計画(第5期)・障がい児福祉計画(第1期))には掲載していないが、新たに計画に位置づけて取り組んでいく項目。 強化:前計画に掲載しているもので、新たな事業等によって取組が強化される項目。 ※いずれも、本計画の計画期間前(2020年度以前)から事業等を開始していたものを含む。 ■障がい福祉サービス等に関する目標 成果目標@ 入所施設の入所者の地域生活への移行 1)施設入所者の地域生活への移行者数 2)施設入所者数の減少 成果目標A 地域生活支援拠点等の整備及び機能の充実(強化) 成果目標B 福祉施設から一般就労への移行 1)就労移行支援事業所等を通じた一般就労への移行者数 2)就労移行支援事業等を通じて一般就労に移行する方のうち、就労定着支援事業を利用する割合 成果目標C 医療的ケアを必要とする障がいのある子どもへの支援(強化) 成果目標D 障がい福祉サービス等の質の向上を図るための取組の推進(新規) ■障がいのある方に対する理解促進に関する目標(札幌市独自設定) 成果目標E 障がいのある方に対する理解促進 ・障がいのある方にとって地域で暮らしやすいまちであると思う障がいのある方の割合 ・障がいのある子どもにとって地域で暮らしやすいまちであると思う保護者の割合 成果目標@ 入所施設の入所者の地域生活への移行 1)施設入所者の地域生活への移行者数 <第6期計画の国の基本指針> 2020年3月31日の施設入所者のうち、2023年度末において6%以上の人が地域生活へ移行することを目指す。 <札幌市の第5期計画の目標と進捗状況> 2017年3月31日の施設入所者2,093人のうち、2020年度末において125人(6%)の方が地域生活に移行することを目指しました。(国の基本指針は9%) 2020年度末の目標 125人 2017年4月から2019年3月末までの実績(累計)/進捗率 27人/21.6% ※北海道調べ <札幌市の第6期計画の目標と進捗状況> 2020年3月31日の施設入所者2,009人のうち、2023年度末(2024年3月末)において60人(約3%)以上の方が地域生活に移行することを目指します。 <目標設定の考え方> 近年は、施設に入所している方の高齢化や障がい程度の重度化が進んでいることから、第5期計画の目標達成は厳しい状況にあり、今後も高齢化に伴い、地域への移行は伸び悩むことが想定されます。札幌市も介護・見守り体制の充実をはじめ、目標達成に向けた方策を講じることで、国の基本指針と同様に、2016〜2018年度の年平均増加率(札幌市の場合は約2.1%)の達成を目指すこととし、2023年度末までに60人以上の方が地域へ移行することを目標として設定します。 2)施設入所者数の減少 <第6期計画の国の基本指針> 2023年度末の施設入所者を、2020年3月31日の施設入所者数から1.6%以上減少することを目指す。 <札幌市の第5期計画の目標と進捗状況> 2020年度末の施設入所者を、2017年3月31日の施設入所者数2,093人から83人(約4%)減少することを目指しました。(国の基本指針は2%以上) 2020年度末の目標 83人 2017年4月から2020年3月末までの実績(累計)/進捗率 85人/102.4% <札幌市の第6期計画の目標> 2023年度末の施設入所者を、2020年3月31日の施設入所者数2,009人から110人(約5.5%)以上減少することを目指します。 <目標設定の考え方> 施設入所支援のサービス利用実績から、2017〜2019年度の年平均減少率(1.4%)が今後も続くと見込み、2020〜2023年度の累計減少数(推計)を110人(約5.5%)と推計しました。 目標達成に向けた方策について、着実に取り組みを進め、推計を上回る目標を設定します。 地域移行以外の減少要因には、死亡や長期入院等があります。また、障がいの重い方を受け入れるグループホームの整備も進んできていると考えられます。 ◆◇成果目標@を達成するための方策◇◆ 【介護・見守り体制の充実】…強化 地域生活を行うために必要な介護・見守り体制を構築します。 ・重度の障がいのある方に対応した訪問系・日中活動系サービスの利用、地域定着支援などの利用を促進します。 ・重度訪問介護において、特に長時間の在宅介護を必要とする方に、従来の基準(「定型」という)とは別に、個々の事情に応じて必要な介護時間を個別に決定する判断基準(いわゆる「非定型」)を導入します。 ・緊急時の相談支援や受入れ先の確保等の機能を備える地域生活支援拠点等も活用し、障がいのある方の生活を地域全体で支えます。 ・施設退所後、生活介護の利用が多く見込まれることから、生活介護事業所における重度障がいのある方の受入促進を図ります。 【住まいの確保】 ・グループホームの整備推進などにより、住まいの確保を図ります。 ・民間住宅への移行が可能な方は、障がい者相談支援事業所が行う住宅入居等支援業務などにより、民間住宅等への入居を促進します。 ・市営住宅入居者募集の抽選時の優遇や、入居から退去までをサポートする相談体制の充実等により、民間住宅を含む住宅市場全体で住宅セーフティネット(安全網)を構築し、高齢の方、障がいのある方など、住宅確保要配慮者の居住の場の安定確保を目指します。 【相談支援の充実】 地域移行支援及び地域定着支援の利用促進により、施設入所者への地域移行を促します。 成果目標A 地域生活支援拠点等(※7)の整備及び機能の充実             ※7 障がいのある方の高齢化・重度化や「親亡き後」を見据えつつ、障がいのある方の地域生活支援をさらに推進する観点から、相談、緊急時の受け入れ・対応、体験の機会・場、専門的人材の確保・養成、地域の体制づくりなどの機能を整備するもの。 <第6期計画の国の基本指針> 2023年度末までの間、各市町村又は各圏域に1つ以上の地域生活支援拠点等を確保しつつ、その機能の充実のため、年1回以上運用状況を検証及び検討することを基本とする。 <札幌市の第5期計画の目標と進捗状況> 地域生活支援拠点等を、2020年度末までに少なくとも1か所整備することを目指しました。 2020年度末までの目標 設置 2017年4月から2020年3月末までの実績/進捗率 未設置/0% ※2021年3月末までに設置予定 <札幌市の第6期計画の目標> 2023年度末までの間、1か所以上の地域生活支援拠点等を確保し、その機能の充実のため、年1回以上運用状況を検証、検討することを目指します。 <目標設定の考え方> 国の基本指針に即し設定します。 ◆◇成果目標Aを達成するための方策◇◆ 地域生活支援拠点等の整備及び機能の充実】…強化 札幌市自立支援協議会での検討を踏まえ、市内の社会福祉資源等も活用し、地域生活支援拠点等を整備するとともに、その後も引き続き機能の充実を図ります。 成果目標B 福祉施設から一般就労への移行                  1)就労移行支援事業所等を通じた一般就労への移行者数 <第6期計画の国の基本指針> ・2023年度までに、福祉施設の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績の1.27倍以上を基本とする。 ・2023年度までに、就労移行支援の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績の1.30倍以上を基本とする。(新規) ・2023年度までに、就労継続支援A型の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績の概ね1.26倍以上を目指す。(新規) ・2023年度までに、就労継続支援B型の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績の概ね1.23倍以上を目指す。(新規) <札幌市の第5期計画の目標と進捗状況> 2020年度において、福祉施設の利用者のうち一般就労への移行者数を、2016年度の移行実績444人の1.5倍(666人)とすることを目指しました。(国の基本指針と同じ1.5倍)。 2020年度末までの目標 666人 2020年3月31日時点の実績/進捗率 621人/93.2% ※北海道調べ <札幌市の第6期計画の目標と進捗状況> 2023年度において、福祉施設の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績621人の1.11倍(680人)以上とすることを目指します。 2023年度において、就労移行支援の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績424人の1.01倍(430人)以上とすることを目指します。(新規) 2023年度において、就労継続支援A型の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績87人の1.15倍(100人)以上とすることを目指します。(新規) 2023年度において、就労継続支援B型の利用者のうち一般就労への移行者数を、2019年度の移行実績110人の1.36倍(150人)以上とすることを目指します。(新規) <目標設定の考え方> 福祉施設から一般就労への移行については、2018年4月の法定雇用率の引き上げの要因もあり、2018〜2019年度は好調に推移しました。札幌市では、引き続き各種就労支援策を推し進めていくことを通じ、この2年間の各サービスの利用者に占める一般就労移行者数から算出した年平均就労移行率の達成を目指すこととし、2023年度において、福祉施設の利用者のうち一般就労への移行者数を680人以上とすることを目指します。なお、各サービスの目標についても、それぞれこの2年間の各サービスの利用者に占める一般就労移行者数から算出した年平均就労移行率の達成を目指し、移行者数の目標を設定します。 2)就労定着支援事業の利用者数(新規) <第6期計画の国の基本指針>  2023年度において、就労移行支援事業所等を通じて一般就労に移行する者のうち、7割が就労定着支援事業を利用することを基本とする。 <第6期計画の国の基本指針>  2023年度における就労移行支援事業所等を通じて一般就労に移行する方のうち、7割が就労定着支援事業を利用することを目指します。 <目標設定の考え方> 国の基本指針に即し設定します。 ◆◇成果目標Bを達成するための方策◇◆ 【障がい者就業・生活相談支援事業】 障がいのある方の雇用の促進と就労の安定を図るため、就業や日常生活の支援を行うとともに、ハローワーク等の関係機関と連携して「ジョブサポーター」や支援員による雇用促進・職場定着支援を図ります。 【障がい者元気スキルアップ事業】 履歴書の書き方や社会マナー等、就職のためのスキル習得や福祉サービス事業所の支援能力の向上、民間企業に障がい者の理解を深めるため、セミナー開催や求人紹介等を行います。 【障がい者協働事業】 障がいのある方を5人以上雇用し、他の従業者からサポートを受けながら共に働くことにより、障がいのある方の継続した雇用の場となる「障がい者協働事業」を行う事業所等に対して、その運営経費の補助を行います。 成果目標C 医療的ケアを必要とする障がいのある子ども(※8)への支援        ※8 NICU(新生児集中治療室)などに長期入院したあと、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養等の医療的ケアが必要な子どものこと。 <第6期計画の国の基本指針> 2023年度末までに、各都道府県、各圏域および各市町村において、保健、医療、障害福祉、保育、教育等の関係機関が連携を図るための協議の場を設けるとともに、医療的ケアを必要とする障がいのある子ども等に関するコーディネーターを配置する。 <札幌市の第5期計画の目標と進捗状況> 医療的ケアを必要とする障がいのある子どもが適切な支援を受けられるよう、2018年度末までに、関係機関等が連携を図るための協議の場の設置を目指しました。 2018年度末までの目標 設置 2019年3月31日時点の実績/進捗率 2018年度に設置/100% <札幌市の第6期計画の目標> 2023年度末までに医療的ケアを必要とする障がいのある子ども等に関するコーディネイト機能の構築を目指します。 <目標設定の考え方> 札幌市における社会資源の状況等をふまえながら、地域におけるコーディネート機能の構築を目指します。 ◆◇成果目標Cを達成するための方策◇◆ 【医療的ケア児支援者養成研修の充実】…新規 医療的ケア児支援者養成研修の充実などを通じて、地域におけるコーディネート機能の向上を目指します。 【サポート医師の配置】…新規 障がい福祉サービス事業所や学校、保育所等を支援するサポート医師を配置し、医療的ケアを必要とする障がいのある子どもの受入促進など、支援体制の充実を図ります。 成果目標D 障がい福祉サービス等の質の向上を図るための取組の推進(新規)      <第6期計画の国の基本指針> 2023年度末までに、都道府県や市町村において、サービスの質の向上を図るための取組に係る体制を構築する。 <札幌市の第6期計画の目標> 2023年度末までに、本市における障がい福祉サービス等の質の向上を図るための取組の実施体制を確保していくほか、事業所支援の取組を推進します。 <目標設定の考え方> 将来にわたって安定的に障がい福祉サービス等を提供し、さまざまな障がい福祉に関する事業を実施していくためには、提供体制の確保とともに、それを担う人材が必要となります。引き続き、市職員向けの取組と事業所支援の取組を両輪で推進していきながら、サービス等の質の向上を図っていきます。なお、本成果目標の進捗については、「9障がい福祉サービス等の向上(64〜65頁)」の各項目の進捗をもって評価・検証を行います。 ◆◇成果目標Dを達成するための方策◇◆ 【障がい福祉サービス等に係る各種研修の実施】…新規 障がい福祉サービス等に係る市職員向け研修を引き続き実施し、障がい福祉サービス等についての理解をより一層深めていきます。   【指導監査結果の関係市町村との共有】…新規 障がい福祉サービス等事業所に対し指導監査を適正に実施するとともに、指定取消等の行政処分等に至った場合は、監査結果を関係自治体と共有する取組を行っていきます。 【障がい福祉人材確保・定着サポート事業の実施】…新規 障がい福祉サービス事業所における人材確保・定着、サービスの質の向上を図るため、事業所管理者向けの研修や児童指導員等を対象とした初任者向け児童発達研修を実施します。障がい福祉サービス事業所等によるキャリアパス制度(※9)の導入を支援する「キャリアパス制度導入支援事業」や、専門学校などとの連携により、新卒者等に対して直接障がい福祉の仕事の魅力を発信し、新規就職者の増加を目指す「障がい福祉サービス魅力発信事業」に新たに取り組みます。 ※9 経験や資格に応じた昇給・手当制度などのこと。 【障がい福祉サービス等に係る集団指導及び障がい者自立支援審査システムによる審査結果等の共有】…新規 札幌市が実施する障がい福祉サービス等事業所に対する集団指導において、よくある指摘事項、請求誤りの事案を説明・共有し、障がい福祉サービス等の質の向上を図ります。 【障がい児地域支援マネジメント事業の実施】…新規 地域に配置された障がい児地域支援マネージャーが、担当地区内の障がい児通所支援事業所を訪問して、療育情報の把握と提供、療育への技術支援や関係機関の支援調整を実施します。 【新型コロナウイルス感染症等の対策に係る事業所支援】…新規 ・新型コロナウイルス感染症等、感染症流行時にあっても安定的なサービス提供が図られるよう、必要な情報提供や研修等を実施します。 ・新型コロナウイルス感染症等に、障がい福祉サービスの職員等が罹患した場合などには、保健所と連携しながら迅速な助言・指導に取り組みます。 ・入所施設等における集団感染に備え、北海道と連携して、施設間の協力体制を促し、必要な介護の確保を図ります。 【障がい福祉サービス等の質を評価する仕組みの検討】…新規 障がい福祉サービス等の利用者に、より適切かつ効果的なサービスが提供されるよう、事業所のサービスの質を評価する仕組みを検討します。 成果目標E 障がいのある方に対する理解促進 (札幌市独自設定)                <札幌市の第5期計画の目標と進捗状況> 障がいのある方にとって地域で暮らしやすいまちであると思う障がいのある方の割合 2020年度末の目標60% 2020年3月31日時点の実績48.4% 障がいのある子どもにとって地域で暮らしやすいまちであると思う保護者の割合 2020年度末の目標 60% 2020年3月31日時点の実績 35.4% <札幌市の第6期計画の目標> 障がいのある方にとって地域で暮らしやすいまちであると思う障がいのある方の割合 2023年度末の目標60% 障がいのある子どもにとって地域で暮らしやすいまちであると思う保護者の割合 2023年度末の目標60% <目標設定の考え方> プランの基本理念の推進を目指し、また、2019年度時点では未達成であることから、次期計画においても引き続き設定します。 なお、目標値は、札幌市の総合計画である「札幌市まちづくり戦略ビジョン」や「第4次さっぽろ子ども未来プラン」と整合性を図り設定しています。 ◇ 成果目標Eを達成するための方策  【心のバリアフリーの普及啓発の推進】…強化 ・2020年度から、企業向けと市民向けに、心のバリアフリー研修を開始し、更なる普及啓発に努めます。研修修了者には、心のバリアフリー推進マークのバッジを配布します。 ・さまざまな障がい特性等を掲載したガイドブックを再編し、4コマ漫画等を用いて比較的平易な内容とした「心のバリアフリーガイド わかりやすい版」を、市内の小学4年生へ配布するとともに、出前講座などを通じて、子どもの理解促進を図っていきます。 ・障害者差別解消法に係る取組の一つとして、ヘルプマーク・ヘルプカードの配布を通じ、一層の周知に取り組んでいきます。