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更新日:2013年4月10日

講演とワークショップ - 講演11

11.委託、補助、助成金

横浜市では協働の概念を整理した上で、その方法を「横浜コード」という要綱にまとめている。

 ここで委託、補助金、助成金の関係を整理しようと思う。まず委託とは、本来行政がやるべき領域、守備範囲であるとはっきりしているが、行政の能力に専門性が無いものを民間がやるということだ。だから受託とは下請けをすることだ。仕様書に基づいて行い、その成果は全部行政のものになり、その責任は行政にある。これが委託だ。この委託も協働のひとつの手法だ。

例えば、コンサルタントやNPOは、その専門性のために委託を受けているのだから、本来行政の下請けというよりも、きちんと自分の自己主張をして、行政がやっていることに対してリードする立場をとらなければいけないのに、逆に下請けになっていることがある。また、委託も行政からの委託ではなく、市民社会から委託を受けたと考えたほうがいいだろう。

 補助金には、行政の下請けという悪いイメージがある。本来公共の福祉を促進するのに役立つ事業だが、民間がやるのか、行政がやるのかという領域設定がまだされていない。ただし、それをやっている団体を支援することによって、公共の福祉が増進する見込みがたつものに対して、行政が税金を再分配する仕組みを補助という。だから、行政の下請けではない。しかし補助は、5年以内など時限性がある。ずっと補助金を出し続けていること自身が本来の補助の目的とは違う。

助成金とは、ある団体が案を持っていて、それに対して行政が支援を出す。支援を出すことによって成果を上げる。これは助成を受ける側に責任があり、委託とは違う。

行政改革のなかで、補助金の見直しに手をつけない限り、協働はなかなか進まない。従来の補助や委託のやり方を続けて、NPOだけ特別枠を作っても駄目だ。その点、補助金をリセットしはじめたのが、我孫子市、黒磯市だ。今までは例えば、福祉協議会や特定の福祉団体しかなかったところに、NPOが参入し、競争が生まれたので、事業にいちばんふさわしいところをどう選ぶかを再度決めなおすことにしたのだ。いままで出していたところはそのままにしてNPOの枠の補助金を作ったのでは全体の構造改革にならない。

日本のNPO支援のなかには、支援育成型、協働事業促進型、行革型がある。支援育成型は、NPOは小さいから、支援して育てなければいけないという考えに基づいている。一見支援はいいことのように見えるが、NPOの育つ基盤を潰すことになることもある。協働事業促進型は、行政の側には限界があるので、NPOに安くやってもらおうということでのNPO支援策も今日の自治体でひろがっている。しかし、それが正しいかどうかもう一回考えたほうがいい。行革型で取り組もうとしているところは、「今の自分たちの構造にメスを入れないと、協働は始まらない」ということを理解しているところだ。自分たちの構造にメスを入れるということは、痛みを伴うということだ。従来ずっと補助金を貰っていたのに、なぜ貰えないのかという旧勢力と、新しい勢力と両方併せて考えなければいけないので非常にリーダーシップが要る。それはかなり難しい。しかし行革型が本来だと思う。

 では、札幌市がどの型でいくかは、札幌市民の考え方にかかっていると思う。確かに時間がかかるかもしれないが、私は行革型をすすめる立場で、そういうリーダーシップを担える行政職員、市民の養成にとりくみたいと思う。

 以上のような委託、補助、助成金の違いを正しく理解しないでNPOへの委託が始まっているため、市民サービスが低下することもある。公正に競争できる条件整備を整える前にどんどんNPO枠を作って、お金を出す構造を作ると、今まで行政が特定の業界を育ててきたのとあまり変わらなくなる。そうすると市民社会にとって、選択肢を作っていける人の芽を摘んでしまうことになる。

神奈川では次のような例があった。民間の支援センター=NPOであるアリスセンターでは、「らびっと通信」という有料情報誌を作って配布していたが、同じような情報誌を行政は、行政のサポートセンターが作成し無料で配布するようになった。結果としてアリスセンターでは、らびっと通信の発行をやめることになった。NPO支援が仕事の県民活動サポートセンターがNPOの仕事をしてしまうことでNPOが育っていく芽を摘んでしまうことになる。確かに行政は無料で配布はしているが、行政職員の人件費を入れると、そのコストは非常に高くついている。これから行政の仕事を評価するときも、人件費を入れてみると、本当に安いものになっているか、高いものになっているか分かるはずだ。

つまり、コストの評価も必要で、行政はNPOがやれるところがあれば、そこから手を引くという姿勢が必要だということだ。支援という名でNPOの開拓した領域に踏み込むことによってNPO自身が育つ基盤を失うことだってある。そういう例がいろんなところで出てきている。活動情報を提供しているところがあるならば、例えば印刷機械を置いて、市民が使えるようにするなどそこを支援する基盤を作るべきだ。そういう意味では協働ということもみんなが一緒になってやればいいという問題ではなく、それぞれの特性を考えたうえで、それぞれが是々非々で、それぞれのテーマに応じて組み方を考える。そして、支援はなるべく直接的な支援ではなく基盤整備になるような、大きな枠組みを考えることが行政の側に必要だ。

 NPO側も安易に行政の支援を求めないで、まず自立することが必要だ。たいていのNPOは資金が苦しい。でもNPOは頼まれてやっているのではなく、NPOはミッションの到達のためにやっている。ミッションを失ってまで本当にやり続けるのかということで、マネージメントが必要だと思う。協働を考えるときには、協働の目標をよく考えること。何もかも市民に参加してもらってやればいい訳でもない。

 行政が本来やるべきことを行政の特性をもっと活かしてやることが必要ではないかと思っている。特にこの10年くらい権力構造が非常に曖昧になってきている。本来権力をもっている人が権力を持っていることを自覚しないまま権力を行使していることはこわい。ひと昔前は権力を持っている人はその痛みも、使うことの恐さも知っていたが、今では、権力構造にいる人も自分も一般の市民と同じだと勘違いし、ともかく市民の声を聞き、そのとおりするのがよい行政だと思っている人もいるのは問題だ。本当はそこにお金も、人も、情報も集中している。そこを使う恐さを自覚しないと非常に危ない状況になる。つまり、みんなでやったから、自分の責任ではないという無責任体制が生まれている。誰が責任をとるかという問題については、リーダーシップは非常に重要だと思うし、民主主義というのはみんなで何でも考えて物を言うことではない。誰にそれを考えてもらって決めてもらうか、そのことを決めるための合意は必要だ。リーダーシップをとることと、民主主義をはきちがえると、何も決まらない。誰が責任をどのようにとるのかをきちんと位置付ける必要がある。本来役職とは責任をとる所在を示すものである。また、すべて市民参加でやればいいというものでもない。例えば、デザインについて専門性を持っているデザイナーの誰を選ぶかについては、市民の合意が必要だ。みんなで意見を言えばいいデザインになるということはほとんど無い。ある提案というものをやる前にみんなの意見を聞くが、みんなの意見を汲んだうえでデザイナーが最終のデザインの提案をする。デザインの専門家でない人が、赤がいい、黄色がいい、多数決で赤に決めるというのは、民主主義のはきちがえだと私は思う。誰かを選んでその意見を市民が聞くシステムを作るのは重要だが、決定についての責任を取ることについて、そろそろ考えたほうがいいだろうと思う。

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