○札幌市自治基本条例
平成18年10月3日条例第41号
札幌市自治基本条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 市民
第1節 市民の権利(第6条・第7条)
第2節 市民の責務(第8条・第9条)
第3章 議会及び議員(第10条―第12条)
第4章 市長及び職員(第13条―第15条)
第5章 行政運営の基本(第16条―第20条)
第6章 基本原則によるまちづくりの推進
第1節 市民参加の推進(第21条―第24条)
第2節 情報共有の推進(第25条―第27条)
第3節 身近な地域におけるまちづくりの推進(第28条・第29条)
第7章 他の自治体等との連携・協力(第30条)
第8章 市民自治によるまちづくりに関する施策等の評価及びこの条例の見直し(第31条―第33条)
附則
私たちのまち札幌は、北の大地に、自然の恵みとともに暮らしてきた人たちと、日本各地から移り住んできた人たちとが、それぞれの伝統と文化を紡ぎ、はぐくみながら、外国の先進の英知も取り入れて、北方圏の拠点都市として飛躍的な発展を遂げてきました。
「わたしたちは、時計台の鐘がなる札幌の市民です」とうたい出される札幌市民憲章は、こうした札幌の歴史と風土そして自然環境を誇りとし、昭和38年に市民の総意として制定され、永く市民の心のよりどころとなっています。
私たちには、この気高い市民憲章を札幌の心としながら、先人の築いたまちを、更に良いまちにして未来の世代に継承していく責任があります。
私たちは、平和を愛し互いを尊び、多様な価値観を認め合って、すべての市民が平穏な暮らしの中で自己実現できる札幌でありたいという、一人一人の札幌への思いが、世界の人々が思い描く理想と響き合うことを願っています。そして、自らの権利と責務を重く受け止め、多様な人の縁と地域の絆を大切にして力を寄せ合い、まちづくりのために自ら主体となって選択し行動することにより、大都市でありながら一人一人の思いや声が調和の中で生かされる、市民自治を実感できるまち札幌を目指します。
そこで、私たちは、まちづくりの担い手である市民と議会、行政の役割や関係を明らかにし、私たちのまちを私たちみんなの手で築いていくために、まちづくりの最高規範として、ここに札幌市自治基本条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本市のまちづくりに関し、基本理念及び基本原則を明らかにするとともに、市民の権利及び責務、議会及び議員並びに市長その他の執行機関(以下「市長等」という。)の役割及び責務並びにまちづくりの基本的事項を定めることにより、市民自治によるまちづくりを実現することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「市民」とは、市内に住所を有する者、市内で働き、若しくは学ぶ者及び市内において事業活動その他の活動を行う者若しくは団体をいう。
2 この条例において「まちづくり」とは、快適な生活環境の確保、地域社会における安全及び安心の推進など、暮らしやすいまちを実現するための公共的な活動の総体をいう。
3 この条例において「市政」とは、まちづくりのうち市(議会及び市長等をいう。以下同じ。)が担うものをいう。
(この条例の位置付け)
第3条 市及び市民は、本市のまちづくりの最高規範として、この条例の趣旨を最大限に尊重しなければならない。
2 市は、総合計画その他まちづくりに関する計画の策定及びまちづくりに関する条例、規則等の制定改廃等に当たっては、この条例に定める事項との整合を図らなければならない。
(基本理念)
第4条 まちづくりは、市民が主体であることを基本とする。
2 市政は、市民の信託に基づくものであることを基本とする。この場合において、議会及び市長は、緊張関係を適切に保ちながら市政を進めるものとする。
3 市民、議員並びに市長及び職員は、それぞれの役割や責務を相互に認識し、不断の努力を重ね、連携して市民自治によるまちづくりに取り組むことを基本とする。
(まちづくりの基本原則)
第5条 まちづくりは、市民の参加により行われるものとする。
2 市及び市民は、まちづくりを進めるために必要な情報を共有するものとする。
3 市は、市民の信託に基づき、公正かつ誠実に市政を運営する責任を負うものとする。この場合において、市は、市政への市民参加を推進し、市民の意思を尊重するものとする。
第2章 市民
第1節 市民の権利
(まちづくりに参加する権利)
第6条 すべての市民は、まちづくりに参加することができる。
(市政の情報を知る権利)
第7条 すべての市民は、市政に関する情報について、公開又は提供を求めることができる。
第2節 市民の責務
(市民の責務)
第8条 市民は、互いにまちづくりに参加する権利を尊重し、相互の理解及び協力に基づいてまちづくりを進めるものとする。
2 市民は、まちづくりの主体であることを認識するとともに、まちづくりに参加するよう努めるものとする。
3 市民は、まちづくりに参加するに当たっては、自らの発言と行動に責任を持つものとする。
(事業者の責務)
第9条 事業者は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を認識し、地域社会との調和を図り、暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとする。
第3章 議会及び議員
(議会の役割及び責務)
第10条 議会は、本市の意思を決定する機関として、及び執行機関を監視する機関として、その役割を果たすとともに、機能の充実強化に努めるものとする。
2 議会は、市民自治によるまちづくりを推進するため、市民の意思を把握し、政策の形成に反映させるものとする。
3 議会は、政策形成機能の充実を図るため、積極的に調査研究を行うとともに、参考人制度等により広く専門家等の知見を生かすよう努めるものとする。
(市民に開かれた議会)
第11条 議会は、十分な討論により市政における争点を明らかにするとともに、審議に関する情報を公開することなどにより、開かれた議会運営に努めるものとする。
2 議会は、議会の活動内容に関する情報を積極的に市民に提供するとともに、広く市民の声を聴く機会を設けるものとする。
(議員の役割及び責務)
第12条 議員は、この条例に定める議会の役割及び責務を果たすため、総合的な視点に立ち、公正かつ誠実に職務を遂行するものとする。
2 議員は、まちづくりについての自らの考えを市民に明らかにするとともに、広く市民の声を聴き、これを政策形成及び議会の運営に反映させるよう努めるものとする。
3 議員は、調査研究活動等を通じ、議会における審議及び政策立案活動の充実に努めるものとする。
第4章 市長及び職員
(市長の役割及び責務)
第13条 市長は、本市の代表として、事務の管理及び執行、補助機関である職員の指揮監督、内部組織の運営その他の職務を公正かつ誠実に遂行しなければならない。
2 市長は、市民自治によるまちづくりを推進するため、市民の意思を把握し、市政の運営に反映させるものとする。この場合において、市長は、まちづくりについての自らの考えを市民に明らかにするとともに、広く市民の声を聴くよう努めるものとする。
(職員の責務)
第14条 職員は、全体の奉仕者として、公正かつ能率的に職務を遂行しなければならない。この場合において、職員は、市民の視点に立って職務を遂行するとともに、市民自治によるまちづくりを推進するために必要な能力の向上に努めるものとする。
(職員の育成)
第15条 市長その他の任命権者は、職員の適材適所の配置及び登用、職務能力の開発等を通じて、市民自治によるまちづくりを推進する職員の育成に努めるものとする。
第5章 行政運営の基本
(行政運営の基本)
第16条 市長等は、市民参加と情報共有を基本とした、効率的で、公正かつ透明性の高い行政運営を行わなければならない。
2 市長等は、計画、財政、評価等の制度を相互に連携させ、これらに対応した組織運営を行うなど、総合的かつ計画的な行政運営を行うよう努めなければならない。
3 市長等は、まちづくりを進めるために必要な条例の立案及び規則等の制定改廃を適切に行うとともに、法令の解釈及び運用を適正に行うものとする。
4 市長等は、本市の関与の大きい出資団体について、その設立目的に沿った適正な運営等の視点から、必要な指導及び調整を行うものとする。
(総合計画等)
第17条 市は、総合的かつ計画的な行政運営を図るため、総合計画を策定するものとする。
2 市は、総合計画の策定に当たっては、市民の意見を反映させるため、その計画に関する情報をあらかじめ市民に提供し、広く市民の参加を得るものとする。
3 市長等は、総合計画について、指標を用いることなどにより、その内容及び進ちょく状況に関する情報を市民に分かりやすく提供しなければならない。
4 前2項の規定は、まちづくりに関する重要な計画(総合計画を除く。)について準用する。
(財政運営)
第18条 市は、中期的な財政見通しのもとに、総合計画及び行政評価の結果を踏まえて、予算を編成するとともに、計画的で健全な財政運営に努めなければならない。
2 市長は、毎年度の予算及び決算その他市の財政状況に関する情報を市民に分かりやすく公表しなければならない。
(行政評価)
第19条 市長等は、効率的かつ効果的な行政運営を図るため、行政評価に関する制度を整備し、実施するものとする。この場合において、市長等は、市民の視点に立った外部評価を取り入れるものとする。
2 市長等は、行政評価の結果を市民に分かりやすく公表するとともに、行政評価の結果及びこれに対する市民の意見を踏まえ、必要な見直しを行うものとする。
(公正で信頼の置ける行政運営の確保)
第20条 市は、公正で信頼の置ける行政運営を確保するため、監査委員制度及び外部監査制度のほか、必要な制度の整備を進めるものとする。
2 市は、行政運営における市民の権利利益を擁護し、並びに行政を監視し、及び行政の改善を図るため、別に条例で定めるところにより、オンブズマンを置くものとする。
3 市は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため、別に条例で定めるところにより、処分、行政指導その他の行政手続に関して共通する事項を明らかにするものとする。
第6章 基本原則によるまちづくりの推進
第1節 市民参加の推進
(市政への市民参加の推進)
第21条 市は、市政への市民参加を保障するものとし、そのための制度の充実に努めなければならない。
2 市は、政策の立案、実施、評価等の各段階において、市民の参加を進め、市民の意見が適切に反映されるよう努めなければならない。
3 市は、市政への市民参加の機会を設ける場合には、次の事項に配慮するものとする。
(1) 実施の時期が適切であること。
(2) 効果的かつ効率的な方法によること。
(3) 事案に関係する市民又は地域に係る市民が参加できること。
(4) 性別、年齢、障がいの有無、経済状況、文化的背景、国籍等により不当に不利益を受けないこと。
4 市長等は、附属機関について、その設置の目的等に応じ、委員の一部を公募することなどにより、幅広い市民が参加できるよう努めなければならない。
5 市は、本市の重要な政策の意思決定過程における市民参加の機会の拡大並びに公正の確保及び透明性の向上を図るため、重要な政策案についての意見公募制度を設けるものとする。
6 市は、市政に関する市民からの提案について、これを反映する仕組みを整備するものとする。
7 市は、市民参加を進めるために必要な条例等を整備するものとする。
一部改正〔平成26年条例42号〕
(住民投票)
第22条 市は、市政に関する重要な事項について、住民(市内に住所を有する者(法人を除く。)をいう。)の意思を確認するため、別に条例で定めるところにより、住民投票を実施することができる。
2 市は、住民投票の結果を尊重しなければならない。
(市民によるまちづくり活動の促進)
第23条 市は、市民との協働によるまちづくりを進めるため、市民によるまちづくり活動に対して、その自主性と自立性を尊重しつつ、適切な支援を行うものとする。この場合において、市は、必要な条例等を整備するものとする。
2 市は、まちづくりについて、市民が自ら学び、考えることができる環境づくりに努めなければならない。
(青少年や子どものまちづくりへの参加)
第24条 市及び市民は、青少年や子どもがまちづくりに参加することができるよう、必要な配慮に努めなければならない。
第2節 情報共有の推進
(情報公開)
第25条 市は、市政に関して、市民に説明する責任を果たすため、別に条例で定めるところにより、市が保有する公文書を適正に公開するものとする。
(情報提供)
第26条 市長等は、まちづくりに必要な情報について、速やかに、かつ、分かりやすく市民に提供するよう努めるものとする。この場合において、市長等は、まちづくりに必要な情報の収集及び適切な管理に努めなければならない。
2 市長等は、政策の立案、実施、評価等の各段階における情報を、適切な情報伝達手段により、市民に積極的に提供するものとする。
(個人情報の保護)
第27条 市は、個人の権利利益の保護及び市政の適正な運営に資するため、法令又は他の条例で定めるところにより、市が保有する個人情報を適正に取り扱うものとする。
一部改正〔令和4年条例48号〕
第3節 身近な地域におけるまちづくりの推進
(まちづくりセンターを拠点とした地域のまちづくり)
第28条 市は、まちづくりセンターを拠点として、地域住民との協働により、地域の特性を踏まえたまちづくりを進めるものとする。
2 まちづくりセンターは、町内会、自治会等の地縁による団体若しくは地域においてまちづくり活動を行うもの(地縁による団体を除く。)又はこれらの団体等により構成されるまちづくり協議会その他の団体が行うまちづくり活動に対して、その自主性と自立性を尊重しつつ、次に掲げる支援を適切に行うものとする。
(1) まちづくり活動の場及び機会の充実に関すること。
(2) まちづくり活動に資する情報の共有に関すること。
(3) まちづくり活動を行う団体間の連携の促進に関すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、まちづくり活動に資する取組に関すること。
(区におけるまちづくり)
第29条 市は、区役所を拠点として、区民との協働により、区の課題及びその特性を踏まえたまちづくりを進めるものとする。
2 市は、区における課題について、区民の意向を把握するとともに、区民の合意を形成するための意見調整の場を設けるなどの支援を行い、その合意された意見を市政に反映するよう努めるものとする。
3 市は、複数の区に関する課題について、関係する区民の調整が図られるよう必要な支援を行うものとする。
第7章 他の自治体等との連携・協力
(他の自治体等との連携・協力)
第30条 市は、他の自治体と共通するまちづくりの課題について、関係する自治体との連携を図り、その解決に努めるものとする。
2 市は、まちづくりの課題について、必要に応じ、北海道、国等と連携・協力するとともに、関係する制度の整備等の提案を行うものとする。
3 市は、海外の自治体、組織等との連携・協力を深めるとともに、得られた情報や知恵を札幌のまちづくりに生かすものとする。
第8章 市民自治によるまちづくりに関する施策等の評価及びこの条例の見直し
(市民自治によるまちづくりに関する施策等の評価)
第31条 市は、市民自治によるまちづくりに関する施策又は制度がこの条例の趣旨に沿って整備され、又は運用されているかどうかを評価し、必要な見直しを行うための仕組みを整備しなければならない。
2 市は、前項の規定による評価に当たっては、市民の意見が適切に反映されるよう努めなければならない。
(この条例の見直し)
第32条 市は、5年を超えない期間ごとに、市民の意見を聴いたうえで、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて見直し等の必要な措置を講ずるものとする。
(市民自治推進会議)
第33条 前2条の規定による市民自治によるまちづくりに関する施策又は制度についての評価及びこの条例の規定についての検討を行うため、札幌市市民自治推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、委員7人以内をもって組織する。
3 委員は、学識経験者、公募した市民その他市長が適当と認める者のうちから市長が委嘱する。
4 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 委員は、再任されることができる。
6 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、第2項の委員のほかに、推進会議に臨時委員を置くことができる。
7 推進会議に、必要に応じ、部会を置くことができる。
8 前各項に定めるもののほか、推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、市長が定める。
追加〔平成26年条例42号〕
附 則
この条例は、平成19年4月1日から施行する。
附 則(平成26年条例第42号抄)
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(札幌市自治基本条例の一部改正に伴う経過措置)
2 この条例の施行の際現に札幌市市民自治推進会議(第1条の規定による改正後の札幌市自治基本条例第33条第1項に規定する札幌市市民自治推進会議をいう。以下同じ。)に相当する合議体(以下「旧推進会議」という。)の委員である者は、この条例の施行の日に、同条第3項の規定により札幌市市民自治推進会議の委員として委嘱されたものとみなす。この場合において、当該委嘱されたものとみなされる委員の任期は、同条第4項の規定にかかわらず、同日における旧推進会議の委員としての任期の残任期間と同一の期間とする。
附 則(令和4年条例第48号抄)
(施行期日)
第1条 この条例は、令和5年4月1日(以下「施行日」という。)から施行する。