○札幌市福祉のまちづくり条例
平成10年12月15日条例第47号
札幌市福祉のまちづくり条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 基本的施策(第7条―第14条)
第3章 公共的施設、公共的車両等、住宅及び住居の環境の整備
第1節 公共的施設の整備(第15条―第26条)
第2節 公共的車両等、住宅及び住居の環境の整備(第27条・第28条)
第4章 札幌市福祉のまちづくり推進会議(第29条)
第5章 雑則(第30条)
附則
すべての市民が様々な分野における社会活動に参加し、その役割を果たし、心豊かに、安全かつ快適に、そして安心して生活することができる福祉社会を創造することは、私たち札幌市民の共通の願いであり、また責務でもある。
北国札幌の先人は、積雪・寒冷などの厳しい自然に立ち向かい、潤いのある文化を創造し、生活する上での機能豊かな都市を築いてきた。しかし、障害や高齢あるいは疾病、妊娠などの条件にある者の視点に立ったとき、積雪・寒冷などの厳しい自然や、建物などの構造による物理的障壁、偏見などの意識上の障壁その他の日常生活又は社会生活における障壁の存在のために、必ずしも社会活動への参加が容易な状況にあるとは言い難い。
真の福祉社会を創造するためには、自主、自立の意識をもった個々人の支えあいが不可欠であり、幼少時からの不断の教育によって培われる市民の強い連帯の絆を力として、このような障壁を取り除き、誰もが等しく様々な分野における社会活動に参加することができる福祉のまちづくりを積極的に推し進めなければならない。私たち札幌市民は、このような認識の下、新しい時代に向けて積極的にその役割を果たし、一体となってすべての人にやさしい福祉都市を実現することを決意し、ここに、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、すべての市民が、安心して快適に暮らし、自らの意思で自由に行動し、あらゆる社会活動に参加できる福祉のまちづくりについて、市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、市の施策の基本的事項を定めることにより、福祉のまちづくりを総合的かつ計画的に推進し、もってすべての人にやさしい福祉都市の実現に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 障害者、高齢者等 障害者、高齢者、妊産婦その他の者で日常生活又は社会生活において行動上の制限を受けるものをいう。
(2) 福祉のまちづくり 障害者、高齢者等が安全かつ円滑に施設を利用することを可能とすることにより広く社会活動に参加することを促進するとともに、すべての人が社会連帯の理念に基づき相互に交流し、支え合う福祉都市の実現のためのあらゆる環境の整備をいう。
(3) 公共的施設 学校、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、ホテル、事務所、共同住宅、老人ホーム、道路、公園その他の多数の者の利用する施設として規則で定めるものをいう。
(市の責務)
第3条 市は、この条例の目的を達成するため、福祉のまちづくりに関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 市は、事業者及び市民の福祉のまちづくりに関する活動に対し、その自発性を尊重しつつ、必要に応じて支援する措置を講ずるものとする。
3 市は、自ら設置し、又は管理する公共的施設を障害者、高齢者等が安全かつ円滑に利用できるようにするための措置を講ずるよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第4条 事業者は、福祉のまちづくりについて理解を深め、自ら、又は他の事業者と協力して、積極的に福祉のまちづくりを推進するよう努めなければならない。
2 事業者は、市がこの条例に基づき実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力しなければならない。
3 事業者は、自ら所有し、又は管理する公共的施設を障害者、高齢者等が安全かつ円滑に利用できるようにするための措置を講ずるよう努めなければならない。
(市民の責務)
第5条 市民は、福祉のまちづくりについて理解を深め、自ら、又は相互に協力して、積極的に福祉のまちづくりを推進するよう努めなければならない。
2 市民は、市がこの条例に基づき実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力しなければならない。
3 市民は、障害者、高齢者等が安全かつ円滑に利用できるよう整備された公共的施設の利用の妨げとなる行為をしてはならない。
(市、事業者及び市民の協力及び連携)
第6条 市、事業者及び市民は、相互に協力し、及び連携して、一体となって福祉のまちづくりを推進しなければならない。この場合において、市、事業者及び市民は、災害時及び積雪寒冷期における障害者、高齢者等についての対策に配慮するものとする。
第2章 基本的施策
(指針の策定)
第7条 市長は、福祉のまちづくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる指針(以下「推進指針」という。)を策定するものとする。
2 推進指針に定める事項は、次のとおりとする。
(1) 福祉のまちづくりに関する目標
(2) 福祉のまちづくりに関する施策の方向
(3) 市、事業者及び市民が一体となって福祉のまちづくりを推進するための具体的方針
(4) 前3号に掲げるもののほか、福祉のまちづくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために重要な事項
3 市長は、推進指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、札幌市福祉のまちづくり推進会議に諮るものとする。
(情報の提供、教育の充実等)
第8条 市は、福祉のまちづくりに関して市民及び事業者が理解を深めるとともに、市民及び事業者の自発的な活動を促進するため、福祉のまちづくりに関する情報の収集及び提供、教育の充実並びに学習の支援に努めるものとする。
(防災上の配慮)
第9条 市は、防災に関し、障害者、高齢者等に配慮した情報の提供、避難のための施設の確保その他必要な施策の推進に努めるものとする。
(雪対策上の配慮)
第10条 市は、雪対策に関し、障害者、高齢者等に配慮した情報の提供その他必要な施策の推進に努めるものとする。
(調査研究)
第11条 市は、福祉のまちづくりに関する施策を効果的に推進するため、必要な調査及び研究を実施するものとする。
(財政上の措置)
第12条 市は、福祉のまちづくりを推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(表彰)
第13条 市長は、福祉のまちづくりの推進に関して優れた取組を行った者に対して表彰を行うことができる。
(福祉のまちづくり推進モデル事業)
第14条 市長は、福祉のまちづくりに関し市民が主体的に実施する事業であって、福祉のまちづくりを推進するための先駆的な取組と認めるものを福祉のまちづくり推進モデル事業(以下「推進モデル事業」という。)として指定することができる。
2 市は、推進モデル事業に関し、技術的援助その他必要な支援措置を講ずるものとする。
3 市長は、推進モデル事業を指定するときは、あらかじめ、札幌市福祉のまちづくり推進会議に諮るものとする。
第3章 公共的施設、公共的車両等、住宅及び住居の環境の整備
第1節 公共的施設の整備
(整備基準)
第15条 市長は、公共的施設の廊下、階段、傾斜路、便所、敷地内の通路、駐車場、出入口、エレベーター、歩道、園路その他の規則で定める部分の構造、配置及び設備に関し、障害者、高齢者等が円滑に利用できるよう整備するために必要な基準(以下「整備基準」という。)を定めるものとする。
2 前項の整備基準は、規則で定める。
(整備基準の遵守)
第16条 公共的施設の新設若しくは新築(用途を変更して公共的施設とする場合を含む。)又は整備基準に係る部分の増築、改築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替え(以下「新設等」という。)をしようとする者は、整備基準を遵守しなければならない。ただし、当該公共的施設の規模又は構造、地形の状況等により、当該公共的施設の部分を整備基準に適合させることが著しく困難であると市長が認めるときは、この限りでない。
2 この章の規定の施行の際現に存する公共的施設を所有し、又は管理する者は、当該公共的施設を整備基準に適合させるよう努めなければならない。
(公共的施設の新設等の事前協議)
第17条 公共的施設(規則で定める公共的施設を除く。以下この条から第20条までにおいて同じ。)の新設等をしようとする者(以下「施設新設者等」という。)は、当該工事に着手する前に、規則で定めるところにより、当該工事の内容について市長と協議しなければならない。当該協議の内容の変更(規則で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも同様とする。
2 市長は、前項の規定による協議に係る公共的施設の新設等の内容が整備基準に適合しないと認めるときは、当該協議に係る施設新設者等に対し、必要な指導及び助言をすることができる。
(工事完了の届出、完了検査等)
第18条 施設新設者等は、公共的施設の新設等に係る工事を完了したときは、規則で定めるところにより、速やかにその旨を市長に届け出て、当該公共的施設に係る整備基準への適合に関し市長の検査を受けなければならない。
2 市長は、前項の規定による工事完了の届出をしない者に対し、当該届出をするよう指導することができる。
3 市長は、第1項の規定による検査を行った場合において、当該検査に係る公共的施設が整備基準に適合していないと認めるときは、当該公共的施設に係る施設新設者等に対し、必要な指導及び助言をすることができる。
(勧告)
第19条 市長は、第17条の規定による協議に係る公共的施設の新設等の内容が整備基準に著しく適合しないと認めるときは、当該公共的施設に係る施設新設者等に対し、必要な勧告をすることができる。
2 市長は、第17条の規定による協議が整った場合において、当該施設新設者等が当該整った協議の内容と異なる工事をしたと認めるときは、当該施設新設者等に対し、必要な勧告をすることができる。
3 市長は、施設新設者等が第17条の規定による協議をせずに公共的施設の新設等に着手したと認めるときは、当該施設新設者等に対し、当該協議をすべきことを勧告することができる。
(公表)
第20条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、札幌市福祉のまちづくり推進会議に諮るものとする。
3 市長は、第1項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、前条の規定による勧告を受けた者の意見を聴かなければならない。ただし、その者が正当な理由なく意見の聴取に応じないとき、その他意見の聴取が困難であると市長が認めるときは、この限りでない。
(機能の維持)
第21条 公共的施設を所有し、又は管理する者は、整備基準に適合している部分の機能を維持するよう努めなければならない。
(既存の公共的施設の措置に関する報告の徴収等)
第22条 市長は、必要があると認めるときは、既存の公共的施設を所有し、又は管理する者に対し、当該公共的施設における障害者、高齢者等が安全かつ円滑に利用できるようにするための措置の状況について報告を求めることができる。
2 市長は、前項の報告があったときは、当該報告をした者に対し、整備基準を勘案して、必要な指導及び助言をすることができる。
(適合証の交付)
第23条 市長は、公共的施設が整備基準に適合していると認めるときは、規則で定めるところにより、整備基準に適合していることを証する証票を交付するものとする。
(特定適合施設表示板の交付等)
第24条 市長は、整備基準に適合していると認める公共的施設のうち規則で定めるもの(以下「特定適合施設」という。)を所有し、又は管理する者に対し、規則で定めるところにより、特定適合施設である旨を表示する標識(以下「特定適合施設表示板」という。)を交付するものとする。
2 特定適合施設を所有し、又は管理する者は、前項の規定により特定適合施設表示板の交付を受けたときは、当該施設が特定適合施設であることを障害者、高齢者等に周知するため、特定適合施設表示板を当該施設の見やすい箇所に掲示しなければならない。
(報告の徴収及び立入調査)
第25条 市長は、第17条から第20条まで、第22条第2項、第23条及び前条の規定の施行に必要な限度において、公共的施設を所有し、又は管理する者(施設新設者等を含む。)に対し、必要な報告を求め、又はその職員に、公共的施設若しくはその工事現場に立ち入り、整備基準への適合状況その他必要な事項について調査させることができる。
2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
(国等に関する特例)
第26条 国、地方公共団体その他規則で定める公共的団体(以下「国等」という。)については、第17条から第20条まで、第22条第2項及び前条の規定は、適用しない。ただし、市長は、必要があると認めるときは、公共的施設の新築等をしようとする国等に対し、当該公共的施設の整備基準への適合状況その他必要な事項について報告を求めることができる。
2 市長は、国等から、第22条第1項又は前項の規定による報告があったときは、当該報告をした国等に対し、必要な要請を行うことができる。
第2節 公共的車両等、住宅及び住居の環境の整備
(公共的車両等の整備)
第27条 公共的車両等(一般旅客の用に供する鉄道の車両、自動車その他これらに類するものをいう。)を所有し、又は管理する者は、障害者、高齢者等が安全かつ円滑に利用できるよう整備に努めなければならない。
(住宅及び住居の環境の整備等)
第28条 市民は、その所有する住宅について、居住する者が身体の機能の状況に応じて安全かつ快適に生活できるよう整備に努めなければならない。
2 市民は、その居住する地域において、障害者、高齢者等に配慮した住居の環境の整備及び維持に努めなければならない。
3 住宅を供給する事業者は、障害者、高齢者等が安全かつ快適に生活できるよう配慮された住宅、障害者、高齢者等に配慮した住居の環境が整備された住宅団地等の供給に努めなければならない。
第4章 札幌市福祉のまちづくり推進会議
(福祉のまちづくり推進会議)
第29条 市長の諮問に応じ、福祉のまちづくりの推進に関する重要事項を調査審議するため、札幌市福祉のまちづくり推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、整備基準に関する事項その他福祉のまちづくりの推進に関し必要と認める事項について、市長に意見を述べることができる。
3 推進会議は、委員30人以内で組織する。
4 委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 学識経験を有する者
(2) 事業者
(3) 民間諸団体の代表者
(4) 関係行政機関の職員
(5) 前各号に掲げる者のほか、市長が必要と認める者
5 委員の任期は2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
6 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、推進会議に臨時委員を置くことができる。
7 前各項に定めるもののほか、推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 雑則
(委任)
第30条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附 則
1 この条例は、平成11年6月1日から施行する。ただし、第3章の規定は、平成12年4月1日から施行する。
附 則(平成17年条例第102号)
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(経過措置)
2 改正後の第2条第3号及び第3章第1節の規定は、平成18年7月1日(以下「適用日」という。)以後に札幌市福祉のまちづくり条例(以下「条例」という。)第17条第1項の規定による協議(以下「事前協議」という。)を開始した公共的施設(改正後の第2条第3号に規定する公共的施設をいう。以下同じ。)及び適用日以後に新設等(条例第16条第1項に規定する新設等をいう。以下同じ。)に着手した公共的施設(条例第17条第1項の規則で定める公共的施設に限る。)について適用し、適用日前に事前協議を開始した公共的施設及び適用日前に新設等に着手した公共的施設(同項の規則で定める公共的施設に限る。)については、なお従前の例による。
(適用日前における特例)
3 この条例の施行の日以後に公共的施設の新設若しくは新築(用途を変更して公共的施設とする場合を含む。)又は改正後の第15条の規定により定められた整備基準(以下「新整備基準」という。)に係る部分の増築、改築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替えをしようとする者は、前項の規定にかかわらず、適用日前においても、新整備基準を遵守することができる。この場合においては、改正後の第2条第3号及び第3章第1節の規定を適用する。
(現に存する公共的施設等に関する努力義務)
4 適用日において現に存し、又は附則第2項の規定により従前の例によることとされる公共的施設(条例第16条第2項の規定に該当するものを除く。)を所有し、又は管理する者は、当該公共的施設を新整備基準に適合させるよう努めなければならない。