○札幌市環境基本条例
平成7年12月13日条例第45号
札幌市環境基本条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 環境の保全に関する基本的施策(第7条―第26条)
第3章 地球環境保全の推進のための施策(第27条・第28条)
第4章 環境審議会及び環境保全協議会(第29条・第30条)
附則
札幌は、我が国有数の大都市であるが、幸いにして、南西部に広がる森林地帯に代表されるように極めて豊かな自然に恵まれている。夏季のさわやかさ、冬季の雪と厳しい寒さを特徴とした札幌の気象は、鮮明な四季の移り変わりがみられ、私たちにすばらしい季節感を与えてくれる。
札幌は、北方圏の拠点都市として高度な機能を備えた都市づくりが進められてきた。その結果、私たちの生活は飛躍的に便利なものとなった。
しかし、都市化に伴う人口の集中や産業の集積などによって、資源やエネルギーが大量に消費され、私たちの身近な環境に様々な影響が及ぶこととなり、更には私たちの生存の基盤である地球環境が脅かされるまでに至っている。
人間は、自然の生態系の一構成要素でありながら、今やその中で極めて大きな力を持ち、人間の活動そのものが環境の状態を左右するようになった。私たちは、地球環境の保全の観点から生活のあり方を見直さなければならないという人類共通の課題に直面している。
恵まれた身近な環境、更にはかけがえのない地球環境を保全し、これを良好な状態で将来の世代に引き継ぐことは、私たちの願いであり、また、使命でもある。
私たちは、地球環境の中で生きるものの一員としての自覚を持ち、創意と工夫をこらし、国の内外の多様な歴史と文化を有する人々とも互いに協力し合い学び合って、環境の保全に努めていかなければならない。
このような認識の下、札幌市に集うすべての人々の参加により、良好な環境を確保するとともに、地球環境の保全に貢献していくために、ここに、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本的な事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民が健康で文化的な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この条例において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この条例において「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境その他の自然環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全は、市民が健康で安らぎや潤いが実感できる快適な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保し、これを将来の世代へ継承していくことを目的として行われなければならない。
2 環境の保全は、市、事業者及び市民が自らの活動と環境とのかかわりを認識し、環境への十分な配慮を行うことにより、環境への負荷が少なく、持続的に発展することができる都市を構築することを目的として行われなければならない。
3 地球環境保全は、市、事業者及び市民が自らの問題としてとらえ、それぞれの事業活動及び日常生活において積極的に推進されなければならない。
4 環境の保全は、市、事業者及び市民のすべてがそれぞれの責務を自覚し、相互に協力・連携して推進されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定及び実施に当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、その事業活動に伴う資源及びエネルギーの利用等による環境への負荷を低減するように努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、事業者は、環境の保全に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境の保全に関する施策に協力しなければならない。
(市民の責務)
第6条 市民は、その日常生活に伴う資源及びエネルギーの消費等による環境への負荷を低減するように努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、環境の保全に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境の保全に関する施策に協力しなければならない。
第2章 環境の保全に関する基本的施策
(施策の策定等に係る基本方針)
第7条 環境の保全に関する施策の策定及び実施は、第3条に定める基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行うものとする。
(1) 市民の健康が保護され、及び生活環境が保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素を良好な状態に保持すること。
(2) 森林、緑地、水辺地等における多様な自然環境を地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全すること。
(3) 野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保を図ること。
(4) 自然との豊かな触合いを確保するとともに、潤いのある都市景観の創出及び保全並びに歴史的文化的遺産の保全及び活用を図ること。
(5) 環境に配慮した生活文化の形成を図ること。
(6) エネルギーの有効利用、資源の段階的及び循環的利用並びに廃棄物の減量を促進すること。
(7) 地球環境保全に資する施策を積極的に推進すること。
(環境基本計画)
第8条 市長は、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、札幌市環境基本計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 環境基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 環境の保全に関する長期的な目標
(2) 環境の保全に関する施策の方向
(3) 環境の保全に関する配慮の指針
(4) 前3号に掲げるもののほか、環境の保全に関する重要事項
3 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、市民及び事業者の意見を反映することができるように必要な措置を講ずるものとする。
4 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ札幌市環境審議会の意見を聴かなければならない。
5 市長は、環境基本計画を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。
6 前3項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(札幌市環境白書)
第9条 市長は、市民に環境の状況、環境への負荷の状況、環境基本計画に基づき実施された施策の状況等を明らかにするため、札幌市環境白書を定期的に作成し、これを公表するものとする。
(環境影響評価の措置)
第10条 市は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者が、あらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境の保全について適正な配慮をすることができるように必要な措置を講ずるものとする。
(規制の措置)
第11条 市は、公害の原因となる行為及び自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講ずるものとする。
2 前項に定めるもののほか、市は、環境の保全を図るため必要があるときは、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
(経済的措置)
第12条 市は、市民及び事業者が環境への負荷の低減のための施設の整備その他の環境の保全に資する措置をとることを助長するため必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるように努めるものとする。
2 市は、環境への負荷の低減を図るため、特に必要があるときは、市民又は事業者に適正な経済的負担を求める措置を講ずるものとする。
(環境の保全に関する施設の整備等)
第13条 市は、廃棄物及び下水の処理施設、環境への負荷の低減に資する交通施設及び地域冷暖房施設その他の環境の保全に資する施設の整備を図るため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(エネルギーの有効利用等の促進)
第14条 市は、環境への負荷の低減を図るため、市民及び事業者によるエネルギーの有効利用、資源の段階的及び循環的利用並びに廃棄物の減量が促進されるように必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たって、エネルギーの有効利用、資源の段階的及び循環的利用並びに廃棄物の減量に努めるものとする。
(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進)
第15条 市は、環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進を図るため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(市民及び事業者の参加の機会の確保)
第16条 市は、環境の保全に関する施策を推進するに当たっては、市民及び事業者の参加の機会を確保するように努めるものとする。
2 前項の場合において、市は、児童及び生徒の参加についても配慮するものとする。
(環境の保全に関する教育及び学習の推進)
第17条 市は、市民及び事業者が環境の保全についての理解を深めるとともに、これらの者による環境の保全に関する活動が促進されるように、環境の保全に関する教育及び学習の推進を図るものとする。
2 前項の場合において、市は、特に児童及び生徒の教育及び学習を積極的に推進するために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(市民等の自発的な活動の支援)
第18条 市は、前条に定めるもののほか、市民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体による環境の保全に関する自発的な活動が促進されるように必要な支援の措置を講ずるものとする。
(事業者の環境管理に関する取組の支援)
第19条 市は、事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るための事業者の環境管理に関する取組が促進されるように、必要な支援の措置を講ずるものとする。
(事業者との協定の締結)
第20条 市長は、事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るため特に必要があるときは、事業者との間で環境への負荷の低減に関する協定を締結するものとする。
(情報の収集及び提供)
第21条 市は、環境の保全に関する情報の収集に努めるとともに、環境の保全に資するために必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。
(調査研究等の実施)
第22条 市は、環境の保全に資するため、必要な調査研究を実施するとともに、技術の開発及びその成果の普及に努めるものとする。
(監視等の体制の整備)
第23条 市は、環境の状況を的確に把握するため、必要な監視、測定、試験及び検査の体制の整備に努めるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力等)
第24条 市は、市域外へ及ぼす環境への負荷の低減に努めるとともに、環境の保全のための広域的な取組を必要とする施策については、国及び他の地方公共団体と協力してその推進に努めるものとする。
(施策の推進体制の整備)
第25条 市は、その機関相互の緊密な連携及び施策の調整を図り、環境の保全に関する施策を推進するための体制を整備するものとする。
2 市は、環境の保全に資するための活動を市民及び事業者とともに推進するための体制を整備するものとする。
(財政上の措置)
第26条 市は、環境の保全に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるように努めるものとする。
第3章 地球環境保全の推進のための施策
(地球環境保全に資する施策の推進)
第27条 市は、地球環境保全に資するため、地球の温暖化の防止、オゾン層の保護等に関する施策を積極的に推進するものとする。
(地球環境保全に関する国際協力の推進)
第28条 市は、国等と連携し、環境の保全に関する技術及び情報の提供等により、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
第4章 環境審議会及び環境保全協議会
(環境審議会)
第29条 環境の保全に関する基本的事項を調査審議するため、札幌市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。
(1) 環境基本計画に関すること。
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する基本的事項
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、市長に意見を述べることができる。
4 審議会は、委員30人以内で組織する。
5 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱する。
(1) 学識経験を有する者
(2) 関係行政機関の職員
(3) 札幌市環境保全協議会の推薦を受けた者
(4) その他市長が適当と認める者
6 委員の任期は、2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
7 特別の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に臨時委員を置くことができる。
8 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(環境保全協議会)
第30条 市民及び事業者が、自らの環境の保全に関する活動を効果的に行うための方策、環境の保全に関する市の施策等に関して協議するため、札幌市環境保全協議会(以下「協議会」という。)を置く。
2 協議会は、その協議の結果を市長に報告するものとする。
3 前2項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第30条の規定及び次項中札幌市公害防止条例(昭和47年条例第28号)第12条の改正規定は平成8年6月1日から、第29条の規定、次項中札幌市公害防止条例の目次の改正規定、同条例第16条第2項の改正規定(「札幌市公害対策審議会」を「札幌市環境審議会」に改める部分に限る。)及び同条例第4章の改正規定並びに附則第3項の規定は平成8年7月1日から施行する。
2 札幌市公害防止条例の一部改正〔省略〕
附 則(平成11年条例第39号)
1 この条例は、公布の日から施行する。
2~4 省略