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セミの鳴き声は夏の風物詩であり、セミは日本人になじみの深い昆虫の一つです。札幌市では日本に分布する35種のセミのうち10種の鳴き声が確認されています。しかし、これら10種のセミすべてが市内で発生しているのか、どのような環境で発生しているのかはよくわかっていません。市内に広く分布する種もあれば、限られた環境にしか見られない種や時々鳴き声が聞かれる程度の種もいます。長期的に見れば地球温暖化や都市化などによる自然環境の変化によって、これらのセミの分布は変化していると考えられます。
札幌市博物館活動センターでは、市民の皆さんに参加していただいて札幌市内のセミの分布調査を行っています。現在の分布状況を記録し、それぞれのセミがどのような環境で発生しているのかを明らかにするとともに、調査を継続し、分布がどのように変化していくかを見ていきます。こうした調査は将来の自然環境の変化の影響を予測するため、またセミのいる環境を後世に残すためにも重要な情報を提供することでしょう。
この調査ではセミの“ぬけがら”を使用します。“ぬけがら”はセミが羽化した際に残るもので、他の生物に利用されることも少ないため採集しても生態系への影響はほとんどありません。また、成虫は遠く離れた場所から偶然飛んで来る場合もありますが、地上に出てきた幼虫はあまり移動しませんから、その場所で発生していることを示す確実な証拠となります。さらに、“ぬけがら”を証拠標本として博物館に残すことで、学術的にも貴重な資料となります。
(右写真:アブラゼミの羽化)
第1次分布調査(2008-2010年実施)の結果をまとめたリーフレットを発行しました。館内で配布しています。また、PDF版も「これまでに発行した報告書の紹介・収蔵庫の紹介」からダウンロードできます。
第1次調査の標本収集は終了しましたが、今後もセミの“ぬけがら”や鳴き声の情報をご提供いただいた場合は参考資料としてお引き受けし、博物館の収蔵資料として保存いたします。
「2010札幌市セミ調査」(第1次分布調査・第3年目)2010年の調査結果
第1次分布調査のしめくくりとして、札幌市内全域を対象に、“ぬけがら”によるセミの分布調査を行いました。38名の方が参加し、札幌市内から合計274個体の“ぬけがら”と合計48地点の鳴き声の情報が寄せられました。“ぬけがら”では7種が見つかり、“ぬけがら”が見つかっていない3種を含む8種の鳴き声が確認されました。これまでに記録のある10種すべてが少なくとも“ぬけがら”か鳴き声のどちらかで確認されたことになります。
「2009札幌市セミ調査」(第1次分布調査・第2年目)2009年の調査結果
札幌市内全域を対象に“ぬけがら”とアンケートによる分布調査を行いました。124の個人・団体が参加し、札幌市内から合計1098個体の“ぬけがら”と合計42地点の鳴き声などの情報が寄せられました。“ぬけがら”は7種、鳴き声は9種が確認されました。市内では珍しいミンミンゼミの“ぬけがら”が定山渓で見つかり、市内での発生が確認できました。
「2008札幌市セミ調査」(第1次分布調査・第1年目)2008年の調査結果
札幌市内全域を対象に、“ぬけがら”を使ったセミの分布調査を行いました。セミの発生は例年に比べて少なかったですが、37名の方より札幌市内外から合計326個体の“ぬけがら”が寄せられました。ご協力ありがとうございました。セミの種ごとの分布の傾向が見えてきました。
主催:札幌市【担当部署:札幌市博物館活動センター(観光文化局文化部市民文化課博物館)】
企画・運営:札幌市博物館活動センター、札幌昆虫自然史研究会
協力:(財)札幌市公園緑化協会、札幌市豊平川さけ科学館、西岡公園管理事務所、
野幌森林公園自然ふれあい交流館、定山渓まちづくりセンター、札幌市立定山渓小学校
GIS技術サポート:(株)GIS北海道
写真提供:神戸崇
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