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更新日:2022年12月22日

宮の森中学校でトークショーを開催しました

 ~札幌の未来を創る中学生へ、札幌の企業経営者が熱く語ったこと~

宮の森中学校で行われました職業講演会の様子 

 中学生を前に札幌の企業経営者が仕事について人生について語る、そんなトークショーが札幌市宮の森中学校で行われました。
 総合学習の時間を利用して行われたトークショーでお話をしたのは、附柴裕之さんと市川彩子さんご夫妻。附柴さんは株式会社GEL-Designの社長で、市川さんは部門の責任者。そして2人から絶妙に話を聞きだしていったのは、宮の森中学校PTA会長の杉山幹夫さん。この3人の共通項は、「札幌スタイル」。
 札幌スタイルという札幌で生まれた発想、私たちの暮らしの中から生まれるデザインを力に新しい産業を生み出していこうとする動き。この札幌スタイルのホームページづくりという情報発信を他の企業関係者や行政、NPOといったさまざまな立場のメンバーと一緒に考えて行動していこうという仲間なのです。
 きっかけは、宮の森中学校の平野教頭やPTAの方が、さっぽろの横顔に紹介されていた附柴さんのインタビューを読んだことから。附柴さんも市川さんも道外出身ですが、大学進学を機に札幌に来て、そしてそのまま札幌で自分のやりたいことに集中するために、会社や事業を立ち上げたという人たちなのです。
 宮の森中学校の先生方はそんな2人に、学校の先生や、保護者とは違った目線で仕事を選ぶことや人生を選ぶことの意味を、生徒に語ってほしいとお願いしていました。
その期待に応えるべく、附柴さんは事前に、生徒、先生、保護者に対してアンケートを実施し、アンケートの内容を分析した上で、トークショーに臨みました。
 中学生向けに真剣に語られたトークショーの内容は、一応大人の私が聞いてもぐっと迫るものがありました。せっかくなのでトークショーの内容を紹介します。

 

 

附柴さんと市川さんの写真

 附柴さんと市川さん。株式会社GEL-Designでは高機能ジェル素材の研究開発、研究開発支援の事業、消費者向け製品の開発から販売まで行っている。

学生たちの写真

 宮の森中学校の3年生。事前に職業調べをして学級内で発表していたという。

 

トークショーの様子の写真

 左は聞き手のNPO法人シビックメディア 杉山さん。時々立ち上がって中学生や校長、保護者に質問の答えを聞きに行っていた。

トークショーに参加している保護者の写真

 


 トークショーには保護者の方も30人弱ほどいらっしゃっており、トークショー後に家庭教育学級の一環としてPTAの方と今回の出演者が交流する機会も設けられました。保護者の方は一人一人心に響いた部分を思い出しながら、感じたこと、思ったことをざっくばらんに話し合いながら意見交換が行われました。
 どの保護者の方も真剣に自分の子供について考えているということが伝わってきて、市川さんはそんな保護者の方々を素敵だなあと漏らしていました。

2人はどんな中学生だったの?そして今の仕事にたどり着くまで。
 破天荒な人生を地で行く自由奔放で突き抜けた感がある附柴さんは中学生の頃は悪がきでした。千葉県出身の附柴さんは、旅行したい場所No.1だった北海道の大学に最初は獣医学部を目指して進学し、その後理学部に入りなおし、大学院卒業後は免疫に関わる試薬提供の会社に就職が決まっていました。
 会社に入社する前に、大学でまだ研究したいことがあるから1年間会社には行かず研究に専念させてくれと社長に直談判し、それが認められ仲間たちと研究をしていたのが会社をつくるきっかけになりました。もちろんそんなことはその会社でも前代未聞の出来事だったようです。

 一方の市川さんはまじめにコツコツタイプの中学生で、その頃なりたかった職業がバレエダンサー、トランペットの演奏者、父親と同じ化学の研究者と3つありました。
 大学では附柴さんと同じ北海道大学の理学部に入ったものの、イマイチ好きなことを見つけられないまま大学院卒業まで勉強を続けます。そんななか、アルバイトをしていたカフェの仕事や趣味でモノをつくることで人をハッピーにすることが自分の幸せではあったと振り返ります。
 大学卒業後は薬で人の役に立てる仕事を思いから大塚製薬に入社し、営業をしていました。

アンケートに答える
 附柴さんはアンケートの中に多かった質問のうち特に大事な3つのことを伝えたいと、思っていました。
 1つめは、人生の中で一番大切な時期は?という質問。会場の中学生にも同じ質問が出されました。「今は受験の時期だから今かなあ」と応える中学生。それに対しての答えは、いつも「今の瞬間」が大事!!というもの。時間は取り戻せないし過去は決して変えられないが、未来はいつでも変えることが出来る。未来につながるのは今で、この瞬間の今を一生懸命生きることが大事だと。
 2つめの質問は自分を好きになるには?というもの。それに対して市川さんは、自分の気持ちに素直になることだと語りました。自分自身、好きなこと本当にやっていいのか悩んでいる時期が長く、それに向かえばそれまで進んできた道にそれることになるため、好きなことをするのに罪悪感を感じたこともあった。しかし、好きなことを仕事にしてもいいんだと思った瞬間に幸せになった。自分の好きなことを通じて、誰かが幸せになればさらにハッピーになると思う、と。附柴さんは自分は好きなことしかしたことがないので可のジョン気持ちは分からないと笑いつつも、見返りを求める「与えられる」側にとどまるのではなく、自分から働きかける「与える」側の人間になろうと提案しました。小さくてもいい、自分が出来ることを伸ばすとそこが社会の接点となり、仕事はそこから生まれるのだと。
 さらに、仕事とは稼ぐことではなく、お金は相手から感謝される価値の量で、喜びを自分が渡すこと、人のために自分が出来ることを積み重ねていくことなのだと。3つ目の質問は社会生活で大事なものは?というもの。人と人との信頼関係が一番大事で、信頼を築くのは一生の仕事だが、失うのは一瞬。けれども、失ったとしても時間と努力を相当かければ取り戻せるものだと付け加えてくれました。

自分の中に毒を持て
 あなたの「好き」は何ですか?という問いかけから、「毒」を持つことを薦める話に。
思わず「毒」ですか?!と繰り返す杉山さんに「毒」なんですと応じる附柴さん。どんな薬でも大量に使えば毒、逆に毒も適切な使い方が出来れば効果効能があるといいます。ここで言う「毒」というのは自分の中で絶対譲れない真理や強い思いのことで、個性そのもののこと。その毒の基となる自分の「好き」はとても大切なんだと言い切ります。
 人生は選択の連続だけど、その選択は自分の「好き」に基づく価値感によって選び取るもの。そして「好き」なことがあったら、何故それが好きなのか考えることも大切で、その理由が分かれば、「好き」と「嫌い」のつきあい方で価値感が育まれるのだと。
 締めくくりは、「嫌いなものの中に本当の好きがある」という言葉。なんとなく嫌いだと思っているものの中にも、突き詰めていくと案外好きなものがあったりする。市川さんも、高校時代に死ぬほど嫌いだった化学が、好きだった先生を喜ばせるために質問をしようと勉強した結果、とても好きになって今の仕事にもつながっているということ。
 これらは、芸術家、岡本太郎さんの著書を引き合いに出しての説明でした。

人生の転機、自分の道
 附柴さんには学生時代、大学や日本社会に絶望した時期がありました。旅行で行ったインドに比べて日本はなんて冷めていてエネルギーのない社会だろうと思ったけれども、失望の時期を経てエネルギーを生む社会をつくりだそうと決心していました。
 それに対して市川さんは大学の同級生に会社を作りたい、世のためになる会社を作るといい続けていた人がいて、それが附柴さんだったと笑います。けれども、やりたいことを口に出して言い続けることが大事で、自分自身もまさにそうだったのでした。石鹸屋になりたいといい続けたら力になってくれる人が増え始めて、実現したのです。
 もともと、市川さんは肌が弱くて市販のものだと荒れてしまうので、たまたま本屋でみつけた石鹸の作り方の本を読んで大学生のころからつくりはじめました。そして、自分の作った石鹸を人にあげたら喜ばれて自分も嬉しいという経験をしていました。
大学院を出てまで石鹸屋になるのかどうかずっと悩んでいましたが、附柴さんにやりたいことをやればいいじゃないと言われたことをきっかけに、石鹸屋になるといい続け、実現させました。附柴さんは、本当にやりたいのならば、「やりたい」と表現するのではなく、「やる」と断言することが大事だと強調しました。
 附柴さんは目標を明確に設定したら失敗を恐れず思い切って挑戦することが大事で、なおかつとことんやりぬいてほしいといいます。努力した先の先のそのまた先に、初めて自分なりの道が見つかるはずだと。
 引き合いに出したのが電球や電話を発明したエジソンの1万回の失敗に耐え抜いたエピソード。エジソンは1万通りの方法を試しただけでそれ自体が成功だと考えていたそうです。1万回の失敗に耐えられるほど好きだろうか?ちょっと好き、中途半端に好きではないだろうか?問いかけていました。

会社の社長はどんな社員がほしい?
 0から1を生み出す仕事をしている、クリエイティブなベンチャー企業として求める人の条件をいくつか紹介してくれました。
・大失敗から自分の限界を知ったり、大成功から自分の強みを知っている人
・素直に学ぶことができる人
・マイペースで他人の意見に惑わされない個性(価値感)を持っている人
・運の良い人(運は努力でよくすることができることを理解している人)
 運を良くするには人に感謝できることが大切だと説明がありました。周囲の協力者に感謝するのはもちろん、少し難しいけれど正しい批判をしてくれる人にも感謝し、更には、特に何かをしてくれるわけでは無いけど自分のことを思ってくれているカゲの応援者も感謝することが大切だといいます。頭がよい、成績がいいというのは条件の中に入っていませんでした。人生にとって頭がいいのは個性の一つに過ぎない、と附柴さんは断言しました。

仕事=自分と社会とのつながり方
 何をするかではなく、何のために仕事をするのだろうかが大事で、例え不純な動機で始めたことであったとしても自分が好きなことが社会に役立つことに結びつくときそれは仕事になると附柴さんは語りました。
 附柴さんによれば、多くの人が仕事内容(何をするか)や会社(働き方)を中心に仕事を探そうとしていますが、それは正しい選択の方法では無いということです。それよりも「何のために」それをするのかを考えて欲しいといいます。だから、その仕事を通じて成し遂げたい本当の自分の望みは何なのかを問いかけていました。自分に対してその問いかけをすることによって社会貢献と自分の好きなことがつながる筈だというのです。
 例として、石鹸作りが好き出会った市川さんが立ち上げた石鹸事業としておこなっている事業で、道北にある森林の面積が90%を占める下川町というまちの森林から取れた資源を使って石鹸の素材に使い、そして石鹸の売上の一部を森林を守る活動に使ってもらうという、取組を紹介してくれました。化粧品製造業によって消費者は良い製品を使うことが出来、事業は雇用の受け皿を作り経済活性化が進みます。加えて、製品が売れて使われることで、その原料が取れる森林が守られ次世代にも続く環境保全の循環が生まれています。

人生における仕事の割合
 附柴さんが計算したところ、人生の10%(約7万時間)、働き盛りの30代~50代では22%が仕事の時間だそう。仕事が人生に占める割合が大きいのだから楽しくしたほうがいいし、何よりも一日の中でも天気のいい時間帯にすることだから楽しくしたほうがいいと笑顔で2人は語りました。

仕事の厳しさ
 仕事とは責任を果たすことで、果たせないとつらいことになります。そして3原則は約束を守ること/相手の期待以上のことをすること/言い訳をしないこと。責任を果たすと喜びが生まれるし、うまくいくことだけでなく、問題が起こったときのための想定をしておくことが大事だと附柴さんは言いました。ただ、好きなだけで仕事が出来ないのはこの理由があるからです。

まとめ
 「今」、「好き」に集中し、「社会」と関わりを持つ!
 最後に、良い質問をした生徒等にはプレゼントがありました。1時間半に及セミナーの間、生徒等は集中して真剣に話に聴き入っていました。
 札幌の暮らしの中にあるデザインや発想を元にした新しい産業を生み出していく・・そんな体現者たちとホームページづくりという情報発信を丁寧にしていたら、長年上司や先輩が夢見ていた中学生への職業教育の機会まで生まれてしまいました。
 将来の消費者、将来の産業を担う中学生に対して、働くことの意義を伝えたい。そんな附柴さんや市川さん、宮の森中学校の先生方、保護者の方の熱い思いが中学生に届いているといいなと思っています。

(平成19年7月20日)

 

 


 

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