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更新日:2018年3月14日

札幌発少量多品種の生産システムに向けて

~さくらシートから分かること~

 

画像:さくらシート

おしゃれなピクニックにも使われているさくらシート。

画像:杉山氏と山内氏

真相を解明するコーディネータの杉山氏と山内氏。

画像:真剣に聞いている参加者

参加した人たちも真剣に聞いている。

 札幌発の地域ブランド、札幌スタイル。札幌の街のブランド力を活かしながら、さまざまな立場の企業や人材が連携してビジネスを産みだしていくネットワーク型の産業を強化するために、札幌市が推進しています。

 この札幌スタイルに認証された製品の中に、野外を美しく楽しめるレジャーシート、さくらシートがあります。この製品は受注企業同士だったデザイナーとメーカーが、共に初めて自ら企画開発した製品。製品が出来上がり、運ばれ店頭に並び消費者に届くまでには多くの課題にぶつかり、時には間違い、誤りを正して現在に至っています。

 さくらシートの企画・開発・小売に関わった人たちは、通常であればさらけだすことのないこうした事情をセミナーという公式の場で発表し、気づいた誤りや課題には出来るだけ対応してきています。去る9月19日に行われた商品開発セミナー(主催:札幌スタイルデザイン開発プロジェクト)において、関係者が再度集まり自らの間違いを認め、さらには学習しながら前進している様子を語りました。語り手は山内ビニール株式会社取締役営業部長の山内浩二さんと、株式会社佐藤デザイン室佐藤斎さんと佐藤裕子さん。語り手の皆さんの話を引き出し、鋭く分析を加えながらコーディネートしたのはウェブシティさっぽろ編集長の杉山幹夫さん。

 セミナーの内容を振り返りながら、分かったことをまとめてみたいと思います。

● 受注主体の企業が自社企画製品に取り組む意味とは

 「さくらシート」開発と在庫を抱えるリスクを負ったのは、創業してから一度も赤字決算になったことのないという、山内ビニール加工株式会社。同社がさくらシートの企画に出会う前の背景として、景気の悪化によって受注主体の企業は仕事が激減するという産業構造の激変を体感していました。だからこそ、取引先からの依頼を丁寧に受け、受注生産を続けてきた企業が、さくらシートの開発というあえて在庫を抱える仕事に取り組むということ自体が、企業の今後の在り方を問い直す機会になったといいます。

 つまり、さくらシートの在庫を抱える決心をしたとき、これからは戦略的に提案できる企業でなくてはならないと、会社としての経営方針を抜本的に作り替える努力をしたのでした。

 またその一方で、今まで受注生産を丁寧に続け、顧客からの要望にこたえられる開発力があったからこそ、さくらシートの開発も出来たのであり、受注生産企業には既に一定程度の開発力があるということも確認できました。

● 流通・販売の視点の欠如とその対処1

 さくらシートという製品は、山内ビニール加工(株)が(株)佐藤デザイン室の企画に賛同したことから製造することが出来、在庫を持つことが出来ました。

 しかし、さくらシートは、一定単位以上のものを生産したのに、工場での人件費と材料原価だけしかのせていない価格設定にしてしまいました。つまり、在庫管理費・販売管理費・営業費や倉庫手数料、販売終了までの金利負担、再開発の費用等・小売利益等の流通に係る費用を見込まなかったため、小売・問屋の経費が出ず、流通にのりにくくなったのです。

 価格設定はまず、在庫を持つ企業が、どういった形態で販売したいのかによって決まるはずです。直販、ある意味手売りでもさばける程度の少ない生産個数であれば、原価と多少の利益等だけを見込んだ価格におさえてもよかったのかもしれません。

 その原因は、デザイナーの想いからなるべく安い価格帯にしようと値付けしたことにあります。企画を提案したデザイナーと、開発し在庫を抱えたメーカーだけのチームで価格設定などを行っていたため、販売の立場の人間が不在だったということもあげられます。

 また、購入しそうな消費者に、いくらなら買うのかという聞き取りも行っていましたが、消費者に物の値段を尋ねると極端に安い値段をつける傾向があるので気をつけなくてはならないことを、昨年のセミナーで学びました。

 以上のような経緯を経てさくらシートチームは、自らの価格設定の誤りと販売の視点が欠けていたことを自覚し、販売のパートナーを新たに見つけ、値段を上げたことで、ようやく今年から製品が少しづつ市場に流通するようになったのでした。

● 流通・販売の視点の欠如とその対処2

 さくらシートは現在、値上げ前よりも売上を伸ばしています。

 今回のセミナーの場では、今回の値上げにあたり再生産の資金と販売完了時までの金利負担を原価に載せていなかったことが明らかになり、ようやく正常な価格設定のための費用感覚をさくらシートチームは認識することが出来ました。この課題をどのように解決するかは、その後別の機会に報告されることでしょう。

● 札幌スタイルとの出会いとその影響

 さくらシートチームは、札幌スタイル認証を受けたことをきっかけに東京インターナショナル・ギフトショーという小売・販売の最前線の現場に触れることが出来、そのときに初めて流通の視点の欠落に気がついたといいます。
 そして、札幌スタイルのPR活動を通じて出会った立場の異なる企業や人たちのおかげで学習し、ネットワークが広がり、企業自体の認知度が高まったことを振り返り、企業全体の価値が向上したと受け止めています。

● 自社企画の生産に取り組んだ後の企業の変化

 山内さんは、今後もおそらくこうした取り組みを行うだろうし、後に続いて同様の取り組みに踏み出そうとする企業や人材の応援をしたいと考えています。

 佐藤齋さんは、地域ブランドにおけるプロモーション活動やプロモーション活動を通じて構築されるネットワークの重要性を認識し、既存の取引先に札幌スタイルの関係者を紹介する活動を地道に始めています。

● さくらシートの事例から分かること

 この事例は、企業が正常な価格設定のための費用感覚を持つことの大事さを教えてくれます。

画像:さくらシートチーム
他の人の参考にしてほしいとオープンにしてくれたさくらシートチーム。

 実は、さくらシート以外にも価格設定が失敗していて売れない事例が多数あるようで、そういう話が製造だけでなく流通の現場からも聞こえてくるのです。

 それでは、こうした費用感覚を持つためにはどうしたらいいのでしょうか。

 ひとつは、最初から解っていないことを理解して潔く外部に頼る。もしくは、企画・開発・流通に携わる全ての人間が、この感覚を持つかのいずれかなのでしょう。さくらシートチームは、自らのチームにその感覚がないことを理解した時点で、外部のパートナーと組み、役割分担を明確にすることで次の一歩を踏み出しました。「餅は餅屋」といいますが、その道の事は、やはりその道の専門家に任せるのが、良策だと気づいたことは重要な変化だったと思います。

 最後に、さくらシートチームが価格設定の誤りなど、通常であれば隠すようなことまで勇気を出してオープンにさらしてくれたのは、似たようなことで悩んでいるであろう人たちの参考に少しでも役立って欲しいという想いからです。これを読んでいただいた方が、ぜひとも考えるきっかけになればいいと関係者一同願っています。

(平成20年11月19日・記)

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