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更新日:2018年10月12日

カプノサイトファーガ感染症

カプノサイトファーガ感染症とは

イヌ・ネコの口腔内に常在している3種の細菌、カプノサイトファーガ・カニモルサス(C.canimorsus)、カプノサイトファーガ・カニス(C.canis)及びカプノサイトファーガ・サイノデグミ(C.cynodegmi)を原因とする感染症です。
この病気は、イヌやネコに咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染します。なお、動物による咬傷に対し、報告されている患者数は非常に少ないことから、診断に至らなかった患者がいるとしても、本病は感染しても稀にしか発症しないと考えられます。

主な症状

潜伏期間は、1~14日とされています(多くは1~5日)。発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などを前駆症状として、重症化した例が主に報告されています。
重症化した例では敗血症を示すことが最も多いですが、さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症性ショックや多臓器不全に進行して死に至ることがあります。敗血症以外では、髄膜炎を起こすこともあります。なお、敗血症例の約26%、髄膜炎例の約5%が亡くなるとされています。C.canimorsus及びC.canis感染の方が、C.cynodegmi感染よりも重篤な症状を示します。
軽症例については報告が少ないため、その実態はよくわかっていません。

感染経路

主にイヌやネコによる咬傷・掻傷から感染しますが、傷口をなめられて感染した例も報告されています。これまで、ヒトからヒトへの感染の報告はありません。

ほとんどのイヌやネコが口腔内に保菌していることから、ペットとして飼育しているイヌ・ネコからの感染も数多く報告されています。また、健康な方でも、持病(糖尿病、高血圧、免疫抑制剤の使用、脾臓摘出など)を持っている方と同程度の患者数が報告されています。したがって、日頃から動物とは節度を持ってふれあうことが重要です。

保菌状況

国内のイヌの74~82%、ネコの57~64%がC.canimorsusを保菌しているというデータがあります。同様にC.cynodegmiの保菌率はイヌ86~98%、ネコ84~86%です。C.canisは近年報告された新しい菌種のため、現在調査中です。
いずれにしても、イヌ・ネコの保菌率が高いことから、全てのイヌやネコが保菌していると考えた方が良いでしょう。なお、これらの菌はイヌやネコの口腔内に常在している菌ですので、イヌやネコは保菌していても症状を示しません。
他の動物にも、その動物に特有のカプノサイトファーガ属菌が存在すると考えられますが、詳細は不明です。

治療方法と予防方法

イヌやネコに咬まれたり引っ掻かれたりしたときは、傷口を石けんと流水でよく洗いましょう。傷が小さくても感染する可能性があるので、万が一の時に医療機関に咬掻傷歴を伝えられるよう、家族にイヌやネコによる咬傷があったことを伝えておきましょう。また、傷口をイヌやネコになめられないようにしましょう。

なお、動物用及び人用、いずれもワクチンはありません。日頃から、動物との過度のふれあいは避け、動物と触れあった後は手洗いなどを確実に行ってください。また、イヌやネコに咬まれたり、ひっ掻かれたりしないように注意しましょう。
本感染症だけでなく、一般的な動物由来感染症予防のためにも、ペットには、このような感染症のリスクもあることを理解した上で飼うことが重要です。

発生状況

日本国内

日本においては、1993年から2017年末までに計93例(うち死亡19例)が確認されています。大半がC.canimorsusの感染例ですが、このうちの重症例3例(うち死亡1例)は2016年に登録された新しい菌種であるC.canisの感染であることがわかっています。また、C.cynodemgi感染は軽症例2例の報告があります。

諸外国

1976年に米国で報告された敗血症例が、最初の文献報告とされています。その後、2017年末までに世界中で約500人の患者が報告されています。敗血症発症時の致死率は25%程度で、国内の報告とほぼ同様です。1996年のデンマークの報告では、人口100万人あたりの患者数が0.5人、致死率31%とされていましたが、2016年のフィンランドの報告によると同4.1人、5%です(重症例の致死率は19%)。軽症例がより多く把握されるようになったことにより患者数が増え、致死率は低下する傾向にあります。

 

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