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更新日:2011年2月28日

学会発表抄録(2003年)

● 日本動物園水族館協会第51回動物園技術者研究会

「モモイロインコの繁殖について」

朝倉卓也

 1989年よりモモイロインコをキバタンと混合飼育してきた。1998年より繁殖を目指し単独種での飼育に切り替えた。しかし、年2~3回の交尾行動が観察され、巣箱への興味は示すが産卵までには至らなかった。
 2002年より巣剤となるユーカリの木を舎内に植え、繁殖性を高めるためにビタミンE(ネクトンE)、蛋白質の割合を増やすためにきな粉を振りかける等餌の改善を行った。その後、観察される交尾行動の回数も増え(前年2回だったのが11回へ)、ユーカリの枝を巣内に運ぶ行動も頻繁に見られ(枝を与えるのを中止する雛の巣立ちまでに約300本)、2002年3月9日に抱卵を開始し(産卵日不明)、抱卵24日目の4月1日3卵中1卵が孵化した。雛は孵卵後46日目に巣立ちした。
 これは日動水協加盟園館では初めての繁殖である。また、続く2003年には巣箱上部に赤外線カメラを設置し巣内観察を行った。その結果初卵を2月22日に産卵し、産卵数は3卵であった。2月25日より抱卵を開始したが、日中オスメス交替で抱卵した。抱卵の時間は午前中でオス、メスが1時02分、午後で1時03分の割合であったが、1羽目孵化の1週間前から孵化するまではオス、メス1時01分となった。夜間はメスのみが抱卵した。1羽目は抱卵22日目に、2羽目は25日目、3羽目は30日目に孵化した。3羽目は孵化後に兄弟たちの加重により圧死した。その後2羽とも孵化後48日目、46日目の5月7日に巣立ちした。巣立ち時の体重は1羽目が304g、2羽目が301gであった。


日本動物園水族館協会北海道ブロック秋季飼育技術者研究会

「フンボルトペンギンの繁殖について」

吉田淳一

 当園では昭和36年よりフンボルトペンギンの飼育展示を開始しているが、産卵はあるもののなかなか孵化には至らず、昭和55年に初めて孵化に成功した。しかし、この雛も8日目に死亡し、その後も孵化はするものの1週間前後で死亡することが続いた。
 そこで、巣台の改良や施設の改善を続けてきたが、今回巣箱の改良やストレス等の軽減を図ったところ、平成14年12月1日に孵化した個体が、孵化後10ヶ月を経過した現在でも生存しているので、その取り組みの概要について報告する。

「ニホンザルの群れ復帰について」

三浦 圭

 2002年4月27日、仮死状態で生まれたニホンザルメス1頭を保護した。蘇生治療後に体力が回復したので、母親に戻すが育児放棄をしたため、人工保育を開始した。
 子ザルを群れに復帰させるために、成長段階にあわせて復帰のための馴致を行った。馴致は主に生後1~2ヶ月には運動と採食訓練を行った。生後2ヶ月からはサル馴れ訓練を行いながら、飼育場所を徐々にサル山へ移行していく方法をとった。そのなかでは、できるだけ抱いてやり、しっかり可愛がるようにした。また、飼育係員を群れのサルの代わりとして位置づけて、家族や遊び相手などとして接するようにした。極端な人馴れをさせないため、市民へは非公開とした。
 生後2ヶ月には仮親候補の個体と試験的な同居ができるようになり、生後3ヶ月には単独で群れと同居が可能になった。生後4ヶ月には完全に仮親がついて群れに復帰した。復帰後は仮親の家族の一員として過ごすようになり、群れとも問題なく生活している。復帰後1年が経過した現在では、子ザルの子守をしたり、群れの個体へ毛づくろいをしたり、群れ同様に飼育係には一定の距離を置いて過ごすなど、社会性や群れ文化が身についている。
 今回、人口保育個体の群れ復帰の馴致方法について、留意点をまとめた。


日本動物園水族館協会北海道ブロック春季飼育技術者研究会

「フクロウとタカの森の新築について」

田岡 仁

 本園の中禽舎は昭和27年に建設された園内で最も古い動物舎であり、狭く高さも無いことから飛翔も十分にできないなど劣悪な飼育環境であった。また扉も一枚のみで脱出の危険性が考えられる、猛禽類の生態や行動が十分考慮されていないことなどから繁殖成功に至っていないなど、様々な問題点があった。
 そのため、新たな「フクロウとタカの森」を平成14年度、総工費約4千万円で建築した。新施設は従来の施設の床面積で4倍弱、高さは1.5倍弱で、繁殖行動時の別餌台の設置、繁殖を可能にする巣台や巣箱の設置、繁殖生態を研究するためのビデオカメラの設置、傷病鳥獣の保護に係るアピールの掲示などを実現した。

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