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ホーム > 動物紹介 > アジアゾーン > ユキヒョウ > ユキヒョウの「コハク」の受け入れと今後のユキヒョウ飼育についての当園の考え方について

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更新日:2019年11月12日

ユキヒョウの「コハク」の受け入れと今後のユキヒョウ飼育についての当園の考え方について

 現在、円山動物園ではアジアゾーン寒帯館において、アクバル(2005年6月7日生まれ 14歳)、シジム(2010年5月16日生  9歳)を飼育しているところですが、このたび、浜松市動物園で飼育されているユキヒョウのオス「コハク」(2008年4月9日生 11歳)を借り受け、当園で飼育するメス「シジム」との繁殖に取り組むことといたしました。

 ユキヒョウの飼育について、当園では2017年にそれまで当園で長く飼育していた「リーベ」(2003年5月12日生 16歳)を浜松市動物園に貸し出し、「コハク」との間での繁殖を目指すこととし、「リーベ」を同園に移動させました。当時14歳の「リーベ」を浜松市動物園に移動し、「コハク」との繁殖の取り組みを行うことについて、多くの方々からご意見をいただいていたところであり、今回の「コハク」の移動と「シジム」との繁殖の取り組みについても、様々なご意見があるものと考えております。

 そのため、一連のユキヒョウの個体移動や繁殖の取り組みについて、その経緯や当園の考え方をここに述べさせていただきます。

日本国内でのユキヒョウ繁殖・保全の現状

 円山動物園では1984年よりユキヒョウの飼育を開始し、多い時で10頭のユキヒョウを飼育しておりました。1987年に国内で初めてとなる繁殖に成功して以来、これまでに14頭の子が生まれ、12頭が無事生育しているなど、国内でも有数の繁殖実績を有しています。

 ユキヒョウは密猟や害獣としての駆除などにより生息状況が悪化しており、1986年以来IUCNのレッドリストで絶滅危惧種(2017年より危急種)に指定されているほか、国際的な商業取引を制限するワシントン条約においても1.類に指定されています。

 国際的な保全の取り組みも積極的に行われており、生息地での保護活動が進められているほか、飼育下の個体についても国際的な個体群保全の取り組みが行われています。

 日本においても、一部の絶滅危惧種について(公社)日本動物園水族館協会(以下、「日動水」)の生物多様性委員会のの各種別計画管理者が血統管理を行っており、国内の飼育個体の来歴及び状況を分析し、繁殖計画を策定し、各飼育園館の協力を得て、飼育下繁殖推進の取り組みを行っています。

 一般的に希少種の繁殖計画の策定においては、対象となる種について、各飼育個体の来歴を明らかにし(血統登録)、個体群動態学的な分析や集団遺伝学的な分析を行い、最終的にそれぞれの個体の状況や統計上見えてくるその種の特性などを踏まえて、個体群維持におけるリスクを最小限にするとともに、集団の遺伝的多様度を90%維持することを目標に計画を策定します。

 残念ながらこのような分析が行われるようになったのは近年になってからであり、また、かつては繁殖のために個体移動を行うなど、個体群保全という考え方に基づいた取り組みはあまり積極的には行われてきていませんでした。このような状況から現在多くの動物種で個体数の減少や、遺伝的な偏りなど、個体群の状況が悪化しています。

 このため、少しでも多くの種を後世に残し、出来るだけ多くの遺伝情報を後世に残していくためには、今からでも適切な分析・計画に基づいた取り組みを進めていく必要があります。円山動物園も国内有数の繁殖実績を有する園として、これらの取り組みに最大限協力していくことが求められていると考えています。

円山動物園におけるユキヒョウ繁殖ペア形成について

 ユキヒョウは2000年に国内で32頭が飼育されていたのをピークに、飼育頭数は減少しており、2019年9月末現在、国内10の動物園において21頭が飼育されています。そのうち繁殖経験のある個体は6頭しかおらず、高齢化も進んでいるなど、動態学的な状況としては極めて悪く、個体群の増大を最優先に考えていかなければなりません。

 また、国内のユキヒョウの多くは多摩動物公園で飼育されていたシンギズという個体の血を引いており、繁殖ペアの形成にあたっては、出来る限り組み合わせにも配慮しなければなりません。

2017年時点の状況及び判断(「リーベ」の転出)

 2017年にリーベを移動させた当時、国内のユキヒョウの繁殖可能な個体はオス7頭メス8頭で、国内4園館でペア形成が行われておりましたが、個体数の減少を踏まえると、より多くの繁殖ペアを形成し、繁殖を推進する必要がありました。

 また遺伝的には当園で飼育しているメスの「シジム」、当時東山動植物園で飼育されていたオスの「コハク」と「ユキチ」が他の個体との血縁関係などから繁殖優先度が高く、これらの繁殖ペアの形成が喫緊の課題となっていました。 

 このような状況の中、2017年に日動水ユキヒョウ種別計画管理者より、コハクとシジムの繁殖ペア形成の打診をいただきました。しかしながら、当時当園ではオスの「アクバル」、メスの「リーベ」、「シジム」の3頭を飼育しており、コハクを受け入れた場合4頭の飼育となってしまうことから、施設の運用上、メスの出産環境に配慮しなければならない繁殖の取り組みは難しいこと、さらに、当時「コハク」はメスとの同居・繁殖の経験が無く、その妊孕(ニンヨウ)能力(メスを妊娠させる能力)も含めて未知数であり、すでに繁殖実績があり、かつ当時「シジム」との交尾も確認されていた「アクバル」との繁殖を進めることが現実的であると考え、これを受け入れることはできませんでした。 

 これを受けて、次善の策として種別計画管理者から当園に提案いただいたのが、「リーベ」と「コハク」を浜松市動物園に移動し、繁殖に取り組むというものでした。

 「リーベ」は当時14歳という年齢でしたが、国際的には14歳は繁殖実績のある年齢であり、また健康状態にも問題なく、強い発情が来ていたことなどから、繁殖の期待が出来る状況でした。また、3頭の子を残しているものの、シンギズの血を引かない独自の血統であり、さらに過去にオスを受け入れ繁殖した経験があることからも、良い組み合わせであると考えられました。また、すでに交尾が確認されている「アクバル」と「シジム」のペアもそのまま残ることから、繁殖ペアの数を増やすという点でも有効であると考えられました。

 懸念は2006年にドイツの動物園から来園し、以来当園で暮らしてきた「リーベ」への移動の負担や、新たな環境、特に北海道と浜松の気候の違いへの適応でしたが、浜松市動物園は繁殖実績こそないものの、1990年よりユキヒョウを飼育しており、飼育経験が十分にあったこと、また懸念される暑さ対策についても、14歳になるリーベの受け入れにあたって、リーベが過ごす場所の工夫やエアコン・日よけの設置といった対策を講じることを確認できたことなどから、「リーベ」を移動し「コハク」との繁殖に取り組んでいただくことといたしました。

2019年時点の状況及び判断(「コハク」の転入及び「シジム」とのペアリング)

 結果として、残念ながら生育には至らなかったものの、「シジム」は出産することが出来、その妊娠能力に問題が無いことが確認され、慎重だった「コハク」もメスとの接し方に慣れ、妊娠には至らなかったものの交尾も確認されたほか、尿中精子も確認されました。

 ただ、移動から2シーズンが経過し、残念ながら「リーベ」は子を設けることが出来ず、また、16歳になり、統計的にも繁殖事例の無い年齢となりました。関係園とも協議を行った結果、これ以上のペアリングは「リーベ」の負担になることから、断念せざるを得ないものと判断いたしました。

 一方、「コハク」については、血統的に優先度が高いため、一日も早く新たなペアリングを行う必要があることから、改めてペアリングの見直しを行った結果、「コハク」を円山動物園に移動させて、同じく血統的な優先度の高い「シジム」との繁殖を目指すというご提案を受けることに至りました。

 現在の国内のペアの状況は2園で出産に至ったものの、生育は1頭のみであり、個体数の減少に歯止めがかかっていないため、「コハク」と「シジム」のペア形成は喫緊の課題となっております。特に「シジム」も9歳となり残された時間はそれほど多くはないこと、また、「コハク」は少し慎重な性格で、環境に慣れ、ペアリングが出来るようになるまでに少し時間がかかる傾向があるとの情報もあることから、早急に「コハク」と「シジム」のペアリングを行う必要があります。

 当園はこれまでに同種の繁殖について多くの実績を有しており、また、安心できる周産期環境を考えた際、「シジム」がすでに一度当園の環境下で出産経験を積んでいることを考えると、当園で「コハク」を引き受け、「シジム」とのペアリングを行うことがより成功に近いものと判断しています。

 皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。

 なお、この移動により、オスが2頭に対してメスが1頭という状況が生まれますが、これまでの国内での飼育経験上、周産期の環境づくりに支障が無ければ、オスが複数頭いることでの問題は生じないものと考えております。

「リーベ」の今後について

 現在浜松市動物園にいる「リーベ」については、お客様より、繁殖の見込みがない「リーベ」を、夏の暑さが厳しい浜松市動物園から、比較的涼しく、慣れ親しんだ円山動物園に戻し、最期まで飼育してほしいといったご意見もいただくことがありますが、浜松市の施設から当園に移動させるには麻酔をかけて捕獲する必要があり、その判断においては、そのリスクと得られる効果とを冷静に比較する必要があります。

 現在、浜松市動物園においては「リーベ」が快適に過ごすことが出来るよう、木組みの設置による高所利用範囲の拡大やイネ科牧草を含めた草木の植樹・緑化の実施、よしずの設置による日陰の創出、エアコンの効いた室内への自由な出入りなど様々な取り組みを行っており、今年の夏も特に夏バテをしたような様子は見られておりません。また、年齢を感じさせないほど元気に暮らしているとの情報もあることからも、リーベにとって現在の環境は良いものであると考えられます。

 一方で麻酔や移動のリスクをゼロにすることは不可能です。様々な事前準備を経ても麻酔に起因する事故やトラブルを100%防ぐことはできず、また、年齢や疾病など個体の状況に応じてリスクは増加します。

 以上のことから当園が冷涼であり、かつて暮らし慣れ親しんだ施設であるとはいえ、命のリスクを負ってまで移動させるべき理由とは言えないと判断したものであります。

 また併せて、「リーベ」を円山動物園に移動させた場合、「アクバル」、「コハク」、「シジム」、「リーベ」の4頭での飼育となります。その場合の飼育管理方法についても検討を行いましたが、施設規模からいって4頭のユキヒョウを飼育し、また、「コハク」と「シジム」のペアリングを安全に遂行し、かつ「シジム」に安心して過ごすことが出来る出産・育児環境を提供することは不可能であり、個体群保全という「コハク」を当園に移動させる理由すら失われるとの結論に至りました。

 お客様の中には、「リーベ」は円山動物園に所有権があるとともに、長い間円山動物園で暮らしてきたのだから、円山動物園は「リーベ」の暮らしを優先すべきといったご意見の方もいらっしゃいます。しかしながら、動物園は「保全」や「教育」を主たる目的とする施設です。これまで様々な事情から「保全」の取り組みが十分ではなく、多くの種において飼育個体群の健全性を失ったという事実は反省すべきものですが、野生動物を飼育する以上はその個体群と遺伝子を後世に繋いでいくことが極めて重要な役割であると考えています。

 もちろん「動物福祉」は動物園の取り組みの根本ともいえるものであり、「福祉」が伴わない「保全」はありません。浜松市動物園は「リーベ」の飼育管理について可能な限りの取り組みをしてくださっていると判断できます。円山動物園としては、国内の動物園全体のことを考えて、個体群の「保全」のために最善を尽くすのが責務であると考えています。

 

このページについてのお問い合わせ

札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ヶ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428