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更新日:2021年2月9日

動物園条例の必要性

現代の動物園が求められる社会的な役割

現在、開発による破壊、生物資源の搾取、気候変動、汚染、外来種等により、生物多様性の損失は深刻化し、地球規模で生物多様性保全の取組を強化することが急務とされています。

また、「生物多様性条約」には、生息域外保全の活動(生きものを自然の生息地の外において飼育し、種を守るために繁殖などを行うこと)は、主として生息域内保全の活動(科学的調査研究に基づいて、原因を除去し生態系の機能を修復し、必要に応じて再導入するなど種を回復すること)の補完のために行われるべきことが定められ、生物多様性国家保全戦略(2012-2020)には、国内希少種の保全には動物園の行う生息域外の保全活動との連携が必要とされています。

こうしたことから、動物園には、生息域外保全の活動だけでなく、生息域内保全の活動への貢献や、生物多様性保全の重要性や個々の保全活動について市民の理解を促進することがこれまで以上に求められています。

生物多様性について

生物多様性の損失は、全ての生きものの存続を脅かすことにつながりますが、国連加盟国で策定した生物多様性に関する愛知目標(2010)の進捗状況は、今年の報告でほとんど達成されていないことが示され(地球規模生物多様性概況第5版)、この10年間の取組に対する教訓として、政府省庁、経済セクター、企業がさらに相互に関わり努力する必要などが挙げられました。
こうしたことから、生物多様性の保全は、これまで以上に市、市民、事業者など社会全体で取り組むべき課題となっています。

 

生物多様性はみんなのため

生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりのことです。地球上の生きものは一つひとつに個性があり、全て直接に、間接的に支えあって生きています。私たち人間は、そこからもたらされる様々な恵みをうけているのです。
生物多様性には、生態系、種、遺伝子の3つのレベルの多様性があります。

 

動物福祉について

動物福祉はアニマルウェルフェアの訳語で、1960年代に英国において「5つの自由」という家畜への苦痛を軽減する福祉政策の提唱がなされたことに端を発し、現在では、飼育する動物の生活環境に起因する身体に現れる変化を科学的に評価し、最終的には情動部分の変化も含めた動物の全般的な状態を動物福祉と考え、動物を飼育する上では、動物福祉を把握し、より良い状態を目指すことが重要とされています。

世界動物園水族館協会では、2015年に「保全戦略」と「動物福祉戦略」を策定し、動物福祉を良好にすることは、動物園における野生動物の保全に不可欠なものと提唱しており、欧州をはじめ多くの先進的な動物園が動物福祉を向上するための取組を積極的に推進しています。

日本の動物園において、野生動物の保全活動を継続していくためには、こうした世界の動物園との連携が必要ですが、連携していくためには動物福祉に対する考えや取組を提示し信頼を得なければなりません。

国内法令の現況

現行の国内法制においては、動物園に関わる法令はたくさんあるものの、動物園の設置目的や運営方針を定めたものはありません。動物園運営に指針を与えるものとしては、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の2017年の改正によって、動物園が生物多様性の保全において重要な役割を有していることが条文に明記されました。しかしながら、具体的な保全措置は各施設の判断に任されています。

また、飼育する動物の適正な取り扱いについては、「動物の愛護及び管理に関する法律」に定められていますが、科学的根拠を基に動物の全般的な状態を判断するという視点は十分に明記されていません。

こうしたことから、日本の法令においては、世界動物園水族館協会や諸外国の法令に見られる“保全と動物福祉を両立させる”という基本理念を読み取ることは困難です。


関係法令図

市の政策目標の達成手段として条例化が必要な理由

札幌市では、第2次札幌市環境基本計画や生物多様性さっぽろビジョンで示されるように“自然共生社会の実現に寄与すべきこと”を政策目標としています。

動物園は生物多様性の保全に寄与すべき施設であることから、この政策目標を達成するための手段として円山動物園の取組を推進するだけでなく、それぞれの動物園等の野生動物の保全活動を市が支援することで、札幌市域の動物園の生物多様性の保全活動を強化し、将来にわたって取組を継続することが必要です。

また、市内外に動物園のあるべき姿を示すことで、市民一人ひとりの意識の醸成を図り、社会全体の生物多様性の保全活動の実践につなげていくことが重要と考えます。

こうした仕組みを構築するためのルールは、市民の意思を決定する議会によって定める必要があります。

円山動物園の運営の根拠条例として

円山動物園の将来にわたる取組の安定性及び実効性を確保するためにも札幌市円山動物園基本方針ビジョン2050で示した運営の普遍的な基本的事項を条例化する必要があります。

ビジョン2050表紙

 

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札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ケ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428