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更新日:2013年3月1日

8.手稲の冬

 建物がまばらにしかない時代、手稲の冬は辺り一面銀世界となりました。ひとたび雪が降り始めると、どこに道路があるのか分からなくなることもしばしばでした。
 北国の厳しい冬。自然の中で人々は暮らしていました。ときには人々の命を危険に陥れ、またあるときには人々に楽しみをもたらしてくれました。

■玄関より高い道

 「昭和20年代、30年代のころは、11月3日でもう20から30cmくらいの雪があったよね」と手稲で生まれ、富丘で長年農業をしていた末田和夫(すえだかずお)さんは振り返ります。当時は今より雪の降り始めも早く、雪の量も多かったようです。
 履物は長靴やげたで、げたの歯の間には雪が詰まって、ぽっくりのように高くなりました。道路は馬車のわだちで道の中程が高くなり、両側が低くなります。道路際の家では玄関口が道より下になってしまうので、雪を削って3段くらいの階段を作り、家の出入りをしていたということです。
 末田さんは農作業のない一月、そんな雪道を一列になって男友達女友達と一緒に札幌まで映画を見に行くのが冬の楽しみの一つだったと話します。
 「歩いて2時間くらいかかったが、おしゃべりしながらの道中は、青春時代の楽しい思い出だよ」

■雪囲い

厳しい冬。家々は雪の中に埋もれていました(音喜多 一二さん所蔵) 今では「雪囲い」といえば庭木を囲うことを指しますが、家がまばらにしかなかった当時は家全体を囲うことを指しました。
 家の外の四方に柱を立て横木を渡し、そこに5cmくらいに束ねたわらを掛けていきます。それを両側から竹でしっかりと挟み込み、家全体を四角に囲ったのだそうです。高さは軒下に届くほどあったということです。
 手稲に今のような除雪車が登場するのは三菱鉱山ができてからで、鉱山から掘り出した鉱石の運搬のために会社が導入したものです。年1回、春先になると鉱山の除雪車が富丘辺りまで道路を除雪してくれたということで、まちの人たちも、その恩恵に浴していました。

■雪の壁で線路を守る

 そのころ、今の星置駅、稲穂駅付近には小さな山があり、また片側には海が控えていたため、この辺りは強い西風と雪の通り抜ける道となっていました。その雪を雪で防ぐという、昔ならではの工夫がありました。それは「雪堤」と呼ばれる雪の壁で鉄路を守るというものです。
 これは30×90cmの大きさに雪を切り出し、このブロックを5段ほど重ねて1m50cmくらいの高さにしたもので、これを作る作業には、沿線に住む人々にも声が掛けられました。日銭を稼ぐため、人々はこの作業へと出掛けて行ったといいます。
 こんな雪堤が星置から今の札幌運転所付近までの2kmくらいにわたって何列も立ち並んで、強い風と雪から線路を守っていた時代があったのです。

手稲の雪

 降り積もった雪が沸き上がってくるように見えた。わらぶきの馬小屋の軒先が壊されると心配した。エンジン音がずっしり腹に響いた。車体が見えないほどの雪を難無く押し広げた。
 鉱山の強力除雪車だ。鉱石を軽川駅に搬出するため、どうしても道路を確保する必要があった。大きくなったら、この除雪車の運転手になりたいと思った。
 流線形の排雪板がみごとに左右に広がっていた。そして、補助板がもう一度、雪を押し広げた。その力強さを確かめようと、沿線の子供たちは後部に付いてどこまでも歩いた。排気のガソリン臭が心地良かった。
 多量の雪を押し切れず、しばしば停車した。子供たちは懸命に走って逃げた。後退するからだ。全身が黄色だった。両手を広げたような補助板が、静かに閉じた。どこをどう操作しているのか不思議だった。
 除雪車は鉱山の閉鎖と共にどこかに行った。稲穂は降り積もる雪の下に埋まった。吹雪の大きな雪山がいくつもできた。ストックを伸ばせば、電線に届く高さになった。馬そりの幅だけの道になった。
 丸太を組んだ雪囲いをはるかに越し、母屋の屋根とつながる雪の量だった。格好のスキー場と思った。が、親は色をなして目をとがらせた。ストックでマサ屋根を突き破るからだ。
 「絶対、線路に近づくな」とも言った。SLの通過を黒煙で識別した。見事な雪の回廊になっていた。 いったん落ちたら、這い上がることは不可能だった。
 ある年、下り線で貨物列車が立ち往生した。たくさんの除雪作業員が動員された。作業中、上りの急行が通過した。向かいの牧夫が一命を落とした。遺体は張碓まで引きずられた。
 つらく、切ない雪が手稲にいっぱいあるが、同時にまた、楽しく、愉快な雪も手稲にいっぱいあったことを付け加えておこう。

一ノ宮 博昭(いちのみやひろあき)(稲穂在住、昭和12年生まれ)

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