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更新日:2016年2月25日

第一回フォーラム開催記録 - 詳細記録

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市電フォーラム 「みんなで考えよう路面電車のこれから」
 第1回「市電の現状と路面電車の将来」


《1.開催概要》
■ 日時:平成16年8月31日(火曜日)18時30分~21:10
■ 場所:札幌すみれホテル 3階ヴィオレ(中央区北1条西2丁目)
■ 来場人数:一般参加者177名、説明・講演者等7名、事務局14名 その他20名 合計218名

《2.プログラム》
 1.開会挨拶
  札幌市企画調整局長 下平尾 文子
 2.市電の過去といま
  市電の歴史    市電の会 山本 晃靖 氏
  市電の現状と課題 札幌市企画調整局総合交通計画部交通企画課長 二木 一重 
 3.基調講演
  演 題 路面電車再生物語:広電の取り組み
  広島電鉄株式会社 常務取締役 (電車カンパニーフレジデント) 中尾 正俊 氏
 4.休憩(質問票回収)
 5.ディスカッション
  存廃問題の克服に向けて -路面電車再生戦略の視点- 

北海学園大学法学部助教授

樽見 弘紀 氏

広島電鉄株式会社常務取締役(電車カンパニープレジデント)

中尾 正俊 氏

札幌市企画調整局総合交通計画部長

高宮 則夫

コーディネーター

石塚 雅明 氏

 6.閉会挨拶 総合交通計画部長  高宮則夫

《3.プロフィール》
 中尾 正俊 氏
  広島電鉄株式会社 常務取締役(広島電鉄電車カンパニープレジデント)
  全国路面軌道連絡協議会 専務理事
  (社)日本民営鉄道協会 技術委員会副委員長
   1944年 広島市生まれ
   1967年 近畿大学理工学部土木工学科卒業
   1967年 広島電鉄株式会社入社
   1995年 取締役電車部長
   1998年 機構改正により電車部より電車カンパニーとなる
 樽見 弘紀 氏
  北海学園大学法学部 助教授
  北海道NPOバンク 理事
   1959年 福岡県生まれ
   1991年 ニューヨーク大学(NYU)公共行政大学院修了
   1999年 現職 専門は行政学、公共政策論、非営利組織論
 コーディネーター
  石塚 雅明 氏
  (株)石塚計画デザイン事務所 代表取締役
  1952年 札幌市生まれ
  1981年 北海道大学工学部大学院修士課程修了
  1983年 柳田石塚建築計画事務所 設立

《4.フォーラムの概要》
【1.開会あいさつ】 札幌市企画調整局長 下平尾文子
 札幌市では、1972年、昭和47年の冬季オリンピックを契機に、路面電車に代わり、地下鉄を公共交通の軸と位置づけました。8.5キロの路線が残りましたが、大きな岐路に立っています。一方で路面電車には、環境負荷の低減、人を重視する、都市の装置といった可能性があります。税金の使い方、受益者負担等の行政運営にも論議が必要です。まちづくりの新しい基軸として、路面電車の方向性を考えたいと思っています。
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石塚:市電の存廃をめぐる重要な市民議論の場として、全3回を予定しています。今日は、存廃に向けての課題認識と、課題克服の可能性について芽出しの議論をします。第2回目は、その論点を掘り下げ、3回目は最終的な市の方針と今後の取り組み方を確認したいと思います。
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【2.市電の過去といま】
『市電の歴史』  市電の会  山本晃靖 氏
 「札幌市電の会」では、地域の方々との会合や、日本やヨーロッパの都市の視察等を行っています。180万市民が知恵を出し、市電をもっと使いやすい、心にふれあえる乗り物にしたい。
 市電の最初は、馬車鉄道で、札幌の建物や工事に使う石を石切山から運びました。市電となる契機は北海道開道50年大博覧会。当時の高岡市長が、電気軌道株式会社に持ちかけ、市に譲渡されました。しかし第一次大戦が勃発し、レールも車両もヨーロッパからの輸入はできず、アメリカの農村からレールを取り寄せ、名古屋から電車を借りて大博覧会に間に合わせました。
 昭和10年には、第二次大戦が勃発しました。一般家庭から鉄の鍋、釜まで供出する時代、電車は不用と軍部通達もありましたが、かろうじて終戦まで生きながらえました。その間、女性が補修、車掌等を担い苦難の時代を乗り越えました。
 終戦後、札幌市は昭和30年代から人口増加し100万都市に。電車は最盛期を迎えました。交通機関は市電が第一で1分何秒かの間に1台が発車しました。架線を引く暇がなくディーゼルエンジンを付けた連結電車も走り、様々な線路がありました。
 しかし昭和40年代のモータリゼーション、オリンピック時の地下鉄開業により、利用減少し、次第に邪魔者扱いになりました。
最近また電車が見直されているという話をうれしく感じています。
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石塚:今は山鼻の一路線を残すのみになり、その路線も存廃の危機にあります。なぜ危機なのかを札幌市の総合交通計画部交通企画課の二木課長から説明していただきます。
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『市電の現状と課題』
  札幌市企画調整局総合交通計画部交通企画課長  二木 一重
 存廃議論の最大要因は、経営の問題です。乗車人員の減少傾向、経費の増加、老朽化した車両更新の問題があります。
 乗車人員は、昭和49年に5万人でしたが平成14年では約2万1千まで落ち込みました。
 平成14年には、収支が急に赤字に転落しており、経常収入と支出の差で赤字となりました。収入は乗車料が、約79%、市からの補助金が約2億、その他、若干広告電車での収入があります。支出は、人件費が約6割、その他は電力費や車両修繕費経費、減価償却費などです。
 存続するために解決すべきこととして、乗車人員増を図る需要の確保、経営形態の効率化検討、施設更新の問題、料金の見直し、財政支援などが挙げられます。
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【二木課長とコーディネーターによる質疑応答】
●今年度中に結論を出すとのことですが、なぜ今存廃問題なのですか?
  ○現有の車両の大半が老朽化し、対応が急がれます。更新のために新たな投資が必要となり、その投資をすべきかを今年度中にはっきりしたいと考えています。
●車両は今すぐ更新しなければならない状態なのですか?
  ○かつて、地場産業育成のため地元で作製した車両の傷みがひどく対処が必要です。
●経営赤字の状況について、民営化の話もありますが?
  ○赤字解消には収入を上げるか、経費を圧縮する必要があります。6割を占める人件費圧縮は検討材料です。民間と協力し、施設所有は行政、運営は民間というPPPの運営手法も検討しています。
●車両などの更新の投資について必要な費用は?
  ○一旦の試算として90億円を算出しています。この内訳はバリアフリー化に対応した23両の新型車両導入等で約50億円、その他整備工場の改築等で40億円です。
●90億円は一度にかかるものですか?
  ○一度に90億円かけるのではなく、更新計画を持ち、年次ごとに整備します。16年間のスパンで想定しています。
●市民の皆さんはどんな意見を持っているのですか?
  ○平成15年1月の1万人アンケートでは、約54%が存続を希望しています。存続意見としてシンボル的が24%、環境や高齢社会への対応が14%、将来環状化や延伸での活用が15%となっています。一方、不採算ならバス転換もやむを得ないが約35%あります。また、車両や施設更新費の税金投入には、約29%が賛成とするほか、低床車両など改良はせず最低限維持管理をするべきが約30%、料金値上げによる対応が約10%です。
    7月号の広報誌に対し166名の意見があり、114名、69%が存続を希望し、廃止は19%、不明が12%。存続理由にはシンボル性が30件、環境面が29件、観光面が15件、人に優しいが7件です。廃止理由は、赤字が続くなら、地域限定の交通である、という意見です。
● 平成15年のアンケートでは90億円の設備投資が必要になるということも含めて聞いたのですか?
○そうです。設問では、100億円という数字を一旦提示しています。
● アンケートの結果は行政が判断するには微妙な数字ですね。廃止意見は採算が取れれば存続も可と読め、赤字だから廃止という意見にどのように答えていくかが存廃のカギですね。90億円の新たな投資についても山鼻地区の足にすぎないという疑問の声もあるでしょう。都心まちづくりの中で本当に「投資効果がある投資」としていくための政策的検討が必要かもしれませんね。
○ そうですね。
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石塚:中尾さんには、全国的に厳しい風が吹く中電車の再生に取り組み、市民の足として経営も安定し前向きな戦略をとられている広島電鉄の経験をお聞きします。
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【3.基調講演】
『路面電車再生物語・広島電鉄の取り組み』
広島電鉄株式会社 常務取締役(広島電鉄電車カンパニープレジデント)中尾正俊 氏
 私は広島電鉄に昭和42年に入り、電車一本でやってきております。全国19事業者が集う「全国路面軌道連絡協議会」の専務理事もしているため、他社の情報も提供したいと思います。
 広島電鉄は明治43年に設立し途中広島瓦斯と合併しましたが、昭和17年広島電鉄になりました。現在の鉄道線は宮島線16.1キロ、軌道は市内線19キロ、合わせて35.1キロです。車両は57編成あり、ドイツのシーメンス製超低床5連接車両12編成、日本のアルナ車両製3連接車両41編成、2連接車両4編成、市内線の単車が83両。バス路線は2200キロで563便です。
 軌道線は市内線で、JRの広島駅、横川駅、西広島駅が市内に入る主要駅を交通結節しています。鉄道線は西広島から世界遺産の宮島への16.1キロを時速60キロで山陽本線と並走しています。途中、西広島、新井口、五日市の並行駅は自由に乗り換え可能です。当初乗客を取られると心配しましたが、乗り換えの利便性が受け、乗客は戻りました。広島市は政令市で113万人の人口ですが、市内線のネットワーク区間である旧市内の人口は約50~60万人で、20年程変化はありません。
 旅客輸送人員は、昭和42年に年間650万人減少しましたが昭和46年に持ち直しました。きっかけは広島県警公安委員会が英断をくだした軌道地域内諸車乗り入れ禁止です。再び昭和48、52年のオイルショックで不景気になり利用者が減少しました。通勤通学は変化しませんが、昼間の買い物や食事に出る奥様方の減少が増減を左右します。宮島線はずっと増加でしたが、平成10年度から減少傾向で、しかし道路渋滞により定時性を求める利用者が鉄道に移ってきています。これらの減少傾向は長い不景気の影響です。市内バスは、昭和43年をピークに減少し、最近底を打ちだしたところです。郊外バスは、不採算路線を切ったほか、平成6年に広島市が第三セクターで作ったアストラムラインの影響で減少しました。
 軌道内乗り入れ禁止は、朝のラッシュ時にバスは渋滞しますが、軌道は定時性をもって走り、これが、起死回生策となりました。また、広島県警の協力で交差点内における右折待機が禁止され、さらに、電車の優先信号の設置、電車が走るペースに合わせた信号の半優先などにより、電車の通過が円滑になりました。
それから電車の運行状況が一目でわかる運行管理システムを取り入れ、乗客にも、次に来る電車が分かる表示を行いました。電停は幅員2メートルにし、車椅子も楽に通れます。バリアフリー法に対応した5%のスロープを設置、椅子も取り付け、立派な上屋も設置しました。昨年の道路構造令改正で停留施設も道路構造物と認知され、設置補助が出るようになりました。
 利便性ではプリペイドカードシステムを導入しました。ICカードも検討中でJRを含め広範囲で使えるものにしたいと考えています。ヨーロッパやアメリカは自己責任で切符を買い好きな時に降りるチケットキャンセラー方式ですが、不正も多い。運賃収入を50%、不足は運輸連合で補助するという経営だから可能なんです。
 当社では市内と郊外で乗り換えをしないシームレスネットワークとして、昭和38年から路面電車タイプの車両を鉄道線に乗り入れました。市内との相乗効果で利用者を確保しています。
 バリアフリー化は車いすや、身体障害者の方の社会参加が多くなり、要望も強くなってきました。自分で乗り込める超低床電車が必要です。5000型というシーメンスから入れたものが現在12編成あります。
 TDM施策では並行区間のバスと電車が利用できる「どっちもパス」、市内のバスと電車全線が乗れる「エリアフリーパス」、65才以上対象の「シルバーパス」を発行しています。
 経営改善策では各種手当のカット、給料や退職金の見直し、外注化、直営食堂など施設の廃止、雇用形態の工夫、カンパニー制導入等を行いました。社員は平成10年度の1821人から現在1473名に。ボーナスも減らし、運転手平均年収を下げ、34才で539万から現在は483万2千円です。人件費率は電車が54.8から53.7%、バスは76%から58.2%になりました。この結果平成15年に、21年ぶりに自動車バス部門は黒字転換しました。
 全国には19の路面軌道事業者があり、公営交通は札幌・函館・東京・鹿児島・熊本、他は私鉄です。比べると札幌がいかにいい給料かわかります。他の公営事業者は673万2千円、大手民鉄は660万、中小は463万2千円くらい。全事業者平均で550万ということで、札幌の場合、人件費の問題というところがあるように思います。
 日本でも新しい超低床車両(LRV)の導入は増えてきた。長崎、岡山、万葉線、熊本、函館、東急、名古屋、土佐、鹿児島などが取り組み、ユニークで見栄えのする電車が多いです。
 国産超低床電車開発として、狭軌用LRT台車開発にメーカー8社が取り組んでいます。当社の国産超低床車両第一号は製作中で12月に完成します。ヨーロッパには負けたくないと、デザインに力を入れました。長さ30メートル定員150名、幅2.45メートル、最高設計速度80キロです。宮島線は60キロ、市内は40~50キロで走ります。性能が良ければ量産車は平成17年から10年間で20~30両揃えたいと計画しています。
 世界では現在LRT(高性能な路面電車)を新設したり復活した都市が69、路面電車があるのは279、全部で348都市あります。LRTはヨーロッパ、アメリカを中心に盛んに展開中です。
 フランスのストラスブールでは主要幹線道路に電車専用のトランジットモールを入れて大成功しました。自動車迂回道路を整備し、都心部に人を回遊させ、中心市街地が活性化しました。
 フライブルクの交通結節点は、上を路面電車・LRTが走り、下が国鉄の駅になっておりバスターミナルも連携しています。乗り換えが便利でユニバーサルデザインになっています。
 フランスのグルノーブルでは、当初大反対がありましたが、付近の商店街を説得しトランジットモール化したところ、今では2倍3倍の人がまちの中心部に集まり商店街も売り上げが増えました。
 フランスのモンペリエルのトランジットモールでは近辺でカフェを楽しむ風景が見られます。
ドイツのカールスルーエではトランジットモールと郊外のドイツ国鉄が連結しています。自宅から車で来てパークアンドライドでLRTに乗り換え市内に入り、買い物や食事を楽しむ。中心部の自動車総量抑制、渋滞解消、排気ガス低減の効果があります。
 環境に配慮した例として、芝生軌道があり、ヨーロッパでは例が多くあります。日本では土佐電鉄と広島電鉄が一部取り入れて、評判がいいです。
 TDM施策では、電停をバスと電車が兼用するバスアンドライド、マイカー使用のパークアンドライドがあります。
 最近フランスで架線レス車両が導入され、日本でもリチウム電池使用架線レス電車が開発され、実用化の一歩手前です。
 国の施設整備や車両購入などへの支援制度は非常に充実してきています。国土交通省の目玉としてLRT整備総合補助制度があります。日本では約30都市がLRTの導入を検討しており、総務省は導入新設する自治体への財政支援制度準備中です。LRT導入補助制度が整えば公設民営という上下分離方式が非常にやりやすくなる。
 広島電鉄では現在の路線を見直し新規路線を計画中です。広島市交通ビジョンや中国運輸局の中国地方交通審議会にもこのビジョンが反映されています。市街地から郊外への乗り入れなど、鉄軌道のシームレスネットワークの将来を見据えながら車両更新をし、快適な移動を提供できるよう、路線見直しによる速達性、定時性を向上させ、LRT新交通システムを目指しています。
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石塚:広島の場合も乗降客数減少という逆風を受けながら、きめ細かなサービス向上、徹底したコスト意識、コスト管理で乗降客数規模に見合う経営体質を作るということを徹底された。さらにまちづくりの視点から攻めに転じようというお話が感動をもって伝わりました。時代は逆風ばかりでなく、国の施策には環境にやさしく都市再生の切り札としての路面電車の再評価という追い風もある中、札幌市にエールを送っていただいたと思います。
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【4.休憩】
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【5.ディスカッション】
『存廃問題の克服に向けて ~路面電車再生戦略の視点~』
石塚:中尾さん、北海学園の樽見先生、札幌市総合交通計画部の高宮部長に参加いただきます。会場から質問や意見票が膨大にあり、関心の高さがうかがわれます。最初に、高宮さんに自己紹介を兼ね、フォーラムに向けてのお気持ちをお願いします。
高宮:市電存続のために、もっと使われる、乗りやすい電車になるようにし、需要を確保していく必要があると考えています。また、経営改善には、民間活力導入も視野に入れた経営形態見直しを行っていかなければなりません。このほかの大きな問題として車両の老朽化が進行しています。車両や施設の更新のために約90億円が必要と試算しています。車両・施設の更新という新たな投資には、行政側からの財政支援が必要となりますが、札幌市の財政状況は厳しく、投資判断には市民合意を得るべきと考えています。これらの課題や問題を今年度中に整理し、何とか存廃の結論を出したいと思っています。
石塚:続きまして樽見先生に、会場からの質問票のあった、単なるノスタルジーで残すのでなく前向きな位置づけが必要との指摘に対し、市民にとって市電の価値をどう考えればよいかということについて、自己紹介を兼ねてお願いします。
樽見:電車の存廃議論は、あの4プラ前とロビンソン前を行ったり来たりしている電車のように、解決されないまま行ったり来たりしています。ノスタルジーで電車を残したいという議論が一方にあり、もう一方にLRTやトランジットモール等の新しい都市交通のビジョンの中で路面電車を再定義すべきという議論があります。しかし、これらの一部の人たちの議論が先鋭化すればするほど、一般庶民から議論が遠ざかっているように思います。
    時間や歴史のフィルターで濾されて残ったものには一定の価値があります。ひとまず残した上で、市民がさんざんに議論することが必要で、その議論の過程のなかで路面電車に新たな市民価値が増してくるのでは。例えば旧小熊邸を残した運動は我々札幌市民の誇りだと思います。
石塚:質問票には市電を廃止してバスへの転換をしたほうがいいという意見や、他の交通手段と市電をコスト、利便性、環境面等で比較し、優位性を明確にすべきとの指摘もあります。中尾さんにお伺いしますが、公共交通手段として市電の優れた点はどういうところにありますか。
中尾:私も路面電車がオンリーとは思っておらず、利用者の身近に目的に合う交通機関があればいいと考えています。札幌のような大都市では地下鉄は必要であり、路面電車、バスもそれぞれ見合うところにあればいいと思います。
    市電の存廃を今年度中に結論を出そうというのはなぜかな?というのがあります。札幌の電車路線は、かつての25キロ中の8.5キロが残り、ネットワークでなくなっていて、その範囲内だけではどうしても消極的議論になります。残すなら残すような方法論をすべきです。8.5キロという大事な社会資本をもっと発展的に、現在残っている路線を存続させる前向きな議論が必要です。例えば、すすきのと西4丁目を結んでその通りを真っ直ぐ行きJR札幌駅に入れるような。今日、降りてみて、LRTが似合う、ちょうどいいトランジットモールになると思いました。
石塚:現在路線に限った話でなく、都心のまちづくりをどうしていくのかという観点から市電の問題を扱うべきというご意見は会場からもたくさんいただいています。札幌市民の足になる路線を前向きに考えるべきで、今の路線をちゃんと都心部にもってくればもっと魅力的になるというご指摘も多くあります。樽見先生はどうお考えでしょうか。
樽見:延長はあったらいいと思います。しかし赤字理由をもっと掘り下げないと、そこまで議論が及ばないのでは。市電の赤字問題には、ビジネスマインドの欠如、電車も都市景観の一部という考えの欠如、存廃に対する市民議論の広がりの欠如があります。
    東京では、都営バスが長く赤字でしたが、石原現都知事が2000年に、バス全体にフィルムを貼るラッピング広告を解禁するため条例を変え、今では10億円の広告収入があります。都バスが都市景観を崩しているという議論もありますが、良くなったという議論もあります。面白いのは、広告許可のデザイン審査委員会に市民が参加し、広告の良し悪しをジャッジしていることです。それにより、景観に対して市民が意識をもつことになります。
石塚:延伸などの戦略の必要性には共感するけれども、赤字問題のツケをそのまま放置してはいけないと。改善のために市民議論を背景に、広告も検討すべきという意見でした。
    経営問題に入ってきましたが、中尾さんの徹底したコスト削減策にはかなり抵抗があったのではと思いますが、どううまく軟着陸できたのかをご紹介ください。
中尾:経営合理化は会社の一方的な権限でできるものではありません。労働組合と協調し、双方が将来ある企業にしていくための理念を持つ必要があります。大手私鉄のバス部門が大赤字で分社化を進める際、一旦全員解雇し、再雇用時に賃金が6~7割にされました。当社も、21年間バスは赤字で、分社化を前提にカンパニー制を導入しましたが、組合は合理的運営に力を合わせてくれました。
    民間では赤字が致命傷であり3年続くと経営責任者はクビです。そうならないよう、思い切った合理化、経営改善をします。家計のやりくりと同じです。札幌も赤字が大きいけれど、生活の知恵を企業の知恵に振り替え、経費を詰め、少しずつでも改善すれば、大きな効果が出てきます。「もう他にはもらうところはない、赤字は出せない」という、背水の陣、家計論を訴えたかなと思います。
石塚:札幌の人件費は6割ぐらいで、広電さんは、53.7%。さっき計算してみましたが、その差を札幌にあてはめると約1億の差が出ます。約1億1千万の赤字の1億分の削減可能性があると。広電さんのシェイプアップは民間ならではの、危機感を共有した企業家と労働者の共同作業でできたということがあるかと思います。
中尾:補足として。経営方法には、札幌の様な公営交通、第三セクター、我々のような株式会社があります。札幌は公営交通といういい機構になってますから、いきなり民営化してもなかなかうまくいきません。民間は補助をもらうために苦労しながら国や県や市にお願いしますが、市と交通局の間ではやりやすく、施設改善や電停整備も同じ道路管理者から理解が得やすいという、公営交通のメリットがあります。この関係をうまく持続発展させながら中身を改善していければ存続できるというふうに思います。
樽見:ご指摘のように札幌の路面電車運行者の年収を下げれば現行の赤字を補填することも可能だとは思いますしかしただ年収を下げるだけでは運行者の士気の低下が心配です。マンハッタンではバスの運転手が笑顔で高齢者や障がい者を手伝いバスに乗せる風景を、東京や札幌以上に目にします。90億円の試算は低床車両切り替えが前提ですが、運行者に対する徹底した顧客教育など、ハード面だけではない、ソフトの部分の改善にも意識が向けられるべきではないのでしょうか。
石塚:都市の魅力でいうと、土佐電はいろいろな電車を集めたレトロ運行をまちづくりの目玉にしている面もあります。中尾さんからは先程LRT、新型車両への切替のお話をうかがいましたが、新型車両への更新は必須と考えられますか。
中尾:お客様が快適に移動したいという要求が多いのであれば、近代化し新しく快適でゆっくり乗れる大きい電車を大量輸送として導入してあげたいと思います。8:2くらいで新型に移行したいですが、歴史ある車両も運行しており、今後も残して楽しんでいただきたいと思います。
石塚:会場からは民営企業の近代化投資のリスクについての質問もあります。
中尾:潤沢な資金があって自前でとはなかなかいきません。グリーンムーバーというドイツ車両を12編成買う時は、ドイツ外債を35億円用立てました。日本の銀行より安いレートで借りられ利子も少ない。やりくりをしながら必要な時に必要な資金を集め、ある時に買うという、柔軟な資本の使い方をしています。
石塚:バクチを打つような投資ではなく、マネジメントをきめ細かく考えリスク回避している。民営企業の重要ポイントかなと思います。
中尾:札幌で今ネックになっている車両問題についても、熊本市交通局では、リース方式で外国から車両を導入するなどの工夫をしています。熊本市が購入資金を立て替え、リース代を市から交通局に補助し、交通局が利子を払うという、交通局の一時のリスクを少なくして導入しやすくしています。いろんな方法論があると思いますので、その都市その都市で工夫をされたらと思います。
石塚:延伸など将来ビジョンを持ちその中で存廃を考えるべきとか、経営赤字の問題、特に他の路面電車事業者と比べ人件費が高率であることなど工夫することは山積だという提言がありましたが、高宮部長に感想をいただければと思います。
高宮:中尾さんの先進的な事例を聞いて、やはり収入に見合った経営体質にしていくことが経営の原点になると思います。このことが現在の公営交通の抱えている大きな問題と思っています。それから、ループ化延伸化を一緒にやるべきというご意見には私も同じです。検討には非常に多くの問題を抱えており、調整に相当時間がかかるだろうと思いますがやはり積極的に取り組んでいかなければならないと思っております。
    また施設更新の90億円についてもハード・ソフトの戦略を持ちながら、できるだけ投資を減らすように勉強していきたいと思っています。
石塚:会場からの質問票には、札幌市は廃止を決めてしまったのかというのがありますが、そんなことはないですね。
高宮:存続するための課題がたくさんあります。何とか打開策を見つけ、存続させたいと考えています。
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石塚:最後に、樽見先生には、市民として何ができるか、中尾さんには、再生を目指すならこれだけはやらなければならないという提言をいただければと思います。
樽見:議論をするに尽きると思います。市電が身近にある人たちの議論から市民の全体議論として広めていく努力が必要です。フランスのグルノーブルは一度市電を廃止したが70年代 にLRTで再度路面電車を導入する議論の際に住民投票により約70%が賛成ということになって決断されました。この市民議論があって様々な施策が行われたわけです。
    札幌市全体として都市のインフラの方向性、全体ビジョンが示される中での90億円であれば意味をもって市民に伝わるのではないでしょうか。そのためにはぜひ、市民議論が必要だと思います。
中尾:3つ申し上げたいことがあります。一つは、経営体質の改善。少なくとも他の公営交通並の人件費の削減が必要です。二つ目は、快適性の改善として車両の近代化と電停施設の改善。三つ目は、交通結節のアクセス改善を。住宅地だけの行き来では利用は増えません。JR駅や地下鉄駅という交通拠点と住宅地を結ぶ路線の見直しが必要です。
    利用増については、電車を利用しない人を電車へ転換させることが必要です。そのためには「早くて便利で安い」、交通結節点で「歩かせない、ぬらさない、待たさない」施設づくり、アクセス改善を総合的に進めるべきだと考えます。
    また、札幌市は将来はこうするんだというグランドデザインを市民に示してもらいたいと思います。
石塚:最後は高宮部長に、お二方の提言を受けて感想をお願いします。
高宮:やるべきことはまだまだあると実感しました。皆さんとともに路面電車を守っていきたいと思います。
石塚:現状赤字経営、それから設備投資を新たにしなければならないというハードルがある中で、市電をどう考えていくかということでスタートしたわけですが、現在の山鼻地区をサービスする地域の足ということから、札幌市民全体にとっての足というグランドデザインがあるべきだと、それを描かなければならない時期にきているのではないかということが基本にあったかと思います。
 ただそうは言いながらも、経営赤字の問題については、広電さんの取り組みを見ますと、まだまだやることがたくさんある。それも単純に民間の力を借りるということで民営化という一本のシナリオだけでなく、公営企業としてのメリットも随分あるということを中尾さんからご指摘いただきました。現在の公営企業の中で本当に市民の足として存続するために、市側も、それからそこで働く方々も、もっと知恵を出して、存続できる道を探す努力というのを徹底的にやってみる必要も片方ではあるのではないかという話が出ていたかと思います。
 いずれにしろ、設備投資に今後90億円かかるということが最終的にはネックになってくる部分もあるかと思いますが、それは将来に向けての投資としてどこまで考えられるか、先ほどのグランドデザインとの関連というものが大きくあると思います。ただ、それも一挙に90億円を投資しなければいけないという状況ではなく、樽見先生の方からは、もう少し知恵を出せば90億円というものの減額ということもいろいろ考えていけるのではないかというご指摘もあったかと思います。
 そういうことを踏まえながら札幌市の皆さんには、前向きに今後の市電のあり方を考えていただきたいというエールを送ることができた第1回目ではなかったかと思います。
 樽見先生のまとめに、今後市民議論の大切さということがありました。第2回目は札幌市の方に、聞き役だけではなく、今日のいろいろなご提言を受けた中で、こういう方法を模索してみたい、こういう考え方はどうだろうという投げかけをしていただきながら、ご参加の市民の皆さんと論点を深めていきたいと思っています。
---終わりのあいさつ---
高宮:皆様方の熱意を感じました。本日の議論は、私ばかりではなく、副市長、交通局の事業管理者、企画調整局長も聞いております。熱意を十分受け止め、なんとかしなければならないと思っています。また次回のフォーラムで意見交換をさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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