障害者差別解消法を踏まえた札幌市の対応方針〜共生社会の実現に向けて〜(案) 札幌市 はじめに                                障がい福祉を取り巻く環境につきましては、平成18年に国連において「障害者の権利に関する条約(以下、「障害者権利条約」という。)」が採択されるなど、権利擁護に向けた取組が進展しております。 我が国では障害者権利条約の批准に向けて国内法の整備を行い、平成23年の障害者基本法の改正により、基本原則として「障がいを理由とする差別の禁止」が規定されました。この規定をより具体化し、遵守するための措置を定める法律である「障害を理由とする差別の解消に関する法律(以下、「障害者差別解消法」という。)」が平成25年6月に公布され、平成28年4月1日から施行されます(我が国は、平成26年1月に障害者権利条約を批准しました)。 障害者差別解消法では「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」を差別と規定しており、障害者差別解消法に基づき国から示された基本方針では、障がいのある方への差別については、障がいに関する知識・理解の不足、意識の偏りを起因とした面が大きいとの考えが示されています。障害者差別解消法は、地方公共団体に対し、差別の解消に向けた具体的な取組を求めるとともに、普及啓発活動等を通じて地域住民や事業者の障がいに関する理解を促すことを求めています。  札幌市では、市民誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現を基本理念に平成24年3月に「さっぽろ障がい者プラン」を策定し、障がいのある方が地域で安心して生活していくことができるよう、障がい者施策の充実に向け、取組を進めております。 本対応方針は、これまでの取組に加えて、障害者差別解消法により求められていることに、札幌市が率先して取り組んでいく姿勢を示し、札幌市民全体で障がいを理由とする差別の解消を推進するためのものです。 1 対応方針の位置づけ                         札幌市は、さっぽろ障がい者プラン(※)において、既に障がいを理由とする差別の解消(分野10)と、行政サービスにおける配慮(分野11)の取組を示しているところですが、障害者差別解消法及び「北海道障がい者及び障がい児の権利擁護並びに障がい者及び障がい児が暮らしやすい地域づくりの推進に関する条例(以下、「北海道障がい者条例」という。)」の考え方を踏まえ、改めて障がいを理由とする差別の解消に向けて、札幌市が率先して取り組む姿勢を示し、札幌市民全体で障がいを理由とする差別の解消を推進するため、本対応方針を定めます。 ※ さっぽろ障がい者プラン(平成24年3月策定、平成27年3月改定)   障害者基本法を根拠法とする「障がい者保健福祉計画」と障害者総合支援法を根拠法とする「障がい福祉計画」を一体的なものとし、障がいのある方の自立や社会参加のための支援、障害福祉サービス等に係る提供体制の確保等に関する取組を定めたものです。 2 障害者差別解消法及び国の基本方針の概要                     (1)法制定の背景 我が国では、平成19年に障害者権利条約に署名して以来、国内法の整備等を進め、平成26年1月に障害者権利条約を批准しました。この国内法の整備の一環で行われた、平成23年の障害者基本法改正により、「障がいを理由とする差別の禁止」が基本原則とされ、同原則の具体化のため、平成25年に障害者差別解消法が成立しました。 (2)法の概要 ア 国・地方公共団体等及び民間事業者による「障がいを理由とする差別」を禁止します。 イ 障がいのある方に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の提供にかかる責務は次のとおりです。 不当な差別的取り扱いの禁止 国・地方公共団体等、民間事業者(※)ともに法的義務 合理的配慮の提供 国・地方公共団体棟は法的義務、民間事業者は努力義務 ※ 民間事業者には地方公営企業(交通局・水道局・病院局など)や個人事業者、NPO法人等の非営利事業者も含みます。 ウ 国及び地方公共団体は、障がいを理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、実施しなければなりません。 エ 国民は、障がいを理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければなりません。 オ 政府は、差別を解消するための取組について、政府全体の方針を示す「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下、「基本方針」という。」を定めなければなりません。 カ 行政機関等ごと、分野ごとに障がいを理由とする差別の具体的内容等を示す「対応要領」「対応指針」の作成にかかる責務は次のとおりです。 職員対応要領 国は法的義務、地方公共団体は努力義務 事業者のための対応指針 国の法的義務 キ 国及び地方公共団体は、相談に的確に応ずるとともに、障がいを理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとします。 (3)基本方針の概要 ア 基本的な考え方 ◆ 共生社会の実現には、障がいのある方の社会参加等を制約している社会的障壁を取り除くことが重要です。 ◆ 合理的配慮の提供については、既に社会の様々な場面において日常的に実践されているものもあります。こうした取組を広く社会に示すことにより、障がいに関する正しい知識や理解が深まり、障がいのある方との建設的対話による相互理解が促進され、取組の裾野が広がることを期待します。 イ 対象範囲 ◆ 対象となる障がいのある方 ○ 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(以下、「障がい」と総称する。)がある方であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある方です(障害者基本法に規定する障害者)。 ○ 「社会モデル(※)」の考え方を踏まえており、障害者手帳の所持者に限られません。 ※ 社会モデル 障がいのある方が日常生活等において受ける制限は、身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(難病に起因する障がいを含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁(人々の偏見など)と相対することによって生ずるもの、という考え方です。 ○ 女性である障がいのある方は、女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障がい児には成人の障がいのある方と異なる支援の必要性があることに留意する必要があります。 ◆ 対象となる事業者 ○ 目的の営利・非営利、個人・法人を問わず、商業その他の事業を行う方です。 ◆ 対象分野 ○ 日常生活及び社会生活全般。事業主が労働者に対して行うものは障害者雇用推進法の規定によります。 ウ 不当な差別的取扱いの禁止 <基本的な考え方> 正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供の拒否又は提供に当たっての場所等の制限、障がいのない方に対して付さない条件を付けることなどにより、権利利益を侵害することを禁止します。 ◆ 留意点 ○ 障がいのある方を優遇する取扱いなど、必要な特別な措置は、不当な差別的取扱いではありません。 ○ 正当な理由の判断の視点 ● 当該取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われ、その目的に照らしてやむを得ない場合。 ● 個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて、障がいのある方等の権利利益(安全の確保、財産の保全など)等の観点から総合的、客観的に判断します。 エ 合理的配慮の提供 <基本的な考え方> 障がいのある方から現に社会的障壁の除去を必要とする旨の意思の表明があった場合において、その障壁を除去するために、障がいのある方の権利利益を侵害せず、実施に伴う負担が過重でない範囲で行う配慮のことです。 ◆ 留意点 ○ 具体的な場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性が高く、柔軟に対応がなされるものです。 ○ 意思の表明は、言語(手話を含む)のほか、点字や筆談、身振り手振り等による合図、触覚による意思伝達などの必要な手段により行われます。また、通訳者や障がいのある方の家族等コミュニケーションを支援する方が行うものも含みます。 ○ 合理的配慮を必要とする障がいのある方が多数見込まれる場合、またそれらの方との関係性が長期にわたる場合等には、中・長期的なコストの削減・効率化に繋がる点から、後述の環境の整備を考慮に入れることが重要です。 ○ 過重な負担について、行政機関等及び事業者は個別の事案ごとに、以下の要素を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断します。 ● 事業・事務への影響の程度 ● 費用・負担の程度 ● 物理的・技術的・人的制約 ● 体制上の制約 など オ 行政機関等及び事業者が講ずべき基本的な事項 ◆ 対応要領の作成 ○ 基本方針に即して、国の行政機関等は、職員の取組に資するための「対応要領」を作成します。 ○ 国の行政機関等は、職員が遵守すべき服務規律の一環として定め、差別的取扱い及び合理的配慮の具体例や相談窓口、職員の研修・啓発の確保等について明記します。 ○ 地方公共団体等は地方分権の観点から対応要領の作成が努力義務とされており、これを作成する場合は、国の対応要領に準じることが期待されます。 ◆ 対応指針の作成 ○ 基本方針に即して、主務大臣は、事業者の取組に資するための「対応指針」を作成します。 ○ 事業者は、対応指針を参考として、取組を主体的に進めることが期待されます。 カ その他障がいを理由とする差別の解消の推進に関する重要事項 ◆ 環境の整備 ○ 行政機関等及び事業者は、合理的配慮を的確に行うため、不特定多数の障がいのある方を主な対象として行う事前的改善措置(バリアフリー法に基づく公共施設や交通機関のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス、介助者等の人的支援、障がいのある方による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上など)についても、実施に努めることとします。 ○ 新しい技術開発が環境整備に係る投資負担の軽減をもたらすことがあるため、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されます。 ○ 職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要です。 ◆ 相談及び紛争の防止等のための体制の整備 ○ 新たな機関を設置せず既存の機関を活用し、充実することとします。 ○ 行政機関等は相談窓口を明確化し、相談や紛争解決などに対応する体制を整備します(事業者は各省庁が定める対応指針に基づき相談窓口の体制を整備します)。 ◆ 啓発活動 ○ 内閣府を中心に関係行政機関等が連携し、障がいを理由とする差別の解消について、地域住民等の関心と理解を深めるとともに、特に障がいを理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行います。 ○ 行政機関等は、職員一人ひとりが障がいのある方に対して適切に対応し、障がいのある方やその家族からの相談等にも的確に対応するよう、研修等を通じて職員の障がいに関する理解促進を図ります。 ○ 事業者は、障がいのある方に対して適切に対応し、また、障がいのある方やその家族からの相談等にも的確に対応するよう、研修等を通じて、障がいに関する理解促進に努めます。 ◆ 障害者差別解消支援地域協議会の設置 ○ 国及び地方公共団体は、様々な機関が地域の実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして障害者差別解消支援地域協議会を組織することができます。   3 札幌市のこれまでの取組                            札幌市は、市民誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現を基本理念に、下記のような取組を進めています(さっぽろ障がい者プランからの抜粋)。 ア 理解促進分野 ◆ 啓発・広報活動、福祉教育などの推進 ○ 出前講座や普及啓発冊子等を活用した啓発・広報 ⇒ 地域に出向いて障がい福祉に関する取組を紹介することで、市民の皆さんと情報共有を行い、障がい福祉について一緒に考えています。また、普及啓発冊子を様々な機会で配布することにより、障がい者理解の促進を図っています。 ○ 福祉教育のための教材の作成・配布(福祉読本など) ⇒ 学校教育において障がいのある方に対する理解を深めてもらうため、福祉読本を作成し、市内の小学校に配布しています。 ○ 障害者週間記念事業の実施 ⇒ 札幌市民の障がい者福祉についての関心と理解を深めるとともに、障がい者の社会参加の更なる促進を図るため、札幌市は障害者週間(12月3〜9日)の期間中、啓発事業等を行っています。 ◆ 公共サービス従事者などに対する理解促進 ○ 障がい当事者の講師派遣 ⇒ 障がい当事者を講師として養成・登録し、その講師の方を学校、企業等に派遣して、講義やディスカッション等を行う機会を拡充することで、障がいのある方に対する理解促進を図っています。 イ 生活環境分野 ◆ バリアフリーに基づくまちづくりの推進 ○ 優しさと思いやりのバリアフリーの推進 ⇒ 新たな施設を整備する際に、障がいのある方や高齢者の力を借りて、人の目や感覚で確認していく「公共施設のバリアフリーチェックシステム」を実施しています。 ○ 新・札幌市バリアフリー基本構想(※)に基づく整備推進 ⇒ 全ての人々が安心して暮らし、分け隔て無く社会活動に参加できるまちづくりを目指し、総合的かつ一体的なバリアフリー化を促進しています。 ※ 新・札幌市バリアフリー基本構想(平成21年3月策定) 全ての人々が安心に暮らし、分け隔て無く社会活動に参加できるまちづくりを目指し、総合的かつ一体的なバリアフリー化をさらに促進するために、平成18年12月に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)に基づき策定したものです。 ○ 地下鉄・市電における安全対策等 ⇒ 地下鉄駅ホームに可動式ホーム柵を設置し、ホームからの旅客転落事故や列車接触事故などを防止することに努め、障がいのある方や高齢者等が安全で安心して地下鉄を利用できるよう取組を進めています。また、路面電車停留場のバリアフリー化・新型低床車両導入など、全ての人にやさしい施設整備を行っています。 ○ 安全な自転車利用環境の推進 ⇒ 「自転車走行空間の明確化」、「総合的な駐輪対策の推進」、「ルール・マナーの効果的な周知と啓発」などの取組により、歩道上における歩行者との交錯や迷惑駐輪による歩行環境の悪化などの課題を解消し、自転車・歩行者・自動車それぞれが安心・安全に通行できる環境を実現します。 ◆ 住まいの確保 ○ 住宅確保要配慮者に対する居住の安定確保の取組 ⇒ 市営住宅抽選時の優遇や、あんしん賃貸支援事業(※)の普及などにより、公的賃貸住宅と民間住宅の全体で住宅セーフティネットを構築し、障がいのある方などの居住の安定確保を目指しています。 ※ あんしん賃貸支援事業 北海道で行っている事業で、高齢者、障がい者、外国人及び子育て世帯の民間賃貸住宅への入居を支援する事業です。 道内の高齢者、障がい者、外国人、子育て世帯の入居を受け入れる民間賃貸住宅に関する情報や、入居者とオーナーが安心して賃貸借契約を結んでもらえるよう、居住に関する各種サポート(居住支援サービス)の情報を提供します。 ウ 教育・発達支援分野 ◆ 早期療育の充実 ○ 障がい児保育巡回指導 ⇒ 保育が必要な心身に障がいのある児童を、障がいのない児童とともに集団保育をすることにより、成長発達を促進するとともに 児童福祉の増進を図っています。実施保育所に対し、障がい児保育の充実を図るため、札幌市は巡回指導を行い、必要に応じて保育者または保護者への指導、助言を行っています。 ◆ 学校教育の充実 ○ 一人一人が学び育つための教育的支援の充実 ⇒ 特別な教育的支援を必要とする児童生徒が個々のもつ力を最大限発揮できるよう、「サポートファイルさっぽろ(※1)」や、「学びのサポーター(※2)」の活用により一人一人に応じた教育的支援の充実を図っています。 ※1 サポートファイルさっぽろ 札幌市が作成したファイルで、保護者が子どもの成長を記録し、関係者がその子どもの個性や特徴、これまでの発達の経過を共通理解するためのものです。 ※2 学びのサポーター 特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対して、教員の補助として、学校生活及び学習を行ううえで必要となる支援を行う有償ボランティアのことです。 ○ 地域で学び育つための教育環境の整備 ⇒ 特別な教育的支援を必要とする児童生徒が身近な地域で適切な支援を受けることができるよう、特別支援学級や通級指導教室(※3)の整備を推進しています。 ※3 通級指導教室 小学校・中学校の通常の学級に在籍している障がいの軽い児童生徒が、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、一部の指導を特別な場で受ける制度です。札幌市では、言語障がい、難聴、弱視及び発達障がい等の通級指導教室を設置しています。 エ 情報・コミュニケーション分野 ◆ 情報提供の充実 ○ 点字・音声による情報提供 ⇒ 視覚に障がいのある方のために、広報さっぽろの点字版「点字さっぽろ」、録音版「声のさっぽろ」を発行するなど、市政情報の点字・音声による情報提供の充実に努めています。 ○ 様々な障がいに配慮した情報提供 ⇒ 特に、障がい福祉に関するパンフレットやガイドブックなどは、分かりやすい表現に心がけ、漢字へのルビ、専門用語等への注釈、二次元コードを付けるなど、読みやすくする工夫に努めています。 4 障がいを理由とする差別を解消するための札幌市の新たな取組            札幌市は、前述のとおり、共生社会の実現に向けて既にさまざまな取組を進めていますが、今後も着実にこれらの取組を進めるとともに、障害者差別解消法において地方自治体に求められている以下の事項について新たに取り組んでいきます。 (1)環境の整備 ア 障がいのある方のコミュニケーション支援 障がいのある方とのコミュニケーションにおいては、聴覚障がいのある方には手話や要約筆記などの文字表示、視覚障がいのある方には点字や音訳、盲ろうの方には触手話や指文字、知的障がいのある方には平易な言葉遣いやルビをふるなどといった、障がい種別によって情報を入手できる手段に違いがあります。また、外見からは障がいがあることがわからない方、言葉が話せない方、コミュニケーションが苦手な方など、障がい特性についても留意する必要があります。 札幌市では、障がいのある方のコミュニケーション支援として、以下のことに取り組んでいきます。 ◆ 障がいのある方の情報入手やコミュニケーションには、前述のとおり障がい種別やその特性により違いがあるため、コミュニケーション手段を利用しやすい環境づくりを促進するため、条例制定を検討し、実効性の確保を目指します。 ◆ 札幌市政等に関する情報を、障がいのある方などに対してわかりやすく提供するため、市政等資料印刷物作成ガイドラインの改正を検討します。 ◆ 各区の窓口等において、市民とのコミュニケーションをより円滑に行うため、コミュニケーション支援ツール(コミュニケーション支援ボード(※1)など)の導入を検討します。 ◆ 外見からは障がいのあることがわからない方などに対し、札幌市民全体で合理的配慮を提供しやすくする環境づくりのため、ヘルプマーク(※2)等の制度導入を検討します。 ※1 コミュニケーション支援ボード 話し言葉によるコミュニケーションが苦手な障がいのある方のために開発されたもので、写真や絵が描かれているコミュニケーション支援ボードを見せて、写真や絵を指差ししてもらうことでコミュニケーションを図るものです。 ※2 ヘルプマーク 平成24年10月に東京都が作成したもので、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方などが、ストラップ型のマークを普段から身に着けておくことで、援助等を得やすくするものです。都営地下鉄等においては、優先席を利用しやすくするよう、配慮をよびかけるステッカーを表示するなどの活用がなされています。 イ ユニバーサルデザインを意識した取組の検討 障害者差別解消法において努力義務とされている「環境の整備」については、福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルによる公共施設のバリアフリー化等を着実に進めているところです。 また、今後、障がいのある方や高齢の方はもちろんのこと、子どもや妊産婦、外国人など、全ての人々にとって利用しやすいといった視点が求められることから、施設等の設計や案内表示の方法を工夫するなど、最初から多くの人の多様なニーズを反映する考え方である、ユニバーサルデザインを意識した取組の検討を進めていきます。 (2)職員対応要領の作成 障害者差別解消法では、地方公共団体における「職員対応要領」の作成は地方分権の観点から努力義務とされています。 札幌市では、多くの職員が各区役所の窓口等において障がいのある方と接する機会が多く、率先して「合理的配慮の提供」等に取り組む必要があることから、「共生社会の実現に向けた札幌市職員の接遇要領」(以下、「接遇要領」という。)を定めます。 接遇要領では、障がいのある方に対する接遇の姿勢や、札幌市役所内部の相談体制、職員の研修・啓発の機会の確保等を記載し、服務規律の一環として札幌市の全職員がこの内規に沿った対応を行います。 この接遇要領と、各省庁が定める事業者が個別の場面において適切な対応・判断をするための対応指針を併せて広く札幌市民に周知を図り、努力義務である民間事業者の「合理的配慮の提供」の促進を目指します。 <職員への研修・啓発> ア 障がい特性への理解を深め、後述する研修等の積極的な受講に努める。 イ 新規採用職員研修及び一般職・役職者向けの研修にて障害者差別解消法の趣旨や障がい特性等に関する研修を実施する。 ウ 各職場において実施する、新任職員研修や服務規律研修において、障害者差別解消法の趣旨や障がい特性、各職場における合理的配慮の事例に関する研修を実施する。 なお、学校等の教育機関では、幼児から高校生までの一定の年齢層に対して、継続的に適切な教育を行う必要があることから、障害者差別解消法の趣旨を踏まえた対応について、学校職員等の一層の理解が必要となるため、教育委員会では「札幌市立学校職員における対応要領」を別途作成します。 (3)相談窓口体制の明確化 障がいを理由とする差別の解消を効果的に推進するには、障がいのある方及びその家族その他の関係者からの相談に的確に応じることが必要であり、これまでもさまざまな機関が相談を受けております。 障害者差別解消法でも、新たな機関は設置せずに、既存の機関等の活用・充実を図り、障がいを理由とする差別の解消の推進に資する体制を整備するものとされていることから、以下の既存の相談窓口を1次的な相談窓口とし、さらに対応が必要なケースは、「石狩圏域障がい者が暮らしやすい地域づくり委員会」において、協議・あっせんを行うこととします。 ア 1次的な相談窓口 ● 障がいのある方の権利や生活に関する相談 ◆ 障がい者あんしん相談 ⇒ 障がいのある方やその家族の方が地域で安心して生活できるよう、障がいのある方の権利擁護に関する相談を中心に相談に応じています。 ◆ 相談支援事業所 ⇒ 障がいのある方に関する、日常生活のこと、福祉サービスの利用のこと、ご家族や友人との人間関係のことなど、さまざまな相談に応じています。 など ●市政や日常生活の困りごとに関する相談 ◆ 市民の声を聞く課 ◆ 各区の広聴係  など いずれの相談窓口も、その窓口では問題が解決できない場合があります。その場合は、より専門的な相談窓口(弁護士会や消費者センターなど)や権限のある機関(法務局や裁判所など)を紹介するなどの役割を担っています。 イ さらに対応が必要な場合の相談窓口 ◆ 石狩圏域障がい者が暮らしやすい地域づくり委員会 北海道障がい者条例に基づき、道内の14圏域に「障がい者が暮らしやすい地域づくり委員会」を設置し、市町村などと連携しながら、障がいのある方が受けた差別や虐待などの解決に向けた協議・あっせんを行っています。また、障がいのある方の地域生活を支えるサービスや暮らしづらさに関する相談も受けています。 (4)障害者差別解消法の趣旨の普及、啓発 これまでの共生社会実現に向けた啓発、広報等を継続して行うほか、法施行を機に、広報さっぽろや札幌市公式ホームページ、出前講座等の活用、パンフレットの作成など、様々な機会に障害者差別解消法の趣旨に関する普及、啓発等を行うことにより、札幌市全体において、さらに障がいのある方への理解の促進に努めます。 (5)障害者差別解消支援地域協議会の設置 障害者差別解消法において、任意とされている障害者差別解消支援 地域協議会の設置については、前述のとおり、市民・事業者・行政機関等が手を携えて札幌市全体における共生社会の実現を目指す観点から、以下のとおり設置することとします。 ア 協議会名称 札幌市共生社会推進協議会 イ 設置目的 障がいのある方の日常生活等のさまざまな場面における関係機関 が、情報共有・協議を行うことにより、それぞれの機関の自主的な差別の解消の取組を推進し、障がいのある方が地域で安心して生活することができる環境づくりを目的とします。 ウ 協議会の構成員 札幌市、国・道の機関、事業者、医療・福祉関係者、障がい当事者(家族を含む)、有識者において構成します。 エ 設置時期の目途 平成27年度中に設置する予定です。 オ 協議会のその他の詳細は別途要綱にて定めます。 5 札幌市の取組の実施体制                      本対応方針に示した取組については、全庁を挙げて取り組んでまいります。 各部局においては、障がいのある方の差別の解消に向けた札幌市職員の接遇要領に基づく接遇等に努めることはもちろん、各部局が所管する各種事業の実施において、法の趣旨に鑑み、可能な限り、障がいのある方への配慮を行うこととします。 また、障がい保健福祉部では、率先して各部局への助言を行うほか、各部局の実施状況等を集約し、進捗管理を行い、さらには平成30年度に策定する予定の次期さっぽろ障がい者プランに実施状況等を踏まえた基本的な考え方を反映するなど、全庁における着実な実施に向けた体制を構築します。 6 資料編                               (1)障がいのある方が差別と感じていること 札幌市では、共生社会の実現に向けてさまざまな取組を進めておりますが、それでも、なお、障がいのある方が差別されていると感じていることがあります。 以下に記載しているのは札幌市内のみならず道内及び全国の自治体で行ったアンケート結果から障がいのある方が差別と感じている主なものを集約したものです。 ア 全障がい共通 ◆ 障がい者というだけで、じろじろ見られる。 ◆ 障がいへの理解が足りず、心無い言葉を浴びせられる。 ◆ 一方的な決めつけや偏見により、能力や人格を否定される。 イ 肢体障がい ◆ 飲食店等で席が空いているにも関わらず「車いすの人は入れません」と断られる。 ウ 視覚障がい ◆ 盲導犬を連れて飲食店等に入店するのを断られる。 ◆ 見えないから、と無視されたり、古い商品を渡されるなどのいじわるをされる。 エ 聴覚障がい ◆ 筆談を求めているのに応じてくれない。 ◆ ファクスや電子メール、郵送で対応してほしいと求めても、頑なに電話での対応しかしてくれない。 ◆ 電話で本人確認を求められることがある。 オ 内部障がい ◆ 見た目で障がいがあることがわからないため、健常者として扱われてしまう。 カ 知的障がい ◆ 役所や銀行など手続きの必要な場所に一人で行っても対応してもらえず、付き添いの人を連れてきてほしいと言われる。 ◆ 付き添いの人がいると、本人ではなく、付き添いの人だけにわかるように説明される。 ◆ 何歳になっても子ども扱いされる。 キ 発達障がい ◆ 言葉で表現することが苦手なため、上手く意思疎通が図れず、わがままなだけ、うそつきなどと誤解されてしまう。 ◆ 習い事など、一度でも多動等の問題が起こると、もう来ないでほしいと言われてしまう。 ク 精神障がい ◆ 見た目で障がいがあることがわからないため「なまけている」「やる気がない」と言われる。 ◆ 精神障がいであるというだけで、理由もなく怖がられたり敬遠されたりする。 ケ 難病 ◆ うつる疾病ではないのに、誤解され、敬遠される。 ◆ 疾患ごとの特異的な特色があり、外見が普通であることも多く、周囲の理解も配慮も得られない。 (2)障がいを理由とする差別に関する意識調査アンケート調査結果 ア 調査の趣旨 障害者差別解消法の施行に向けた準備を進めるために、障がいのある方やその周りの方たちが、生活の中で差別と感じていることなどについて、実際の事例を集め、差別の解消のために求められていることを把握するために、北海道がアンケートを実施しました。このアンケートは札幌市にお住まいの方も調査対象として実施されたものです。 イ 調査期間 平成27年3月3日から平成27年5月29日まで ウ 調査対象 障がいのある方、障がいのある方の家族、福祉関係者 エ 調査の方法 道内各地の障がいのある方等に周知を行い、インターネットまたはファクス等による回答としました。 オ 回答件数 1,114件 カ 調査結果 ◆ 回答者の年代別について 10代以下 件数 6 割合 1% 20代 件数 121 割合 11% 30代 件数 183 割合 16% 40代 件数 226 割合 20% 50代 件数 214 割合 19% 60代 件数 191 割合 17% 70代 件数 133 割合 12% 80歳以上 件数 32 割合 3% 未回答 件数 8 割合 1% ◆ 回答者の性別 男 件数 568 割合 51% 女 件数 533 割合 48% 未回答 件数 13 割合 1% ◆ アンケート回答者について【複数回答有り】 身体障がいの方 件数 228 割合 17% 知的障がいの方 件数 292 割合 22% 精神障がいの方 件数 128 割合 10% 発達障がいの方 件数 49 割合 4% 難病の方 件数 19 割合 1% 親 件数 256 割合 19% きょうだい 件数 30 割合 2% 親きょうだい以外の家族 件数 28 割合 2% 福祉関係者 件数 269 割合 20% その他 件数 39 割合 3% ◆ 平成28年4月から障害者差別解消法が施行されることを知っていたか。 知っていた 件数 377 割合 35% 知らなかった 件数 95 割合 65% ※ 未回答42件を除きます。 ◆ 障がいを理由とした差別と感じた出来事があるか。【複数回答有り】 ある 件数 334 割合 25% 見たり聞いたりしたことがある 件数 219 割合 17% 差別かどうかわからないが、いやな気持になったことがある 件数 354 割合 27% ない 件数 408 割合 31% ◆ 差別と感じた出来事の場面について【複数回答有り】 近隣、地域(家庭を含む)から 件数 232 割合 15% 学校、教育の場面で 件数 161 割合 11% 職場で 件数 150 割合 10% 建物や交通機関に関して 件数 178 割合 12% 行政機関 件数 78 割合 5% 医療機関 件数 159 割合 11% 民間サービス(買い物など) 件数 211 割合 14% 福祉サービス 件数 91 割合 6% 住む場所や家を借りる場面 件数 73 割合 5% 情報、コミュニケーション 件数 110 割合 7% その他 件数 66 割合 4% ◆ 差別と感じた出来事について、誰かに相談したか。 相談していない 件数 191 割合 23% 家族に相談した 件数 127 割合 15% 友人に相談した 件数 97 割合 12% 障がい福祉団体に相談した 件数 46 割合 5% 学校の先生に相談した 件数 43 割合 5% 利用している施設の職員などに相談した 件数 80 割合 10% 行政機関に相談した 件数 37 割合 4% 相談員に相談した 件数 11 割合 1% 障害者就労・生活支援センターに相談した 件数 18 割合 2% 民生・児童委員に相談した。 件数 3 割合 0% 医療関係者に相談した 件数 41 割合 5% 教育委員会に相談した 件数 11 割合 1% 職場の関係者に相談した 件数 71 割合 8% 相談支援事業所に相談した 件数 19 割合 2% その他 件数 46 割合 5%