札幌市障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例をここに公布する。 平成29年10月4日 札幌市長 秋元 克広   札幌市条例第30号  札幌市障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例  全ての市民が、障がいの有無にかかわらず、等しく情報を取得し、互いに意思や感情を伝え合うとともに、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加し、心豊かに暮らすことは、私たちの願いである。  平成23年の障害者基本法の改正においては、障がい者の意思疎通手段についての選択の機会の確保等が、共生社会の実現を図るための基本原則の一部として位置付けられたが、その機会が十分に確保されるに至っていない。  私たちは、障がい者がそれぞれの障がいの特性に応じた手段により、情報を取得し、及びコミュニケーションをしやすい環境づくりを進めていかなくてはならない。  私たちは、このような認識を共有し、一体となって、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進し、もって全ての市民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、ここにこの条例を制定する。  (目的) 第1条 この条例は、障がい者がそれぞれの障がいの特性に応じた手段により情報を取得し、及びコミュニケーションをしやすい環境の整備に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進し、もって障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。  (1) 障がい者 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難病その他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。  (2) 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。  (3) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段 手話(触手話及び弱視手話を含む。)、要約筆記、筆談、字幕、点字、指点字、音訳、拡大文字、代読、代筆、平易な表現、絵図、絵文字、記号、身振り、手振り、口文字、透明文字盤、重度障がい者用意思伝達装置、パーソナルコンピュータ等の情報機器その他の障がいの特性に応じて利用される意思等の伝達手段をいう。  (4) 合理的配慮 個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の表明があった場合に、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう行う必要かつ適切な現状の変更又は調整であって、その実施に伴う負担が過重でないものをいう。  (基本理念) 第3条 障がい者がそれぞれの障がいの特性に応じた手段により情報を取得し、及びコミュニケーションをしやすい環境の整備は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。  (1) 障がい者は、障がい者でない者と等しく基本的人権を享有する個人であり、その自発的意思が尊重されること。  (2) 障がい者と障がい者でない者が互いにその違いを理解し、人格と個性を尊重すること。  (3) 障がい者が、可能な限り、情報を取得し、及びコミュニケーションをするための手段を自ら選択できること。  (4) 障がいの有無にかかわらず、全ての市民がその利益を享受する主体であること。  (5) 市、市民及び事業者が、それぞれの責務や役割を相互に認識し、連携して取り組むものであること。  (市の責務) 第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の理解及び利用を促進するための施策を推進するものとする。 2 市は、その事務又は事業を行うに当たり、障がい者が障がい特性に応じたコミュニケーション手段を利用できるようにするための合理的配慮を行うものとする。  (市民の役割) 第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の理解及び利用の促進に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。  (事業者の役割) 第6条 事業者は、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の理解及び利用の促進に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障がい者が障がい特性に応じたコミュニケーション手段を利用できるようにするための合理的配慮を行うよう努めるものとする。  (理解促進) 第7条 市は、障がい特性に応じたコミュニケーション手段に対する市民の理解を促進するため、障がい者及びその支援者その他の関係者と協力して、次に掲げる施策を行うものとする。  (1) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段に関する普及啓発  (2) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段を学ぶ機会の提供  (3) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段を学ぶ取組への支援  (利用促進) 第8条 市は、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進するため、障がい者及びその支援者その他の関係者と協力して、次に掲げる施策を行うものとする。  (1) 障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用機会を拡大するための施策  (2) コミュニケーション支援者(障がい特性に応じたコミュニケーション手段によるコミュニケーションを支援する者をいう。)を確保し、又は養成するための施策  (3) その他障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用を促進するために必要な施策 2 市は、障がい者等が市政に関する情報を取得し、利用することができるよう、障がい特性に応じたコミュニケーション手段を用いた速やかな情報提供に努めるものとする。  (滞在者等への配慮) 第9条 市は、前条の施策を行うに当たっては、本市を来訪し、又は本市に滞在する障がい者の障がい特性に応じたコミュニケーション手段の利用に配慮するものとする。  (施策の推進) 第10条 市は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に基づく障害者計画において、第7条及び第8条の施策に関する基本的な方針を定めるものとする。 2 市は、第7条及び第8条の施策を行うに当たり、必要に応じて障がい者等の意見を聴くものとする。  (財政上の措置) 第11条 市は、障がい特性に応じたコミュニケーション手段の理解及び利用を促進するための施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。    附 則  この条例は、平成29年12月1日から施行する。