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58.篠路の野に点在|59.道内馬産史に異彩を放つ|60.篠路の野に脈打つ山岳信仰|61.いまに息づく大師講|62.北区に集中する五角柱|63.世界初の人工雪
第1号の人工雪の結晶(結晶写真北大低温科学研究所蔵)
角板型の結晶をかたどった記念碑
六角形の白い御影(みかげ)石の碑に今年も雪が降り積もる。
この碑は、高さ2.8メートル、横1.8メートル、角板型の雪の結晶をかたどっている。人工雪の結晶が世界で初めて誕生した北大の常時低温研究室跡(現在の理学部と工学部の中間)に昭和54(1979)年7月4日に建てられたもの。本州や九州からの旅行者が時々この碑の前で足をとめ「ここで、人工雪が作られたのか」と驚き、記念写真を撮っていく。
雪の結晶の美しさにひかれた故中谷宇吉郎教授の雪作り研究は、まず、いろいろな結晶の写真を撮ることから始まった。ガラス板に雪をのせ、顕微鏡でのぞくうちに結晶が溶けたり、ガラス板に霜ができたりの苦労があったという。
はじめ、高さ50センチの木箱を作り、これを冷やして下から水蒸気を送り込んだ。雪の結晶はできたが、6本あるはずの枝のうち片割れの2、3本ができるだけであった。そして、いろいろな実験が繰り返され、結局、自然のまねをするのがいいことに気付いた。天然の雪は、数時間かかって落ちてくる間に結晶する。その時間だけ空中に浮かせる必要があった。零下30度の低温室で、防寒帽子のウサギの毛を抜き、それを装置の中に一晩つり下げておいた。
昭和11(1936)年3月12日、美しい雪の結晶の花が見事に咲いた。研究をはじめて3年目のことである。その後、研究が重ねられることにより、降ってきた雪の結晶を見て、どのような気象条件の下で生まれ、成長したかを逆にたどることが可能になった。
「雪は天から送られた手紙」という美しい言葉を残した中谷教授の研究は、北大が世界に誇る雪氷研究の原点。このモニュメントはその功績をたたえたものである。
(「広報さっぽろ北区版昭和55年1月号」掲載)
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