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更新日:2023年1月5日

55.ホイラーの気象観測に始まる-札幌測候所

エピソード・北区

第7章:建物

51.天下の三名園を模倣?52.本道初のサケマスふ化場53.区内にあった斬首場54.水商売の女性たちが育てた水神信仰|55.ホイラーの気象観測に始まる|56.静寂な明治の世界・・・57.百合が原公園、サイロの謎

55.ホイラーの気象観測に始まる-人々は朝やけを"女の腕まくり"と呼んだ-

札幌測候所

 

明治時代の札幌測候所は現・北8条西9丁目にあった(札幌管区気象台蔵)

「あした天気になぁーれ」子供のころ、げたを空高くほうり上げ、あすの天気を占った人も多いことだろう。子供ならずとも日常生活に大きな影響をもつ天気を前日に知ろうという知恵は古来からあった。その結果、さまざまな自然現象を頼って予測する方法が生まれ、幾つかの言い伝えが残っている。
これらを科学的な方法で解明しようとする気象学の確立は近年に至ってからであり、その歴史は浅い。

農漁業に大きな役割

明治初期、開拓使の顧問であったケプロンとアンチセルにより気象観測の重要性が提言された。本道の厳しい気候を調査し、それに適した開拓を進めるべきであるとの理由からである。
明治9(1876)年、開拓使は札幌農学校(現・北大)の教師であったウイリアム・ホイラーが始めた気象観測方法を採用。ホイラーは同校教師館に充てられていた札幌区東創成通りの旧本陣で気象観測を開始。ここに、わが国で3番目の公的な観測場が設けられた。
当時は、観台とか現象場と呼ばれたが、札幌測候所と正式に呼ばれるようになったのは、明治16(1883)年以降とされている。
明治23(1890)年8月1日、札幌区北7条元農園内(現・北8条西9丁目)に本格的な観測所を新設。以来、昭和14(1939)年まで業務が続けられ、北海道における気象観測が大きく前進することになる。
大正11(1922)年には有線が架設され、全国の測候所から気圧、気温、天気などが送られて来るようになった。これらのデータをもとに天気図を作り、気圧の動きを探り、予報を出すのが第一の業務である。
かつて、職員であった大久保武雄さん(67)は、「当時、道内12カ所に点在する測候所ごとに予報を出していました。今のような科学的データが少なく、最終的には経験のある職員が技量を頼りに判断を下したものです。たまに、不慣れな職員が担当すると、外れることが多かったようです」と語る。
札幌測候所は第二の重要な業務として、昔からの言い伝え(「朝焼けは雨か曇り」「月にカサがかかったときは雨」「カエル夜鳴けば快晴」)に科学的なメスを入れようと真剣に取り組んだ。
これらの言い伝えの多くは現在解明されている。驚くべきことにその大部分は科学的根拠があり、的中率は60%以上にものぼる。「朝焼け」は、東空が晴れていて西空に雲があるため起こる現象。やがて天気は崩れるが、その時間が短い。それで女性が怒ったときに例えて"女の腕まくり"などと呼ばれた。怒っても長くもたないからだという。「月にカサがかかる」のは、低気圧が近づいてきた証拠で、電層雲が発生するためである。

ニシンの神様

札幌測候所の歴史を語るとき、所長であった豊蔵さん吾(とよくらさんご、さんは金偏に参)(明治3(1870)年~大正14(1925)年)を忘れることはできない。気象に関連した数多くの調査研究を発表。潮流や海水研究から、ニシンの回遊状況を明らかにし「ニシンの神様」とまでいわれた人物である。
『札幌気象観測百年史』は「ニシンの漁期になると、測候所及び自宅には回遊状況の御託宣(ごたくせん)を仰ごうとする網元が絶えなかった」と伝えている。測候所の思い出について小池武さん(74)は、「ニシン漁期を迎えると職員みんなが気を張ったものですよ。あるとき、予報が外れ、いきの良いヤン衆(ニシン労務者)が怒鳴り込んで来たこともありました」と往時を懐かしげに語る。
そのほか、晩秋には、農作物を霜の害から守るため、夜どおし観測に従事したという。
やがて、全国各地に点在する測候所の一体化が叫ばれ、昭和13(1938)年、すべて国に移管され、札幌測候所は中央気象台支台(現・札幌管区気象台)となり、翌年には北2条西18丁目に移転。札幌測候所の名は消えていった。
しかし、本道開拓期にあって、農漁民の生活を側面から支え続けたという事実を忘れることはできない。

(「広報さっぽろ北区版昭和54年3月号」掲載)

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