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更新日:2022年5月16日
放射線を使用して、腫瘍を治療します。
高エネルギーの放射線を人体にあてると細胞が損傷を受けます。腫瘍細胞の損傷からの回復が正常細胞より遅いことを利用して腫瘍細胞に大きなダメージを与えます。ケロイドなどの良性のものから悪性腫瘍全般に照射することができます。
異なる部位にたいしては何度でも治療を受けることはできますが、同じ部位に対しては原則繰り返しの治療はできません。これは放射線障害を防ぐためであり、再照射の場合は放射線治療医の慎重な判断が必要となります。
放射線が当たっているところにしか反応は出ませんので、たとえば体幹部の放射線治療を単独で行って髪が抜けるということはありません。
当院で治療に用いている放射線は高エネルギーX線と高エネルギー電子線です。腫瘍の存在する場所や大きさにあわせ放射線の種類とエネルギーを決定し、体の外側から放射線を照射する治療を行っています。
特に、放射線治療機器(リニアック)を中心機器とした高精度放射線治療システムが2014年に導入され、強度変調放射線治療(IMRT)や回転式強度変調放射線治療(VMAT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、定位放射線治療(SRT)や呼吸同期照射など精度の高い治療を多く実施してきました。さらに、2021年に最新の高精度放射線治療装置が導入され、今までの高精度治療に加え、HyperArcと呼ばれる複数個の脳転移に対する照射を同時に行えるようになりました。
放射線治療科の受診から、治療開始までの流れをご説明致します。
放射線治療医から、放射線治療に関しての注意事項や副作用等についての説明があります。患者さまの同意が得られると、準備や治療に関する説明や日程の調整などがあります。お仕事をしながら放射線治療を受ける方、または遠方から来られる方など様々なご都合があると思います。放射線治療科医師または看護師などにお気軽にご相談ください。
放射線治療は放射線を複数回に分けて照射します。毎回治療する体勢を同じにしなければ、同じ場所に放射線をあてることができません。固定具を用いることで、毎回の治療で同じ体勢が再現できることや、呼吸による治療部位の変動を抑制する効果があります。
頭頚部用Shell
吸引式固定具
胸部用Shell
先に作成した固定具を装着した状態で、治療する場所を決めるための画像を撮影します。X線シミュレータもしくはCTシミュレータを用いて撮影した画像を用いて放射線治療の計画を作成します。
さらに、体表面もしくは固定具表面に治療の基準となる線を描かせていただきます。皮膚など体表面の治療の際は、放射線治療医の目視で直接治療範囲を決定することがあります。
2.と3.の項目は通常同日に行います。
画像が撮影されましたら、治療開始日まで基準の線が消えないようにご注意願います。
撮影した画像を用いて放射線治療医と医学物理士、放射線技師が協力して治療計画を作成します。さらに、当院に導入されたPET-CTや3T MRIなどの画像を治療計画画像に重ね合わせることで、より精度の高い放射線治療を目指しています。
完成した治療計画が本当にプラン通りに照射されるのかを、複数の測定器を用いて確認します。
頚部VMAT
肺SBRT
前立腺VMAT
HyperArc
様々な装置による検証作業1
様々な装置による検証作業2
放射線治療の初日は、治療プラン作成時のマーキングを基準として位置を確認し、放射線治療医による承認を得てから治療を開始します。基本的には、治療室に入室してから退室まで10~30分程度で、治療台に寝ている間の数分だけ放射線が照射され、治療を行います。
治療中の患者さまの様子はスタッフがモニターで常に見ていますので、安心して治療を受けていただくことが出来ます。
治療の様子(位置合わせ)
治療の様子(照射中)
治療医による確認作業
放射線治療の期間中は様々な視点から患者さまを見守っています。放射線治療医は毎週の問診や診察を通じて、治療効果や副作用の有無などを確認します。また、看護師と診療放射線技師は毎日の治療時に患者さま一人一人の状態を確認しています。
高精度放射線治療に関しては医師と医学物理士が毎日の治療の精度を確認しています。
さらに、多職種合同の放射線治療カンファレンスを定期的に開催し、患者さまの状態をスタッフ全員で把握できる体制を整えています。
治療精度の確認
カンファレンスの様子
放射線治療は、さまざまな職種の職員が力を合わせて行っております。
◎放射線治療医
患者さまの診察や検査情報をもとに放射線治療の方針を決定します。治療期間中や治療後も定期的に診察します。
◎診療放射線技師(放射線治療専門放射線技師)
毎日、機器の点検を行い、医師の治療方針に沿って患者さまの体に正確に放射線の照射を行います。
◎医学物理士
医師と協力しながら放射線治療の計画を作成します。また治療にかかわる装置の精度を管理し、患者さまに正確な治療環境を提供します。
◎放射線治療品質管理士
放射線治療における医療事故防止のための安全管理体制を確立し、放射線治療の質を維持します。
◎看護師
患者さまに寄り添い日々の体調の変化などを確認しながら、患者さまが安心して治療を続けることができるようにお世話します。
◎医療補助員
患者さまの受付や案内、リネン管理など患者さまが安心して治療を受けるためのサポートをします。
放射線治療は、極微量の放射線を計測する小さな測定器から、重量が数トンもある治療本体まで様々な道具を用いて、患者さまに安心して放射線治療を受けていただいております。
当院ではリニアック(直線加速器)と呼ばれる治療装置が2台稼働しています。
明るく清潔感があり、落ち着く治療室です。
VARIAN社製
X線 4 , 6MV 6MV(FFF)
電子線 6 , 9 , 12, 16MeV
高精度放射線治療の定位照射(SRT、SRS)、強度変調放射線治療(IMRT、VMAT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、呼吸同期照射などの他、HyperArcが可能です。
木目を取り入れた落ち着いた雰囲気の治療室です。
VARIAN社製
X線 6 , 10MV
電子線 4 , 6, 9, 12, 16MeV
数種類のエネルギー中から最適なエネルギーを選択して照射します。
X線は主に対幹部、電子線は皮膚などの照射に用いています。
高精度の放射線治療の定位照射(SRT、SRS)、強度変調放射線治療(IMRT、VMAT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、呼吸同期照射などが可能です。
青色を基調とした、さわやかな検査室です。
GE社製 16列CT
治療計画のためのCT撮影を行います。
通常のCTとは異なり寝台が治療装置と同様の堅い平らな寝台を使用しています。
部位によっては、画像を確認しながら複数回撮影することがあります。
また、専用器具を用いて、呼吸同期画像用の撮影(4DCT)も可能です。
固定具などの作成もこの寝台の上で行います。
青空をイメージした、広い検査室です。
VARIAN社製
治療計画のための透視、撮影を行います。
部位によっては、画像を確認しながら複数回撮影することがあります。
固定具などの作成もこの寝台の上で行います。
待合室には、書籍やTV等を取り揃えており、治療をお待ちいただく患者さまや付き添いの方が安心できるような工夫を施しております。
待合室の飾りも季節やイベントによって変えております。
がん診療連携拠点病院とは、専門知識と技術を持った医師、診療放射線技師、医学物理士、看護師、薬剤師等のスタッフがおり、放射線治療をはじめ手術や抗がん剤治療の体制が整備され、一定の基準を満たしている施設を指します。
当院では2005年に認可されました。現在では、放射線治療専門医をはじめ、医学物理士、放射線治療品質管理士、がん性疼痛看護認定看護師といった専門知識を持つスタッフが一つのチームとなって、患者さんの放射線治療をサポートさせていただいております。また、患者さんに安心して放射線治療を受けていただくために、機器の日常管理はもとより品質精度管理を徹底して行っております。
線量測定の様子。測定には精密な作業が要求されます。
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