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更新日:2023年2月14日

札苗再発見その24

竹スキー物語

先端が鋭角に曲がったわずか幅4センチの竹の板で作られる竹スキー

先端が鋭角に曲がったわずか幅4センチの竹の板。プラスチック製のミニスキーをご存知の方は多いと思いますが、その前身となるのがこの竹スキー。
札苗地区では、さっぽろ雪まつりの第2会場が真駒内から「サッポロさとらんど」に移ってきた平成18年から、手作りの昔懐かしい竹スキーで子どもたちに楽しんでもらおうと、「竹スキー体験コーナー」を運営しています。
今では、雪まつり会場に欠かせない名物コーナーになりましたが、なぜ竹スキーを始めることになったのか、案外知らない方も多いのではないでしょうか。
きっかけは、まちづくりフォーラムに遡ります。

石塚計画デザイン事務所の石塚雅明氏を講師に迎え、札苗地区まちづくりフォーラムが開催されたのは、平成17年3月22日のこと。今後数回かけて、商店街がまちの活性化に何ができるか住民目線で考えていこうと、札苗商店街振興組合とモエレまちづくり委員会が主催したもので、会場のC7(シーセブン)ビルには、約60人の地域住民が集まり、札苗の良いところや課題について、活発な議論が行われました。
この時グループ発表された意見をまとめ、実践に向けた議論をする2回目のフォーラムが開催されることになっていたのですが、9月1日に真駒内に代わる雪まつりの新会場が「さとらんど」に決定したことが報道。10月6日に開かれたフォーラムには、札幌市観光部の職員にも来てもらい、さとらんど会場の概要について説明を聞いた後、札苗地区として「雪まつりにどのようにかかわっていけるか」をテーマに話し合いました。門松等の廃材を利用した竹スキーというアイデアは、すでにこの時に提案されていたのです。

初めて雪まつりがテーマとなった10月6日のフォーラムの様子

3回目の11月9日には、前回出た意見をまとめて「モエレ山斜面から札苗メッセージ」、「スノーキャンドルの道」、「冬と雪を楽しむ」の3つのキーワードを設定し、具体的なイベント案を話し合い、4回目の11月23日で、様々なイベント案の中から、実現できそうな「三角点通のウエルカムスノーキャンドル」、「作成体験型竹スキー」、「ジンギスカン鍋型すべり台」の3事業に絞り込みます。
事業テーマを「雪まつりと地域の融合」とし、早速、市観光部の募集に参加企画案を提出。このうち「ジンギスカン鍋型すべり台」は、安全管理や運営面の難しさから実現には至りませんでしたが、あとの2つは実施に向けて打ち合わせが進んでいきます。

12月5日には、モエレまちづくり委員会(佐藤明喜男会長)の中に「雪まつりを盛り上げるかい!実行委員会」が発足。12月21日には、町内会や各種団体の代表の方々に協力を依頼する全体会議を開催し、札苗地区を挙げて取り組む体制が整います。
実行委員長は、それまでフォーラムを進めてきた札苗商店街振興組合の五十嵐利幸理事長が務めることになりました。
東区全体でのボランティア組織「ひがしく雪まつりウェルカム協議会」が結成されるのは12月26日ですから、札苗地区はその先を走っていたことになります。

五十嵐実行委員長に、当時の様子を伺いました。
「雪まつりがせっかく東区に来るんだから、いいチャンスだなと思いましたね。札苗はさとらんどに近い地域。会場へのアクセスとなる三角点通りは、以前から私たちが「モエレ公園通り」という愛称を付けてPRしてきましたし、そこをスノーキャンドルで飾ろうという案は、地元の皆さんにも比較的受け入られやすいだろうなと思いました。
でも、雪まつり会場でやる竹スキーとなると、ノウハウもありませんし、じっくり検討するような時間もありません。アイデアは面白そうだけど、その材料はどうやって集めるのかが議論になりました。幸い、「竹ならおれが集めるよ」と市川造園の市川俊明社長が言ってくれて、同業の社長から門松に使用した竹を回収することができる目処がつきました。造園業の方が門松を卸していることなんて、初めて知りましたね。
じゃあ、スキーは誰が作るのか。その時、「竹さえあれば何とかなるよ」と言う妙なおじさんがいて…、それが齋藤さんとの出会いだったんです。」

結局、竹スキーづくりの陣頭指揮は、このアイデアを出した齋藤弘業さん(当時札苗連合町内会防犯部長)に託されます。
齋藤さんは、日高の平取で過ごした小学校時代、冬といえば、近くの野山を竹スキーでよく遊んだそうです。また、趣味で竹を加工した経験もあったことから、すぐに竹スキーのアイデアが浮かんだそうです。

「昔は、先端の曲がった部分に長靴の先を差し込み、ひもなしで滑ったものです。でも、遊んだ記憶はあっても、作った経験があるわけではありません。それでも、やるしかない。竹を集めてくれた市川社長が、北海道開拓の村で紹介していた竹スキーづくりの情報を探してきてくれて、それを参考にしながら、自分なりに作り方のマニュアルを絵入りで作成しました。
竹を集めてきた段階で、早速自分で割ったり、削ったり、曲げたり、いろいろ試してみました。現職の時、会社で飾った門松を譲り受けて、自宅の車庫で花器などを作ったりしていましたので、竹の扱いには多少自信がありました。
製作にあたるメンバーは、モエレまちづくり委員会の菅原守也事務局長(当時)にお願いして、手先の器用そうな人を7、8人集めてもらい、1月中旬から、竹スキーの製作を始めました。最初は、長さも幅もバラバラ。6割は失敗作でした。でも、試行錯誤を繰り返しているうちに、幅4センチ、長さ37センチに統一。節の直近で切るのが最も良いということも分かりました。
難しいのは、曲げの工程。グラインダーを使って、先端から3センチのところから6センチにわたって薄く削り、表面をガスであぶって曲げるのですが、削り方が足りないとうまく曲がりません。また削り直し、というようなこともしょっちゅうでした。
でも、各工程の作業を分業化して、ノウハウが少しずつ蓄積されてくるにつれて、だんだん手際よく、いいものが出来るようになりました。
スキーに付けるひもも、初めは竹の先に穴を開け、そこを通そうと考えましたが、すぐ割れてしまうんですね。すると、メンバーの1人が「こうすればいいよ」と、穴を開けずに簡単に付け外しができる特別な結び方を教えてくれました。」

 

C7ビルで製作作業にあたるメンバー

竹スキーを楽しむこどもたち

1年目の「さとらんど会場」の様子

 

何とか200セット用意できたのは、開幕の2日前。と同時に、今度はゲレンデの整備が待っていました。今では、実行委員会本部が、重機を使って斜面をならしてくれますが、当時は、雪をただ山積みにした状態。約50人がスコップを持ち寄り、ガタガタの斜面を整地するのに、半日かかりました。どれくらいの勾配がいいのかも手探りでした。
前日には、控室と貸出場所を兼ねるプレハブ小屋に竹スキーや用具類を運び込み、ようやく臨戦態勢に。でも、これからが本番でした。
雪まつり期間中の7日間は、連日、午前8時30分にミーティングを行い、午後5時まで、貸し出しの受付から、戻ってきたスキーの手入れ、滑り方の指導、ゲレンデの見回りや整備、製作実演や無料製作体験の対応、それに、スタッフのための昼食の用意など、のべ400人以上のスタッフがフル回転でした。

「あれだけの人手を動員できたのも、夏祭り「燃えれ!わが街」で培ったネットワークがあったからでしょうね。とにかく何から何まで初めてのことで、1日1日が無我夢中で過ぎていきました。終わってみれば、約8,000人の方が滑ってくれて…。思っていた以上に、子どもたちの反応が良かったし、大人の方も懐かしいと喜んでくれました。寒くて大変でしたけど、全員の力を合わせてやり切ったんだっていう達成感がありましたね。」と五十嵐実行委員長。

でも、実行委員会のメンバーは、1年目の成功で手を抜くことはありませんでした。「もっといいものができないか」、「もっと喜んでもらえるにはどうすればいいか」と、様々な工夫を重ねていきます。
最初の年の大きな反省点として、ゲレンデの安全管理という課題がありました。初めのうちは大人も一緒に滑っていたのですが、3人の方が転んでけがをしたため、やむなく期間中の4日目から、小学生以下に限定することに軌道修正。2年目からは、「安全対策マニュアル」を作成して、事前に東警察署に提出するとともに、幼児と小学生の区分や転倒者退避ゾーンを設け、監視員を増員しました。
竹スキーを作る技術面においても、竹を曲げる熱源を、ガスからお湯に変更。ガスの熱であぶって曲げたスキーは、時間が経つと、元に戻ってしまっていたのです。その年の夏に研究を重ねた結果、お湯で10分ほど煮て曲げて、即冷やすのが一番だと分かりました。
曲げる支点に使った棒も、パイプ、そして「曲げ台」と呼ばれるものに変更。プロジェクトチームで大工をしていた村崎辰夫さんが考案した作業台は、その後、さらに改良されています。一度に4組のスキーを曲げることで作業効率がアップし、失敗の割合もぐんと減っていきました。
このほか、スキーの表面に塗っていたロウもラードに変更し、時間短縮を図るなど、年々バージョンアップしていきます。
また、ある学校の先生から「滑るだけじゃなく、竹スキーを作るところから子どもたちに体験させたい」という強い要望を受け、2年目から、札苗小学校と札苗北小学校の2年生を対象に、1月下旬に竹スキー製作体験学習を始めました。竹を見たことがない子どもたちは、固い竹がお湯につけるだけで簡単に曲がるのを見て目を輝かせ、プレゼントされた自分だけの竹スキーを手に、学校のスキー山などで練習。雪まつり本番には、初心者を尻目に、少し余裕の滑りを楽しんでいます。

組織体制についても、最初は、竹スキーの製作にあたる人たちの位置付けが曖昧だったため、2年目から、「雪まつりを盛り上げるかい!実行委員会」の中に、「竹スキー製作プロジェクトチーム」を設立。齋藤さんが10人のメンバーの代表として正式に就任します。今ではメンバーは20人に増えましたが、中には、新聞を見て自ら志願し、豊平区西岡から通ってくる奇特な方もいます。
年々メンバーの腕も上がり、竹スキーの完成度も上がってきましたが、それでも時折、齋藤さんの厳しいチェックで“返品”が出るくらい、仕上げにこだわる職人たちの手で1本1本が大切に作られています。
3年目ともなると、会場運営にも慣れ、外国からのお客様にも対応できるように、簡単な会話のマニュアルを用意。応援に来てくれる大学生と一緒に、スタッフも片言で話ができるようになってきました。

さとらんど会場が定着してきた矢先、平成20年8月に「つどーむ」への会場変更という問題が起こります。
でも、「札苗から遠くなったから、やめようや」という声は不思議と聞かれず、それまでの経験を活かして、同じ東区内の会場を盛り上げていこうということになりました。
景気低迷の影響を受け、門松の減少という難題もありました。でも、何とか他の業者からもかき集め、竹を大事に扱うことでクリア。新会場でのゲレンデの傾斜が緩やかすぎ、開幕前日に、急きょ斜面を削り直してもらうというハプニングもありましたが、結果は大盛況。これまでで最も多い8,260人の子どもたちが竹スキーの滑りを体験しました。
つどーむ会場全体で見ても、前年から8万人も多い、33万8千人(さとらんどでの初年度は17万5千人)という過去最高の人手を記録しました。

 

ほっと一息、話が弾むプレハブ内

8,000人目の利用者と喜ぶ五十嵐さんと齋藤さん

 

齋藤さんが、竹スキー体験コーナーの隣にある「ラヴだるまコーナー」を何気なく見ていた時、ある雪だるまが目に止まりました。その雪だるまには、子どもの字で「竹スキーが一番楽しかった」と書かれたメッセージボードが掛けられていました。

「私たちが一生懸命作ったスキーで、子どもたちが元気に遊んでくれるのは、何よりのご褒美。ものを大切にすることや、外で雪にまみれて遊ぶ楽しさを伝えることができたと思います。おまけに、竹スキーを通して、いろいろな方と話ができるようになって…、私たちのチームワークも一段と強くなりました。札幌が誇る国際的なイベントに貢献できることは、大変励みになっています。
作業の過程での切れ端も、靴べらや孫の手、花器、カッポ、お箸などの竹製品に加工しています。それでも残ったものは竹炭にするなど、お正月に使った門松は、余すところなく再利用しています。環境にもやさしい取り組みなんですよ。」と胸を張る齋藤さん。

地域住民が主体的に企画から運営までを行い、雪をも融かす熱い心意気で来場者をおもてなしする札苗独自の取り組みは、まさに雪まつりの原点。
今年は、スタッフも来場者と一緒に楽しみ、会場にもっと笑いをと、竹輪投げ大会やバンブーダンスの新企画も予定されています。
毎年のように、創意工夫と試行錯誤を繰り返しながら進化し続ける竹スキーの取り組み。これからどんな物語が作られていくのでしょうか。

 

大勢の人が引きも切らない貸出場所

「曲げ台」を使った製作体験も大好評

 

つどーむ会場のゲレンデは、歓声を上げて滑る子どもたちでいっぱい!

【平成22年(2010年)1月記】

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