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更新日:2011年3月1日
タンデムマス法を導入することで、従来の測定法では測定できなかった代謝物質を対象とする検査が可能となりました。これによって有機酸血症や尿素サイクル異常症などの疾患も見出されるようになってきています。特に注目されているのは脂肪酸β酸化異常症と呼ばれる疾患群で、この中にはふだんはほとんど症状がないにもかかわらず、乳幼児期に風邪などを契機として脳症などの重篤な症状を併発する疾患が含まれています。アメリカやヨーロッパでは、タンデムマス法による検査により患者を早期に見出し、栄養摂取法などの生活指導を通じて、風邪などを契機とする脳症や乳幼児突然死症候群(SIDS)を防止することに役立てています。

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下の表はタンデムマス法で見出しうる主な疾患とその概念を解説したものです。
| 分類 |
疾患名 (略称・別名) |
指標物質 |
疾患概念 |
| 有 機 酸 代 謝 異 常 症 |
プロピオン酸 血症(PA) |
プロピオニル カルニチン (アセチルカルニチンとの比) |
アミノ酸代謝経路に関与する酵素「プロピオニルCoAカルボキシラーゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は軽症例で約3万人に1人、重症例で約40万人に1人です。軽症例は乳児期以降に発達のおくれやけいれんなどがみられますが、早期発見することで発症を防ぐことができます。重症例は生後まもなくから呼吸障害や意識障害などの重篤な状態を呈します。 |
| メチルマロン酸 血症(MMA) |
プロピオニル カルニチン (アセチルカルニチンとの比) |
アミノ酸代謝経路に関与する酵素「メチルマロニルCoAムターゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。また補酵素であるビタミンB12の代謝障害が原因となり発症する場合もあります。頻度は約8万人に1人です。軽症例は乳児期以降に発達のおくれやけいれんなどがみられますが、早期発見することで発症を防ぐことができます。重症例は生後まもなくから呼吸障害や意識障害などの重篤な状態を呈します。 | |
| グルタル酸尿症 I型(GA I) |
グルタリル カルニチン |
アミノ酸代謝経路に関与する酵素「グルタリルCoA脱水素酵素」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約8万人に1人です。治療用特殊ミルク(関連アミノ酸を低濃度に調整したもの)やカルニチン投与によって治療します。風邪をひいたときなどはブドウ糖の点滴が必要です。 | |
| イソ吉草酸血症 (IVA) |
イソバレリル カルニチン |
アミノ酸代謝経路に関与する酵素「イソバレリルCoA脱水素酵素」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約100万人に1人です。重症の場合、生後まもなくから酸血症により呼吸障害や意識障害をおこし、血液透析が必要です。軽症例では乳児期以降に感染症に罹患したときに嘔吐発作を繰り返すなどの症状を呈します。ロイシン制限食やカルニチン投与によって治療します。風邪をひいたときなどはブドウ糖の点滴が必要です。 | |
| 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸尿症 (HMG血症) |
3-ヒドロキシ イソバレリル カルニチン |
アミノ酸代謝経路に関与する酵素「3-ヒドロキシ-3-メチルグルタルCoAリアーゼの欠損もしくは活性低下による疾患です。非常に稀な疾患だと考えられます。重症例では生後まもなくから低血糖による呼吸障害や意識障害をおこし、血液透析が必要です。軽症例では乳児期以降に感染症に罹患したときに嘔吐発作を繰り返すなどの症状を呈します治療用特殊ミルク(関連アミノ酸を低濃度に調整したもの)やカルニチン投与によって治療します。風邪をひいたときなどはブドウ糖の点滴が必要です。治療により脳障害を防ぐ事が出来ます。 | |
| 複合カルボキシラーゼ欠損症 (マルチプルカルボキシラーゼ欠損症) (MCD) |
3-ヒドロキシ イソバレリル カルニチン |
「ホロカルボキシラーゼ合成酵素」あるいは「ビオチニターゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約20万人に1人です。生後まもなくから酸血症により呼吸障害や意識障害をおこし、血液透析が必要です。軽症例では乳児期以降に嘔吐発作や発達遅滞を認めます。治療用特殊ミルク(関連アミノ酸を低濃度に調整したもの)やビオチン投与によって治療します。早期治療により脳障害を防ぐ事が出来ます。 | |
| 3-メチルクロチニルグリシン 尿症(MCC) |
3-ヒドロキシ イソバレリルカルニチン |
アミノ酸代謝経路に関与する酵素「3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。非常に稀な疾患だと考えられます。無症状が軽い神経症状、知的障害を認めます。乳児期以降、感染症に罹患したときに嘔吐発作を繰り返すなどの症状を呈す場合があります。治療用特殊ミルク(関連アミノ酸を低濃度に調整したもの)やカルニチン投与によって治療します。 | |
脂 肪 酸 β 酸 化 異 常 症 |
カルニチルパルミトイルトランスフェラーゼI欠損症 (CPT I) |
遊離カルニチン (長鎖カルニチンとの比) |
脂肪酸とカルニチンを結合させる酵素「カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約20万人に1人です。新生児期から乳幼児期にかけて感染症罹患時に脳障害や突然死をきたす場合があります。食事中の脂肪を調整したり、食事が十分にとれないときにブドウ糖の点滴をしたりして治療することで、脳障害や突然死を防ぐ事ができます。 |
| カルニチルパルミトイルトランスフェラーゼII欠損症 (CPT II) |
C-16アシルカルニチン C-18アシルカルニチン |
アシルカルニチンを分解する酵素「カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約20万人に1人です。新生児期から乳幼児期にかけて感染症罹患時に脳障害や突然死をきたす場合があるほか、筋力低下や筋痛を示す場合もあります。食事中の脂肪を調整したり、食事が十分にとれないときにブドウ糖の点滴をしたりして治療することで、脳障害や突然死を防ぐ事ができます。 | |
| カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症 (TRANS) |
C-16アシルカルニチン C-18アシルカルニチン |
アシルカルニチンをミトコンドリアに輸送する酵素「カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。非常に稀な疾患だと考えられます。新生児期から乳幼児期にかけて感染症罹患時に脳障害や突然死をきたす場合があるほか、筋力低下や筋痛を示す場合もあります。食事中の脂肪を調整したり、適宜カルニチンを補充したり、食事が十分にとれないときにブドウ糖の点滴をしたりして治療することで、脳障害や突然死を防ぐ事ができます。 | |
| 極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症 (VLCAD) |
C-14:1アシルカルニチン | 脂肪酸の代謝経路に関与する酵素「極長鎖アシルCoA脱水素酵素」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約20万人に1人です。新生児期から乳幼児期にかけて感染症罹患時に脳障害や突然死をきたす場合があるほか、筋力低下や筋痛を示す場合もあります。心筋障害が急速に進行する症例では治療効果が十分でない場合がありますが、その他の場合は、食事中の脂肪を調整したり、適宜カルニチンを補充したり、食事が十分にとれないときにブドウ糖の点滴をしたりして治療することで、脳障害や突然死を防ぐ事ができます。 | |
| 中鎖アシルCoA脱水素酵素 欠損症(MCAD) |
C-8アシルカルニチン | 脂肪酸の代謝経路に関与する酵素群「中鎖ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約8万人に1人です。新生児期から乳幼児期にかけて感染症罹患時に脳障害や突然死をきたす場合があるます。食事中の脂肪を調整したり、適宜カルニチンを補充したり、食事が十分にとれないときにブドウ糖の点滴をしたりして治療することで、脳障害や突然死を防ぐ事ができます。 | |
| カルニチン トランスポータ 異常症 |
遊離カルニチンの低値 | カルニチンの輸送に関与する酵素「有機陽イオントランスポータ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約4万人に1人です。新生児期から乳幼児期にかけて感染症罹患時に嘔吐や意識障害を繰り返し、脳障害や突然死をきたす場合があるます。大量のカルニチンを投与することで治療します。 | |
| グルタル酸尿症 II型(GA II) |
C-10アシルカルニチン | ミトコンドリアの電子伝達系に関与する酵素「ETフラビン」もしくは「ETフラビン脱水素酵素」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約10万人に1人です。乳児期から幼児期にかけて嘔吐や意識障害を繰り返し、脳障害や突然死をきたす場合があるます。コーンスターチ、カルニチン、ビタミンB2を投与して治療しますが、出生時に奇形などを認める重症例では、治療は困難です。 | |
尿 素 サ イ ク ル 異 常 症 |
高アルギニン血症 (アルギナーゼ欠損症) |
アルギニン | 尿素サイクルに関与する酵素「アルギナーゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。非常に稀な疾患だと考えられます。乳幼児期に発達遅滞が進行することが多いですが、重篤な場合、新生児期から脳障害をきたします。アルギニンを抑制する食事療法をしますが、重症例では治療効果が充分でない場合があります。 |
| シトルリン血症 I型(アルギニノコハク酸合成酵素欠損症) |
シトルリン | 尿素サイクルに関与する酵素「アルギニノコハク酸合成酵素」の欠損もしくは活性低下による疾患です。非常に稀な疾患だと考えられます。乳児期以降感染症罹患時などに嘔吐や意識障害を繰り返します。高アンモニア血症をともなう場合もあります。カロリー補充のほかアンモニアの解毒治療を行ないますが、重症例では治療効果が充分でない場合があります。 | |
| アルギニノコハク酸尿症 (アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症) |
シトルリン アルギニノコハク酸 |
尿素サイクルに関与する酵素「アルギニノコハク酸リアーゼ」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約20万人に1人です。乳児期以降感染症罹患時に嘔吐や意識障害を繰り返します。高アンモニア血症をともなう場合もあります。カロリー補充のほかアンモニアなどの解毒治療を行ないますが、重症例では治療効果が充分でない場合があります。 | |
そ の 他 の 疾 患 |
シトリン欠損症 (シトルリン血症Ⅱ型) |
シトルリン | ミトコンドリア内膜上でアスパラギン酸の輸送に関与する酵素「シトリン」の欠損もしくは活性低下による疾患です。頻度は約4万人に1人です。新生児期から乳児期にかけて肝障害を呈しますが、対処療法により軽快します。乳糖除去ミルクの使用やアルブミンの投与で新生児期の症状を緩和できます。思春期以降に高シトルリン血症をともなって発症する場合があり、この場合肝移植が必要となります。
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