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クレチン症は先天性の甲状腺欠損、位置異常、合成障害などに伴う甲状腺機能低下症であり、放置すると特有の身体障害と非可逆的な知能低下をきたすが、新生児期の早期発見、早期治療により、正常人と変わりない発育が期待できる。クレチン症のスクリーニングは新生児の乾燥ろ紙血検体を用い、甲状腺ホルモンまたは甲状腺刺激ホルモンを測定することで行われるが、このたびシオノギ製薬の固相法TSH-RIAキットによる検査を試みた。本法により1978年6月から10月までに札幌市内で出生した新生児10,092例を検査し、3例の患者を見出し、早期治療に結びつけた。)
(63-69ページ)
1969年から78年にかけて札幌市内の小中学生におけるインフルエンザ流行の実態をprospectiveあるいはretrospectiveに調べることでワクチン効果について疫学的な評価を行った。その結果、ワクチンウイルスと流行ウイルスとに抗原性の差異があまりない場合は罹患率の低下、症状発言率の低下などの若干の効果を認めたが、大きな差がある場合は全く効果はなかった。またワクチン効果率も比較的効果のあった年でさえ50%と低い値であった。これらは毎年ワクチン接種前にすでにワクチン株に対して大半が抗体を保有しているためと考えられた。(70-80ページ)
市内動物園に飼育されている数種の動物について下痢症等の原因となる。Plesiomonas Shigelloidesについて検査したところ27頭(57.4%)から40株が検出された。飼育管理、汚物の処理、関係者の健康管理には十分な注意が必要である。(81-85ページ)
ヒト白血球抗原(HLA)には種種の型が発見され、赤血球の型と並んで、輸血後の悪寒・発熱などの副作用や、臓器・組織移植を行う際の拒絶反応の原因となる。現在、HLAとして認められた抗原型はA座20、B座33、C座6、D座11、DR座7の合計77種類である。私たちは、このうちA座、B座の中で日本人に比較的高い頻度を示している数種の抗原型について型別検査を実施し、ABO・Rh式血液型と同様のレベルで検査を行うことが可能か否かを検討した。(86-88ページ)
血中αーフェトプロテイン(AFP)レベルの測定は、原発性肝癌、生殖腺癌、肝炎等の診断及び治療指針として有用である。また、妊娠中に胎児奇形や神経管欠損のある場合、羊水および血中AFPレベルの測定が有効であると考えられている。そこで乾燥ろ紙血を用いて2抗体法RIAによる血中AFP測定の基礎的検討を行ったところ、スクリーニング可能な結果を得た。(89-91ページ)
札幌市では1977年4月からフェニルケトン尿症の検査を開始し、同年10月からヒスチジン血症、ホモシスチン尿症、メイプルシロップ尿症、ガラクトース血症の4項目を追加した。今回1978年度(昭和53年度)の検査成績を集計したところ、受検数は22,631件で届出出生数22,120件を上回っていた他、ヒスチジン血症の再採血基準を見直す必要があった。(92-94ページ)
昭和53年(1978年)8月31日、水質基準に関する新省令が公布され、翌4月1日から施行された。この改正により、水道法第4条第1項に掲げられる検査項目から、アンモニア性窒素が削除され、亜硝酸性窒素と硝酸性窒素を合わせて検査することとされ、その定量法もカドミウム-銅(Cd-Cu)カラムによる還元、N-(1-ナフチル)エチレンジアミンによる比色法と定められた。私たちは新省令の施行に先立ち、公定法の追試及び検討を行ったので報告する。(95-100ページ)
多くの食品に品質改良剤として添加されるリン酸塩類は、過度の摂取があった場合カルシウム代謝への影響が懸念される。衛生試験法では清涼飲料水中のリン酸塩の試験法として、試料を陰イオン交換樹脂に通りてリン酸を分離し、モリブデンと反応後、酢酸-n-ブチルで週出してモリブデンの原子吸光により測定する方法が採用されている。そこで、従来的な方法であった比色法との比較を行った。(101-105ページ)
サバ、サンマ、マグロ、イワシなどの魚が腐敗した際に生成するヒスタミンはアレルギー様食中毒の原因の一つであり、中毒量は食品1g中2~4mgと言われている。衛生試験法に採用されているヒスタミン定量法はろ紙クロマトグラフィー法であるが、半定量法であることに加えて操作に時間を要する。そこで私たちはイオン交換クロマトグラフィー法による検討を行ったところ良好な測定条件を設定することができた。(106-110ページ)
本市における市街地の急激な発展は新たに種種の悪臭公害を発生させており、特に悪臭防止法で規制されている8物質以外の有機溶剤が原因と思われる苦情が目立っている。私たちは実態調査のためシンナー臭の主成分であるトルエン、酢酸エチル、酢酸n-ブチルについて発生施設での測定を行った。(111-115ページ)
紫外吸光光度法による河川水中の有機汚濁物量を測定する場合、懸濁物による光散乱の妨害を受ける場合がある。そこで、濾過処理を行った場合について、濾過をしない場合との比較を行った。(116-124ページ)
化学物質汚染調査のための有機溶媒によるフェニルエーテル・ジフェニルアミン同時分析法について検討を行ったが、フェニルエーテルについては分析が可能であったが。ジフェニルアミンについては適切なクリーン・アップ法を見出せなかった。(125-130ページ)
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