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更新日:2016年9月14日

札幌市衛生研究所-学会発表(2015)

札幌市周辺で高頻度に発生したオセルタミビル耐性株流行とその対応

第35回 衛生微生物技術協議会

2014年6月 東京都

大西麻実、古舘大樹、扇谷陽子、水嶋好清、楢林秀紀、宮田 淳

2013年11~12月に感染症発生動向調査の病原体定点医療機関から搬入された咽頭ぬぐい液5検体からAH1pdm09が5株分離された。これら5株について薬剤耐性マーカー(H275Y変異)の1次スクリーニングを行ったところ、5株全てにおいてH275Y変異が検出された。さらにNA遺伝子の一部分の塩基配列を決定して、275番目のアミノ酸がヒスチジンからチロシンに変異していることを確認した。国立感染症研究所(以下、感染研)において実施された薬剤感受性試験の結果、これらの分離株はオセルタミビルおよびペラミビルに対して耐性を示し、ザナミビルおよびラニナミビルに対しては感受性を保持していることが確認された。この結果を受け、札幌市保健所は、医療機関従事者への情報提供を早急に行うとともに、患者の疫学情報を収集した。これら5例はいずれも散発事例であり、検体採取以前の抗インフルエンザ薬の投与はなかった。

2013/2014シーズンに分離された耐性株を含めたAH1pdm09のHI価(モルモット血球0.75%使用)は、ワクチン株であるA/California/07/2009(ホモ価1280)に対して640~2560の範囲にあり、耐性株と感受性株で大きな相違はなかった。感染研における解析からも大きな抗原性の変異が確認されていないことから、ワクチン株と類似の抗原性であったと考えられる。

耐性株の検出率は30.1%(34株)と全国(4.3%)に比べ高い傾向にある。耐性株は札幌市周辺において局地的に流行したものの次第に感受性株に淘汰されたと考えられるが、過去にA(H1N1)ウイルス(ソ連型)の耐性株が急速に拡がったこともあり、来シーズンのAH1pdm09の発生動向の監視が重要である。


神経芽細胞腫スクリーニング休止後の現状

第41回 日本マス・スクリーニング学会

2014年8月 広島県

斎藤翔太、太田 優、花井潤師、宮田 淳、長 祐子*1、鈴木恵美子*2、竹島清美*3、小西伸一*4、長谷川いずみ*5、小田部なお子*6、久保田倫子*7

6か月児の神経芽細胞腫スクリーニング(以下、NBマス)休止後、対象年齢等を変更してNBマスを実施している7施設のスクリーニング結果を集計し、NBマスの現状を紹介するとともに、札幌市におけるNBマスの検査結果についてまとめたので報告する。

 

*1北海道大学病院小児科*2国立成育医療研究センター*3大阪府立母子保健総合センター*4大阪血清微生物研究所*5聖マリアンナ医科大学病院*6新潟県保健衛生センター*7静岡県予防医学協会


タンデムマス・スクリーニングにおける精度管理の現状と今後の課題

第41回 日本マス・スクリーニング学会

2014年8月 広島県

花井潤師、福士 勝*1、石毛信之*2、田崎隆二*3

日本マス・スクリーニング学会技術部会が行ったTMS実施施設の各指標の正常値分布とカットオフ値の調査結果からTMS検査の現状を解析するとともに、施設間差解消のための内部精度管理の充実に向けた取組みを紹介する。

*1札幌イムノダイアグノスティックラボラトリー、*2(公財)東京都予防医学協会、*3(一財)化学及血清療法研究所


札幌市における胆道閉鎖症スクリーニング

札幌市新生児タンデムマススクリーニングにおける脂肪酸代謝異常症例への応用

第41回 日本マス・スクリーニング学会

2014年8月 広島県

手塚美智子、吉永美和、花井潤師、宮田 淳、本多昌平*1、岡田忠雄*2、顧 艶紅*3、松井陽*4

胆道閉鎖症患児は、便色が薄くなるという特徴があることから、札幌市では、患児の早期発見を目的として、2001年5月から共同研究者の松井らが考案した便色カラーカード(旧カード)を、2012年度からは厚生労働省省令様式の便色カラーカード(新カード)を導入し、胆道閉鎖症スクリーニングを継続している。札幌市では独自の返送用はがきを作成して検査結果を回収し、スクリーニング成績の評価を行っており、今回は新旧カードのスクリーニング成績について解析したので報告する。

*1北海道大学大学院医学研究科消化器外科1.、*2北海道教育大学養護教育専攻医科学看護学分野臨床医学、*3帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座、*4国立成育医療研究センター


検査機関におけるタンデムマス分析精度管理

第39回 日本医用マススペクトル学会

2014年10月 千葉県

花井潤師、福士 勝*1、石毛信之*2、田崎隆二*3

タンデム質量分析計を用いる代謝異常マス・スクリーニング(以下、タンデム・マススクリーニング:TMS)は、平成26年度にはすべての自治体で開始となる。TMSは多項目指標同時測定による多種類の対象疾患のスクリーニング検査であり、タンデム質量分析計の検査・解析には担当者の熟練が必要なことから、ELISA検査に比べ、より大きな施設間差を生じる可能性が懸念される。今回、日本マス・スクリーニング学会技術部会では、アメリカ「The Region 4 Stork collaborative project」(以下、R4S)を参考に、各指標の正常値分布とカットオフ値の調査を行い、TMS検査の現状を解析するとともに、施設間差解消のための内部精度管理の充実に向けた取組を行った。

*1札幌イムノダイアグノスティックラボラトリー、*2(公財)東京都予防医学協会、*3(一財)化学及血清療法研究所


IGSF1異常による中枢性甲状腺機能低下症の2例

第41回 日本マス・スクリーニング学会

2014年8月 広島県

田島敏広*1、森川俊太郎*1、石津 桂*1、藤倉かおり

FT4、TSH測定によるマス・スクリーニングで発見された中枢性甲状腺機能低下症1例と、TSH測定によるマス・スクリーニングで発見できなかった中枢性甲状腺機能低下症1例について、その原因としてIGSF1異常があることを明らかにした。これら2例の臨床経過について報告する。

*1北海道大学病院小児科


新生児マススクリーニングでは発見し得ないシトリン欠損症

日本小児科学会北海道地方会

2014年6月 北海道

田中藤樹*1、重冨浩子*1、森井麻祐子*1、長尾雅悦*1、長岡由修*2、荒木義則*2、森 俊彦*3、中村英記*4、野上和剛*5、太田 優、手塚美智子、斎藤翔太、花井潤師、林三起子*6

シトリン欠損症は新生児マススクリーニング(NMS)で見逃す可能性が多いため、厚労省からはスクリーニング二次対象疾患とされている。我々はNMSをすり抜け、乳児期に体重増加不良、黄疸、灰白色便、脂肪肝を認め、シトリン欠損症と遺伝子診断した5例について、後方視的にNMSデータを見直した。シトリン欠損症NMS検出率の向上への新たなスクリーニング指標を考案するとともに、1か月児での胆汁うっ滞・脂肪肝・タンデムマスによるシトリン早期発見を啓蒙したい。

*1国立病院機構北海道医療センター小児科、*2国立病院機構北海道医療センター小児科、*3国立病院機構北海道医療センター小児科、*4名寄市立総合病院小児科、*5小樽協会病院小児科、*6北海道薬剤師会公衆衛生検査センター


シトリン欠損症の新たなスクリーニング指標の検討

第41回 日本マス・スクリーニング学会

2014年8月 広島県

重冨浩子*1、田中藤樹*1、森井麻祐子*1、長尾雅悦*1、太田 優、手塚美智子、斎藤翔太、花井潤師、林三起子*2

シトリン欠損症は乳児期にNICCD: Neonatal intrahepatic cholestasis by citrin deficiencyとして発見されるが、新生児マススクリーニング(NBS)におけるシトルリン(Cit)上昇をマーカーにした検出率は1/80,000と実際のNICCD発症率の4分の1に過ぎない。実際に札幌市では2005年4月のタンデムマス導入以来この方法による患者の発見はない。今回NBSは陰性であったが、生後1ヶ月以後に発症した6例について後方視的にNBSデータを見直した。

 

*1国立病院機構北海道医療センター小児科・小児遺伝代謝センター、臨床研究部遺伝子解析研究室*2北海道薬剤師会公衆衛生検査センター


福島原発事故前後環境放射能と先天性甲状腺機能低下症の新生児マス・スクリーニングにおける再採血率、精査率、濾紙血TSH値との関係

第41回 日本マス・スクリーニング学会

2014年8月 広島県

福士 勝*1、花井潤師*1、田崎隆二*1、山口清次*1、南谷幹史*2、原田正平*2、長崎啓祐*2、安達昌功*2、安藏 慎*2、石井智弘*2、鬼形和道*2、楠田 聡*2、堀川玲子*2、水野晴夫*2、皆川真規*2、田島敏広*2、横谷 進*2

福島原発事故前後の環境131I濃度が我が国のCHスクリーニング(CH-MS)における再採血率、精査率、濾紙血TSH値に与えた影響を検討した。

 

*1日本マス・スクリーニング学会技術部会、*2日本小児内分泌学会マス・スクリーニング委員会


札幌市で導入した感染症発生動向調査集計システムについて~システムの札幌市における活用事例~

平成26年地方衛生研究所全国協議会北海道・東北・新潟支部公衆衛生情報研究部総会・研修会

2014年10月 札幌市

扇谷陽子

札幌市で平成24年度に導入した「感染症発生動向調査集計システム」の概要、システムで集計した各種感染症の流行状況に係る情報提供、システムを活用した札幌市における各種感染症の流行特性の解析例について事例紹介した。


札幌市におけるヘルパンギーナの流行状況について

第66回 北海道公衆衛生学会

2014年12月 札幌市

扇谷陽子、花井潤師、宮田 淳

ヘルパンギーナが札幌市において2011年に警報レベルに至る大流行になった。そこで、2011年の状況を踏まえた上で、今後の流行時の予防とまん延防止のための情報発信を行うことを目的に、これまでの札幌市の流行状況を解析した。この結果、札幌市では、例年夏季に患者報告数が増加すること、報告数が多い年は全国的な状況と必ずしも同様ではなく地域的な流行が存在すること、地域的な流行は行政区の規模でも存在することが確認された。また、例年1歳の報告割合が20%以上と最も高いこと、2011年は警報レベルに至った時期が他の警報レベルに至った年より早く、流行のピークが小中学校の夏休み前であったこと、ピーク頃の小中学生程度の年齢の報告割合が他の警報レベルに至った年と比較して高いことが確認された。


札幌市における手足口病の流行状況について

第28回 公衆衛生情報研究協議会研究会

2015年1月 宇都宮市

扇谷陽子、大西麻実、古舘大樹、水嶋好清、楢林秀紀、花井潤師、宮田 淳

札幌市で手足口病が大流行した2011年と2013年の流行状況を解析した結果、コクサッキーウイルスA6型が手足口病でも主要病原体になったことに由来すると推測される以下に示す流行状況の変化が確認された。

・全国のピーク時期が7月であったのに比べ、札幌市のピーク時期が9月と遅めであったこと

・2008年以前は明確ではなかった手足口病とヘルパンギーナの流行状況に関連が推測されたこと

・ピーク時期の1歳以下の報告割合が、2008年以前の警報レベル期間より高い傾向であったこと

また、全国と札幌市の比較において地域的流行が存在することが確認されたが、さらに市内の行政区別の規模でも地域的流行が存在することが確認された。


マーケットバスケット方式による食品添加物の一日摂取量調査

第51回 全国衛生化学技術協議会

2014年11月 大分県

熊井康人*1、滝川香織、関根百合子*2、安喰夏美*3、林千恵子*4、橋本博之*4、氏家あけみ*5、安永 恵*5、酒井國嘉*6、川原るみ子*6、古謝あゆ子*7、仲間幸俊*7、寺見祥子*1、久保田浩樹*1、佐藤恭子*1、穐山 浩*1

日々の食生活による食品添加物摂取量を推定するため、我々は2002年度よりマーケットバスケット(MB)方式を用いた食品添加物一日摂取量調査を実施している。MB方式とは、量販店で購入した食品を、国民の平均的な一日の喫食量に応じて採取し、それらを混合して添加物含有量を分析し、食品添加物の一日摂取量を推定する手法である。2013年度は、酸化防止剤10種類、防かび剤5種類、製造用剤等3種類、計18種類の食品添加物を対象として加工食品からの摂取量調査を行ったので報告する。

*1国立医薬品食品衛生研究所、*2仙台市衛生研究所、*3仙台市衛生研究所(現:仙台市水道局)、*4千葉県衛生研究所、*5香川県環境保健研究センター、*6長崎市保健環境試験所、*7沖縄県衛生環境研究所


ブタン-2-オン=オキシムの分析法について

平成26年度化学物質環境実態調査環境科学セミナー

2015年1月 東京都

立野英嗣

ブタン-2-オン=オキシムはシリコン樹脂の硬化剤、ウレタンのブロッキング剤等の用途で用いられているが曝露情報が不足している。そこで、本物質の大気試料の分析法を開発した。

大気試料の採取はあらかじめ酢酸エチルで洗浄し乾燥した固相カートリッジ(Oasis HLB Plus)に毎分0.2Lの速度で24時間採取することとした。採取後の固相カートリッジは、酢酸エチル5mLで目的物質を溶出し、内標準として4-ブロモフルオロベンゼンを添加し定容した。分析カラムとしてはDB-Wax(0.25mm×30×0.25μm)を用いた。

本分析法の検出下限及び定量下限はそれぞれ13ng/m3と32ng/m3である。

 


 

2,3-エポキシ-1-プロパノールの分析法について

平成26年度化学物質環境実態調査環境科学セミナー

2015年1月 東京都

立野英嗣

2,3-エポキシ-1-プロパノールはエポキシ樹脂等の安定剤、木綿・羊毛などの改質剤として使用されているが、PRTR届出データにおいて大気への排出量が多いにもかかわらず有害大気モニタリングなどの調査実績がない。そこで、本物質の大気試料の分析法を開発した。

大気試料の採取はあらかじめジクロロメタンで洗浄し乾燥した固相カートリッジ(Sep-Pak AC-2  Plus)に毎分0.2Lの速度で24時間採取することとした。採取後の固相カートリッジは、ジクロロメタン5mLで目的物質を溶出し、内標準としてn-ヘキシルアルコール-d13を添加し定容した。分析カラムとしてはDB-Wax(0.25mm×30×0.25μm)を用いた。

本分析法の検出下限及び定量下限はそれぞれ0.45μg/m3と1.2μg/m3である。

 


 

札幌市における室内外のガス状化学物質の調査

第73回日本公衆衛生学会

2014年11月 栃木県

吉田 勤

TVOC、二酸化窒素の結果から、冬季の屋内空気は夏季に比べ汚染されている傾向にあり、その原因はオゾン濃度から推測すると換気不足が考えられる。これは高気密住宅が普及していて、冬季は常時暖房を使用し、換気をする習慣のない北海道の特徴に一致している。一方、屋外の空気中には指針値や基準値に達している化学物質が含まれていなかったことから、より健康的な生活環境を維持するために、冬季の定期的な換気の必要性が示唆された。


空気中に存在するグリオキサールのLC-MS/MSによる分析法

平成26年室内環境学会学術大会

2014年12月 東京都

吉田 勤

グリオキサールの分析をDNPH誘導体―LC-MS/MS法で検討したところ、異性体の分離に問題が見られたが、定量が可能となった。グリオキサール-DNPH誘導体は、他のアルデヒド-DNPH誘導体に比べ、アセトニトリルに対する溶解度が低く、より希薄溶液での分析も考えられる。一般的なアルデヒドDNPH誘導体の分析ではLC-UV法を用いるが、LC-MS/MS法に比べると検出下限が高く、濃度レベルによっては分析できない場合がありうる。低濃度領域での分析では、LC-MS/MSの使用が適していると考えられた。


2,4-ジメチルアニリンの分析法について

平成26年度化学物質環境実態調査環境科学セミナー

2015年1月 東京都

阿部敦子

2,4-ジメチルアニリンは染料及び顔料の合成原料として用いられ、化審法第1種指定化学物質であるが、排出量が少なく指定の妥当性について検討する必要があるため、水質及び底質中の2,4-ジメチルアニリンを測定する分析法を環境省から受託し開発した。

水質試料は逆相カートリッジ(PS-2)で固相抽出し、0.01mol/L塩酸70%メタノール水溶液3mLで溶出し必要に応じて陽イオン交換カートリッジでクリーンアップを行い、アルカリを添加しヘキサンで抽出後内標準(アニリン-d5)を加え定容した。底質試料は、80%メタノールで粗抽出液を調製し水で希釈し水質同様に試験溶液を調製した。

本試験法による検出下限は、水質13ng/L、底質0.27ng/g-dryであった。

本法により札幌市内の河川水と底質を測定したところ、2,4-ジメチルアニリンは検出されなかった。

なお、本分析方法は環境省の「化学物質と環境 平成25年度 化学物質分析法開発調査報告書」に掲載された。


6-アセチル-1,1,2,4,4,7-ヘキサメチルテトラリン(別名:トナリド)及び1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチルシクロペンタ[g]-2-ベンゾピラン(別名:ガラクソリド)の分析法開発について

平成26年度化学物質環境実態調査環境科学セミナー

2015年1月 東京都

折原智明

トナリドは洗剤などの香料として用いられ、魚類に対する抗エストロゲン様作用が示唆されている。環境省がその存在状況を確認すること、また同じ香料として用いられ分子量も同じガラクソリドと分別定量することを目的として環境省から受託し分析法を開発した。

水質試料を固相カートリッジ(Oasis HLB)に通水し、メタノール/精製水(1:1,v/v)で洗浄後、十分に乾燥し、ジクロロメタンで溶出する。溶出液を窒素気流下で乾固し、シリンジスパイク内標準を含むヘキサンで溶解後、GC/MS-SIMで測定する。

本法で用いたGC/MSでは、トナリドのMDLは0.85ng/L、ガラクソリドのMDLは1.6ng/Lであった。

本法により札幌市内の河川水を測定したところ、トナリドは<0.85~180ng/L、ガラクソリドは1.7~1,050ng/L検出された。

なお、本分析方法は環境省の「化学物質と環境 平成25年度 化学物質分析法開発調査報告書」に掲載された。

 


 

 

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札幌市保健福祉局衛生研究所保健科学課

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