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更新日:2016年9月14日

札幌市衛生研究所年報-他誌投稿(2015)

病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究 平成25年度分担研究報告書、33-42、2014

八柳 潤*1、清水俊一*2、池田徹也*2、坂本裕美子、武沼浩子*3、福田 理*3、岩渕香織*4、梶田弘子*4、瀬戸順次*5、鈴木 裕*5、山口友美*6、松原弘明*7、牛水真紀子*7、千葉一樹*8、菊地理慧*8、川瀬雅雄*9、足立玲子*10

北海道・東北・新潟ブロックの地方衛生研究所にIS-printing systemを普及させると共に、国立感染症研究所に構築されたIS-printingデータベースシステムへの参画を可能とすること目的として、ブロック内地方衛生研究所におけるIS-printing systemの基礎的な精度管理に関する共同研究を実施した。秋田県で分離されたEHEC O157分離株4株と米国で1982年に発生した集団事例の原因菌であるEHEC O157:H7 EDL933株から抽出したDNA溶液を供試し、キット付属のプロトコールに従いIS-printingを実施した結果、参加11機関の結果がほぼ一致したが、1機関が牛由来株の1st Set 1-10の位置の近傍に出現したエキストラバンと思われるバンドの判定において10機関と異なる判定となった。エキストラバンドについては実験条件や供試株によっては判定に苦慮する場合も発生することを念頭に入れる必要があり、エキストラバンドか否か判断がつかない場合の報告方法について一定のルールを策定する必要があると考えられる。今後もブロック内におけるIS-printing systemの条件検討と精度管理を継続する必要がある。

*1秋田県健康環境センター、*2北海道立衛生研究所、*3青森県環境保健センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5山形県衛生研究所、*6宮城県保健環境センター、*7仙台市衛生研究所、*8福島県衛生研究所、*9新潟県保健環境科学研究所、*10新潟市衛生環境研究


事例に学ぶ細菌学

日本細菌学雑誌、69(2)、349-355、2014

飯島義雄*1、坂本裕美子、綿引正則*2、大西貴弘*3、五十君靜信*4

北海道での白菜浅漬による腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli、EHEC)O157食中毒事例、富山県を中心に発生したユッケによるEHEC O111/O157 食中毒事例、西日本で多発したヒラメの喫食に伴う寄生虫性食中毒、鳥取県での真空パック食品によるボツリヌス食中毒事例およびこれらの事例から得られた知見を紹介する。

*1神戸市環境保健研究所、*2富山県衛生研究所細菌部、*3国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部、*4国立医薬品食品衛生研究所食品管理部


麻疹ならびに風疹排除およびその維持を科学的にサポートするための実験室検査に関する研究

 

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)麻疹ならびに風疹排除およびその維持を科学的にサポートするための実験室検査に関する研究 2013年の北海道における麻疹・風疹について 平成25年度分担研究報告書、80-85、2014

三好正浩*1、駒込理佳*1、長野秀樹*1、岡野素彦*1、大西麻実、伊藤はるみ

2013年の北海道における麻疹患者報告数は2例のみであった。これらの症例における麻疹ウイルスの遺伝子検査は未実施もしくは陰性であったが、IgM抗体指数が12.3及び3.91と高値であったため届出となった。一方、風疹患者報告数は109例であった。麻疹及び風疹の検査件数は北海道立衛生研究所66例、札幌市衛生研究所7例であった(同一検体について両方の検査を実施)。これらの検査において麻疹ウイルスは検出されなかったが、36例の風疹ウイルス遺伝子が検出された。このうち32例から遺伝子型2Bが検出された。4例はNS遺伝子の増幅をみたが、E1領域の増幅が確認されず、遺伝子型は不明であった。

*1北海道立衛生研究部


Recent Progress toward Measles Elimination in Hokkaido, Japan, during 2011–2012

Jpn. J. Infect. Dis., 67, 311-314, 2014

Masahiro Miyoshi*1, Rika Komagome*1, Setsuko Ishida*1, Masayuki Kikuchi, Hiroko Sato, Harumi Ito, Hideki Nagano*1, and Motohiko Okano*1.

Laboratory diagnoses for measles were performed in a total of 97 cases in Hokkaido, Japan, during 2011–2012. Two patients were confirmed to be positive for measles virus (MV), both of whom lived in the Iburi district of Hokkaido. Molecular analysis of the nucleotide sequences of the nucleoprotein (N) gene revealed that these 2 strains had high homology with each other and belonged to the genotype D8. The onset interval of these cases and epidemiological data suggested that MV transmission had occurred between them and then terminated. Phylogenetic analysis of the N gene revealed that the strains identified in Hokkaido were classified into a cluster that contained many genotype D8 strains that were detected within a large area of Japan. Eventually, 9 cases were officially reported as measles. However, other than the abovementioned 2 cases, no genetic information regarding MV was obtained. In future, further active surveillance combined with the genetic investigation should be required in all suspected measles cases to verify the elimination status.

*1 Hokkaido Institute of Public Health


 

2013/2014年に札幌中心に検出されたオセルタミビル耐性ウイルスの流行状況について教えてください

インフルエンザ、15(3)、23、2014

大西麻実、古舘大樹、水嶋好清

札幌市では、感染症発生動向調査として、定点医療機関の協力のもとに病原体検査を行っており、2013/2014年はインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが113株分離され、そのうち34株(30.1%)はオセルタミビルに耐性を示すH275Y変異株であった。この34の耐性株は、国立感染症研究所における薬剤感受性試験の結果、オセルタミビル(商品名タミフル)及びペラミビル(商品名ラピアクタ)に対して著しく感受性が低下しており、ザナミビル(商品名リレンザ)及びラニナミビル(商品名イナビル)には感受性を保持していることが確認された。

札幌市における耐性株は11月中旬に検出され始め、2月上旬まで検出が続いたが、オセルタミビルに感受性を示す感受性株が増加するとともに、耐性株の検出はなくなった。

耐性株の遺伝子解析の結果、34株中33株はノイラミニダーゼ遺伝子の塩基配列がほぼ一致しており、これらの耐性株がヒトからヒトに感染し、札幌市を中心に流行していたと考えられた。また、1株は他の33株の塩基配列とは異なり、年明けから流行していた感受性株と類似していることが判明した。疫学調査の結果、この1株は検体採取前にオセルタミビルが投与されていたことから、薬剤の選択圧により耐性株が発生した散発例と考えられた。

今回の耐性株の発生を受け、今後ますますA(H1N1)pdm09ウイルスの発生動向に注意が必要と思われる。


液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS法)によるステロイド分析が早期発見に有用であった21-水酸化酵素欠損症の1例

日本マス・スクリーニング学会誌、24(1)、39-47、2014

田島敏広*1、藤倉かおり、花井潤師、森川俊太郎*1、石津 桂*1、山岸卓弥、田上泰子、宮田 淳、福士 勝*2

先天性副腎過形成症のスクリーニングは偽陽性が他のスクリーニング対象疾患に比較して多い。この軽減のため二次検査として札幌市では2011年より液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS法)により17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、コルチゾール、⊿4-アンドロステンジオン、21-デオキシコルチゾール(21-DOF)、11-デオキシコルチゾールの同時分析を開始している。今回一次検査で17-OHP軽度高値、二次検査でのLC-MS/MS法による分析で17-OHP軽度高値に加え、21-DOFの著しい高値により、即精査とし、21-OHDと診断することができた1例を経験した。このようにLC-MS/MS法によるステロイド分析による二次検査は偽陽性率の低下に加え、21-OHDの早期の発見にも有用な可能性が示唆された。

*1北海道大学学分野、*2札幌イムノダイアグノスティックラボラトリー


地方感染症情報センターにおける患者情報集計、解析業務を支援するツールについて

北海道公衆衛生学雑誌、28、147-150、2014

中野道晴*1、市橋大山*1、長野秀樹*1、扇谷陽子、宮田淳、岡野素彦*1

全国の地方センターが行う毎週の感染症患者情報の集計、解析業務を効率よく、より迅速に進めるために、共通利用が可能な情報ツールを開発した。これは各地方センターのシステム運用管理負担を軽減し、担当者間の積極的な情報交換を促すものである。

*1北海道立衛生研究所


4種類の拡散サンプラーを用いる札幌市における屋内外のガス状化学物質の実態調査

分析化学、64(1)、55-63、2015

吉田 勤*1*2、内山茂久*1、武口 裕*2、宮本啓二*2、宮田 淳*2、戸次加奈江*1、稲葉洋平*1、中込秀樹*3、欅田尚樹*1

札幌市周辺における40戸の家屋において、2012年、2013年の冬季(1月~3月)及び2012年の夏季(7月~9月)に、屋内、屋外のガス状化学物質の実態調査を行った。調査には4種類の拡散サンプラーを用い、揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、カルボニル化合物、ギ酸、酢酸、二酸化窒素、二酸化硫黄及びアンモニアを測定した。屋内濃度において、厚生労働省の屋内濃度指針値を超過した物質は、アセトアルデヒドとp-ジクロロベンゼンであり、それぞれ3戸と2戸であった。ホルムアルデヒドは、屋内平均濃度が夏季27μgm-3、冬季17μgm-3であり、夏季の方が冬季の約1.6倍高い値を示した。二酸化窒素は、冬季の屋内で高い値を示しており、ストーブ等の燃焼由来であると考えられる。また、ギ酸と二酸化窒素が良好な相関関係を示したことから、ギ酸は燃焼由来と示唆される。この他、冬季の屋外では、二酸化窒素とオゾンが負の相関を示し、一酸化窒素とオゾンの反応による二酸化窒素の生成反応の影響が示唆される。

*1国立保健医療科学院、*2札幌市衛生研究所、*3千葉大学大学院工学研究科


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