ここから本文です。

更新日:2012年12月3日

札幌市衛生研究所年報-他誌投稿(2012)

札幌市における2011年の検査成績

厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備「と質的向上に関する研究平成23年度総括・分担研究報告書59-60,2011

野町祥介,雨瀧由佳,吉永美和,花井潤師,高橋広夫,三觜雄,窪田満*1,長尾雅悦*2

札幌市では、2005年4月から希望者を対象としたタンデムマスによる新生児マス・スクリーニングを研究的に開始し、2010年8月より対象疾患を拡充し、新たな新生児マス・スクリーニングを母子保健事業として開始した。2011年1月から12月の間、16259人の検査を行い、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症、古典PKU、良性持続性PKUを各1例発見した。

*1手稲渓仁会病院小児科*2NHO北海道医療センター小児科


タンデムマス・スクリーニングのカットオフ値設定-各指標の施設間差の検討-

厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備「と質的向上に関する研究平成23年度分担研究報告書61-67,2011

花井潤師,野町祥介,高橋広夫,三觜雄,佐々木純子*1,磯部充久*2,石毛信之*3,穴澤昭*3,安片恭子*4,木下洋子*5,山上祐次*5,酒本和也*6,田崎隆二*7,小林弘典*8,山口清次*8,重松陽介*9

タンデムマス・スクリーニングのカットオフ値を検討するため、生データを貼り付けることにより、直接ヒストグラムや基礎統計量を計算することができるワークシートを作成し、各施設の各指標の正常値の分布を検討した。その結果、前処理条件、測定機器、内標の違いなどにより、各施設の正常値の分布、各指標の陽性率は必ずしも同一の傾向を示さない場合があり、今回得られた各施設のデータを比較・分析することで、自施設のカットオフ値の適正さを改めて検討すべきであると考える。

*1公益財団法人岩手県予防医学協会、*2さいたま市健康科学研究センター、*3公益財団法人東京都予防医学協会、*4公益財団法人ちば県民保健予防財団、*5公益財団法人神奈川県予防医学協会、*6大阪市環境保健協会、*7一般財団法人化学及血清療法研究所、*8島根大学小児科、*9福井大学医学部看護学科健康科学


神経芽腫スクリーニングの正しい評価と今後-札幌市における18か月児の神経芽腫マススクリーニング-

日本がん検診・診断学会誌18(3)、228-232,2011

花井潤師、太田優、矢野公一*1、福士勝*2、西基*3、長祐子*4、飯塚進*5

札幌市における神経芽腫マススクリーニングは、2006年4月から、対象年齢を生後1歳6か月に変更して実施している。2010年3月末までに、40,478人がスクリーニングを受検し、神経芽腫患者12例を発見した。発見例12例中6例は初回手術時、原発腫瘍が生検や部分切除にとどまるなど、生後6か月や1歳2か月のスクリーニングの発見症例に比べ、病期の進行した症例が多い傾向が認められ、治療後、1歳7か月から4歳5か月の時点でも5例が担がん状態であった。生後1歳6か月児を対象にした神経芽腫スクリーニングは、過剰治療を軽減し、進行例を早期に治療に結びつける、本来スクリーニングが対象とすべき患者を見出していると考えられ、神経芽腫スクリーニングの時期として適切なであることが示唆された。

*1札幌市保健所長(前札幌市衛生研究所長)、*2札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー、*3北海道医療大学生命基礎科学講座、*4北海道大学病院小児科、*5天使病院小児科


新生児マス・スクリーニングのための新しい採血用濾紙の検討

日本マス・スクリーニング学会誌21(1),43-48,2011

野町祥介,藤倉かおり,雨瀧由佳,花井潤師,福士勝*1

わが国では,新生児マス・スクリーニングに使用する採血ろ紙として,(株)東洋濾紙製のPKU-sが用いられてきた.しかし,近年,当該品の価格が上昇していることから,安価な代替品の需要が高まっている.私たちは,比較的安価に入手可能であり,米国食品医薬品局が新生児マス・スクリーニング用ろ紙として承認したIDBiologicalSystems社のAhlstromろ紙について,PKU-sとの測定値等の比較検討を行った.その結果,PKU-sと同等の品質であることを示し,新生児マス・スクリーニングにおいても使用可能であった.

*1札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー


札幌市におけるタンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングの5年4か月間の実施成績

日本マス・スクリーニング学会誌21(1),49-54,2011

雨瀧由佳,野町祥介,花井潤師,高橋広夫,三觜雄,窪田満*1,長尾雅悦*2,福士勝*3

札幌市では,2005年4月から,希望者を対象としたタンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングを研究的に開始した.2010年7月までの5年4か月間で,新生児代謝異常症等検査を受検した87,062名のうち86,005名(98.8%)がタンデム検査を希望した.その結果,要再採血242例(0.28%),要精査21例(そのうち直接精査8例)となり,要精査21例中12例が患者と診断された.見出された12例のうち,11例は十分な治療効果が得られており良好に経過していることから,2010年8月より,タンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングを札幌市の母子保健事業として開始した.

*1手稲渓仁会病院小児科,*2国立病院機構北海道医療センター小児科,*3札幌イムノダイアグノスティック・ラボラトリー


北海道・東北・新潟ブロックにおけるパルスフィールドゲル電気泳動システムの共通外部精度管理の実施方法について

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)「食品由来感染症調査における分子疫学手法に関する研究」、平成22年度分担研究報告書、24-28、2011

清水俊一*1、山口敬治*1、森本洋*1、池田徹也*1、和栗敦*2、八柳潤*3、岩渕香織*4、沖村容子*5、高橋恵美*5、金子紀子*6、菅野奈美*7、細谷美佳子*8、廣地敬、勝見正道*9

パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法によるパルスネットの構築のためには、各検査施設における精度管理が重要であり、北海道・東北・新潟ブロックでは平成18から20年度に行われた「広域における食品由来感染症を迅速に探知するために必要な情報に関する研究」の中で、共通の生菌を送付して行う精度管理以外の方法としてプラグ送付による精度管理方法について検討を行った。また、本研究の平成21年度には、プラグ作成部分の精度管理法として、各地研が分子マーカーとして使用しているSalmonellaBraenderupH9812株(SB株)でプラグを作成し北海道衛研に送付させ、制限酵素処理、PFGEを行い、泳動像を解析する方法を試みた。今回、これらの研究で得た結果を元に実際に精度管理を実施して有効性、問題点を検討した。精度管理方法としては、SB株で菌濃度の異なるプラグを作成し、これを送付して、各地研で作成したSB株のプラグとともに制限酵素処理を行い、その泳動像を送り返すという方法で行った。各地研のPFGE泳動像は、ほぼ同様の結果を得ることができたが、一部地研で、バンドのピントがあまく、167.1と173.4Kbpのバンドの識別がつきづらかった。また1地研で、プラグのマウントでプラグが曲がったためと思われるバンドの乱れが認められた。プラグのやり取りによりPFGEの精度管理を行う方法は、輸送コストの軽減と、生菌を送る場合のリスクをなくせ、定期的な外部精度管理方法として有用であった。

*1北海道立衛生研究所、*2青森県環境保健センター、*3秋田県健康環境センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5宮城県保健環境センター、*6山形県衛生研究所、*7福島県衛生研究所、*8新潟県保健環境科学研究所、*9仙台市衛生研究所


低温で増殖可能な食中毒原因菌制御への低温活性リゾチームの応用

ノーステック財団研究開発助成事業2011研究成果報告書、34、2011

相沢智康*1、藤村達也*2、坂本裕美子、出村誠*1

大多数の食中毒菌は中温菌であり、その増殖は4℃以下の冷蔵で阻止できる。しかしながら、Listeriamonocytogenes等の一部の食中毒菌は、氷点下でさえ増殖できることが問題となっている。日持ち向上剤として広く用いられているニワトリ卵白リゾチームは、Listeria属菌に対して効果が期待できるものの、低温保存条件下では溶菌活性が急激に低下する。そこで本研究開発では、低温保存条件下でも効果的な微生物増殖制御を可能にする新規技術の開発を目標として、代表者が研究を進めてきた低温活性リゾチームをモデルとし、食中毒原因微生物の制御に対する効果を検証する。さらにタンパク質科学的な解析を元に、食中毒原因菌制御のための新規技術の検討と開発を進める。

*1北海道大学大学院先端生命科学研究院、*2日本ハム株式会社中央研究所札幌サテライト


2011年の北海道における麻疹・風疹について

平成23年度厚生労働科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)「早期麻疹排除及び排除状態の維持に関する研究」分担研究報告書26-29、2011

長野秀樹*1、駒込理佳*1、三好正浩*1、岡野素彦*1、菊地正幸、佐藤寛子、伊藤はるみ

2011年の北海道における麻疹患者報告数は8例で、前年の5例よりも3例増えた。このうち、遺伝子診断において確定された症例は2例で、いずれも遺伝子型D8であり、2007-08年に本邦で流行したD5型とは異なっていた。北海道立衛生研究所での検査数は40例で、上記の麻疹症例の他、パルボウイルス、風疹ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス1型が遺伝子検査で検出された。札幌市衛生研究所での検査数は13例で、すべての試料において麻疹ウイルスRNAは検出されなかった。また、麻疹病原体サーベイランスにおいて風疹の集団感染事例を探知することができた。最終的に17名の風疹の届出があり、6例について遺伝子検査を実施した結果、遺伝子型1Eによる集団事例であることが判明した。

*1北海道立衛生研究所


バイオテロ危機発生時への対応-地衛研のこれまでの研究成果と今後の課題-

厚生労働科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)「バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法と標準化に関する研究」平成23年度研究分担報告書89-99、2011

田中智之*1、三觜雄、千葉一雄*2、小林慎一*3、皆川洋子*3杉浦義昭*4、田中敏嗣*4、山下育孝*5、飯塚節子*6、小河正雄*7、三好龍也*1、宮崎義雄*8

過去三年間にバイオテロに使用される可能性のある病原体の網羅的検出法の構築と評価を行った。可能性のある病原体の中のウイルスと細菌については、研究協力地衛研がその技術を維持している。今年度はバイオテロ対象病原体の一つである真菌について、網羅的測定キットの作製(感染研)それを用いて地衛研で測定精度の評価を行った。その結果、研究協力の8地衛研では、ブラインドサンプル;Candidaalbicans、Aspergillusfumigates、Cryptococcusneoformans、を特定することが出来た。しかし、この評価の過程を通して検査精度のさらなる向上が様々な角度から提言された。

*1堺市衛生研究所、*2福島県衛生研究所、*3愛知県衛生研究所、*4神戸市環境保健研究所、*5愛媛県立環境科学研究所、*6島根県保健環境科学研究所、*7大分県衛生環境研究センター、*8国立感染症研究所


4-ビニル-1-シクロヘキセン

平成22年度化学物質分析法開発結果報告書234-254、2011

立野英嗣

4-ビニル-1-シクロヘキセンは、難燃剤、塗料の合成原料に、また、塗料溶剤及び洗浄剤の合成原料として用いられているが、化学物質排出把握管理促進法や化学物質審査規制法の指定化学物質ともなっている。このことから、大気中の濃度を調査するための分析法の確立が急がれており、環境省の化学物質分析法開発調査の一環として分析法を開発した。大気試料の採取は、捕集剤としてPS-Airを用い、毎分0.2Lで24時間、計288Lの採取を行うこととした。捕集を終えた捕集管からジクロロメタンを用いて溶出し、ガスクロマトグラフ質量分析装置で分析を行った。分析カラムはInertCap1(内径0.25mm×長さ60m×膜厚1.0μm)を用いた。本分析法では、大気中の4-ビニル-1-シクロヘキセンを定量下限0.072μg/m3で定量することが可能である。本分析法により札幌市内の大気中の濃度を測定したところ、検出下限0.028μg/m3以下であった。また、本分析法においては、大気中に存在する炭化水素類の妨害は認められなかった。


このページについてのお問い合わせ

札幌市保健福祉局衛生研究所保健科学課

〒003-8505 札幌市白石区菊水9条1丁目5-22

電話番号:011-841-2341

ファクス番号:011-841-7073