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更新日:2016年1月6日

札幌市衛生研究所-学会発表(2010)

 

タンデムマスによる尿中カルニチン分析と遺伝子検査によるフリーカルニチン低値症例の診断

第8回 東北代謝異常症治療研究会
2009年7月 仙台市
長尾雅悦*1、野町祥介、矢野公一

 カルニチントランスポーター異常症(全身性カルニチン欠損症)はカルニチン輸送蛋白の異常により、細胞内へのカルニチンの取り込みが先天的に障害されている。腎尿細管での再吸収が行われず尿中に多量に喪失するため、血中は元より全身組織でフリーカルニチン(C0)が低下する。この結果、脂肪酸β酸化が障害されて新生児から乳児期に低ケトン性低血糖症を伴う嘔吐、けいれん、意識障害を呈し、急性脳症や乳幼児突然死症候群と診断されることもある。今回、札幌市の新生児タンデムマススクリーニングによりC0低値のため精査された2症例にてタンデムマスを用いた尿中カルニチン分析を行い、腎尿細管でのカルニチン再吸収能を評価した。これに基づきOCTN2遺伝子の変異検索へ進み確定診断した。新生児タンデムマスで発見されるC0低値例には母親のOCTN2遺伝子異常による場合(児は正常)もあるので慎重な診断と経過観察が必要である。2症例の治療経過を含めて報告する。

*1国立病院機構西札幌病院小児科

 

タンデム検査で偽陽性を生じる抗生剤使用の問題点とその対応について

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
雨瀧由佳、野町祥介、花井潤師、福士 勝、矢野公一、窪田 満*1、長尾雅悦*2、長 和俊*3

 札幌市では、2005年4月から希望者を対象としたタンデム質量分析計による新生児スクリーニングを研究的に開始した。2009年3月までの4年間で、脂肪酸β酸化異常症4例有機酸血症4例の患者を見出す等実績をあげている。当検査において、要再採血例の18%が、ピボキシル基を有する抗生剤を使用したため、体内でカルニチンと結合しピバロイルカルニチンとなることでイソバレリルカルニチンとして検出された偽陽性であった。これらの抗生剤は、血中のカルニチン濃度を下げ、低血糖を誘発することがあるため、新生児への使用の安全性は保証されていない。そこで、札幌市では、新生児・乳児マス・スクリーニング連絡会議を通じて、コンサルタント医との連携によりこの問題への対応を行った。

*1手稲渓仁会病院小児科、*2国立病院機構西札幌病院小児科、*3北海道大学病院周産母子センター
 

血中アシルカルニチン,フリーカルニチンの採血日齢との関連性について

第36回 日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
野町祥介、雨瀧由佳、西村知美、小田千恵、花井潤師、福士 勝、矢野公一

 採血日齢とアシルカルニチン類の関連性を2005年度~2006年度に札幌市のタンデム質量分析計による検査を実施し、かつ再採血検査を行った低出生体重児597例と、同じく初回要再採血となった通常出生体重児558例を対象として検討したところ、acetyl carnitine(C2),propionyl carnitine (C3),myristoyl carnitine (C14時01分),palmitoyl carnitine (C16),steroyl carnitine (C18)はいずれも日齢4~6に高値を示し、その後日齢20前後まで減少する傾向を示し、3-OH- isovaleryl carnitine (C5OH),Free Carnitine (COH)は日齢とともに増加する傾向を示した。
 

タンデムマス質量分析計を用いた新生児ろ紙血中グリコサミノグリカン量測定についての検討

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
木田和宏*1、竹田優子*1、野町祥介、小熊敏弘*2、窪田 満*3、福士 勝

 ムコ多糖症(MPS)は、ライソゾーム内に存在する、グリコサミノグリカン(GAG)分解酵素の先天的な欠損を原因とする疾患群で、通常出生時には異常を示さず、経時的に多臓器にGAGが蓄積する事により、主に低身長を主訴とする骨格の変形や、実質臓器への沈着による肥大を来たしQOLの重大な障害をもたらすものや、脳神経へのGAGの蓄積による障害から退行を来たすなどして早期に死に至るもの等いくつかの病型がある。これまでは原疾患に対する有効な治療法は無く、対症的療法のみであったが、病型により骨髄移植、酵素補充療法の有効性が示されつつあり、早期発見のための測定法が待たれている。我々は、新生児マス・スクリーニングのろ紙血中のGAGの測定系を確立するために、タンデムマス質量分析を応用できないかを検討した。

*1北海道大学医学部小児科、*2第一三共株式会社、*3手稲渓仁会病院小児科

 

重症複合型免疫不全症の新生児スクリーニングを目的としたろ紙血TRECs検出の基礎検討

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年08月 札幌市
山口昭弘*1、野町祥介、花井潤師、福士 勝、矢野公一、山田雅文*2、有賀 正*2

 重症複合型免疫不全症(SCID)は、T細胞分化経路の障害により、獲得免疫能を欠く重篤な疾患である。早期に発見できれば骨髄移植による治療が可能なことから新生児マス・スクリーニングの対象疾患として有望視されている。検査法としては、ろ紙血中のT-cell receptor excision circles (TRECs)をqPCRにより検出する方法が報告されているものの、その多くはSpin column方式のDNA抽出キットとTaqMan試薬を用いる方法であり、操作性及び試薬コストの面からマス・スクリーニングへの適用には課題が残されている。そこで我々は、ろ紙血DNAの簡易抽出とSYBR Green qPCRを用いる方法の可能性を検討した。GAPDHを指標とした、3mm血液disc 2枚からのDNA抽出効率はDNeasy>簡易法= Genとるくん>>Gentraの順であった。TRECs 検出プライマーの評価を、SYBR Green qPCRと通常のPCR-ゲル電気泳動を併行して行った結果、4組はプライマーダイマーまたはラダーバンドを優位に生成し定量性に欠け、1組は単一バンドで強いシグナルを示したもののSCID患児でも増幅が見られ特異性に問題があった。残る1組(J Mol Med 2001;79:631)において、プライマー濃度を上げる(0.25→1μM)ことにより、6mm 血液disc 2枚のDNeasy抽出DNAをテンプレートとした場合,SCID患児を対照成人から区別可能であった。TREC plasmid (防衛医大供与)を用いたTaqManとSYBR Greenによる検量線及び全血DNAの測定結果から、特異性はTaqManが勝るものの感度自体はSYBR Greenの方が優れていた。

*1日本食品分析センター、*2北海道大学小児科

 

行政・検査機関からみたインフォームド・コンセントの必要性

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
野町祥介

 国の母子保健事業としての新生児スクリーニングは、1977年に開始された。これまで、検査技術の革新や検査項目の拡充によって、検査の有用性を高める一方で,検査における倫理・社会的適正性、あるいは研究や事業評価における検体の二次利用及び個人情報の取り扱いについては、十分な配慮が求められるようになっている。そこで、行政・検査機関からみたインフォームド・コンセント(IC)の必要性について、個人情報保護、遺伝学的検査、追跡調査、検体の二次利用の4つの側面から強調したい。

 

タンデムマ・ススクリーニングにおける対象疾患診断過程における進展

第34回 日本医用マススペクトル学会
2009年9月 東大阪市
重松陽介*1、畑郁江*2、稲岡一考*3、野町祥介、石毛信之*4

 タンデム質量分析計による濾紙血中アシルカルニチン・アミノ酸分析は、脂肪酸酸化異常症、有機酸代謝異常症、アミノ酸代謝異常症を対照とした新生児スクリーニングのための強力な手法である。しかしながら、その分析結果は疾患の化学診断を目的とした場合、特異性が充分に高いとはいえない。そこで、スクリーニング結果の判定とそれに基づく特異性の高い検査法の選択が特に重要である。
 有機酸代謝異常症の確定診断としては、GC/MSによる尿有機酸分析が汎用されるが,重症度の判定においては酵素活性測定や遺伝子解析が必要である。そこで、早期診断・早期治療のためには、これらの相関性を確認し、尿有機酸分析結果で対応するのが重要であるのと考えられ、その経験を報告する。
 脂肪酸酸化異常症の確定診断としては、HPLCを用いた酵素活性測定や遺伝子解析が行われるが、前者では全ての対象疾患をカバーできず、後者は結果を得るまでに時間がかかる。末梢リンパ球を用いた脂肪酸酸化能検査がこれらの問題をある程度解決出来ると考えられるので、その実際について報告する。
 スクリーニング結果の判断については、疾患の重症度を考慮に入れる必要があり、また新生児期に低カルニチン血症を伴う場合には特に慎重な対応が必要である。このような点でのカットオフ値の設定と判断についても検討したので報告する。

*1福井大学医学部看護学科、*2福井大学医学部小児科、*3大阪府立母子保健総合医療センター、*4東京都予防医学協会
 

クレチン症スクリーニングの精度評価のための検討

第36回 日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌
藤倉かおり、吉永美和、田上泰子、花井潤師、福士勝、矢野公一、母坪智行*1、田島敏広*2

 クレチン症スクリーニングの検査精度を評価するため、感度、特異度、陽性反応適中度を検討した。その結果、いずれもスクリーニングとしては十分評価できる値であったが、感度については、偽陰性が多かったために予想より低かった。今回の調査により、クレチン症と診断されていても必ずしも小慢の申請をしていない例が多い事が判明したため、この方法だけでは患者数の正確な数を把握できないことがわかった。

*1 NTT東日本札幌病院小児科、*2 北海道大学病院小児科

採血部位と採血手技によるマススクリーニング検査データの検討(第二報)

第36回 日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市

河地 豊*1、福士勝、藤倉かおり、望月孝一*2、原田正平*3

 スクリーニング採血の部位・方法の実態を調査し、アミノ酸値およびガラクトース値の検討を行った結果、正常体重児では大部分の項目において有意差が認められたが、一部の検査項目で有意差が認められなかった。しかし、酵素法とHPLC法の測定値の差は非常に小さく臨床的には問題にならないと考える。

*1 愛知県健康づくり振興事業団、*2 埼玉県小児医療センター、*3 国立成育医療センター

 

タンデムマススクリーニングにおける精度管理の検討 第2報

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
渡辺倫子*1、鈴木恵美子*1、原田正平*1,2、加藤忠明*2、松井 陽*2、福士 勝、鈴木 健*3、山上祐次*4、小田切正昭*5、安片恭子*6、石山 洋*7、稲岡一考*8、重松陽介*9、小林弘典*10、田崎隆二*11

*1 日本公衆衛生協会、*2 国立成育医療センター、 *3 東京都予防医学協会、*4 神奈川県予防医学協会、*5 さいたま市健康科学研究センター、*6 ちば県民健康予防財団、*7 静岡県予防医学協会、*8 大阪府立母子保健総合医療センター、*9 福井大学、 *10 島根大学、*11 化学及血清療法研究所

 

北海道における出生数とマススクリーニング検査の現状

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
大森英晶*1、林 三起子*1、田中稔泰*1、花井潤師、福士 勝

*1 (財)北海道薬剤師会公衆衛生検査センター

 

神経芽腫マス・スクリーニング中止後の「副腎の悪性新生物」死亡率

第36回日本マス・スクリーニング学会
2009年8月 札幌市
西 基*1、 花井潤師、福士 勝、矢野公一
*1 北海道医療大学生命基礎科学講座

 

新生児ろ紙血中のグリコサミノグリカン量についての検討

第51回日本先天代謝異常学会
2009年11月 東京都
木田和宏*1、竹田優子*1、窪田 満*2、野町祥介、福士 勝、小熊敏弘*3

 ムコ多糖症スクリーニング法の開発を目的として、タンデム質量分析計によるろ紙血中グリコサミノグリカン定量系の開発を試みた。これまで1%BSAによる抽出ののち、酵素処理に引き続いてケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸由来の二糖をAPI4000による分析を行っている。ヘパラン硫酸由来の二種の二糖には相関関係が確認された他、デルマタン硫酸及びケラタン硫酸由来の二糖についてもスペシフィックなピークを確認している。今後、相関関係や濃度分布の評価を継続する。

*1北海道大学大学院医学研究科 小児科学分野,*2手稲渓仁会病院,*3第一三共株式会社

 

札幌市におけるタンデムマスによる新生児スクリーニングの成績と今後の課題

平成21年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)「タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究」研究班全体会議
2010年1月 東京都
野町祥介、雨瀧由佳、花井潤師、福士 勝、矢野公一、窪田 満*1、長尾雅悦*2

 札幌市では2005年4月から、タンデムマスによる新生児マススクリーニングを研究的に開始した。2009年10月まで、73,665人(希望率98.7%)を検査し、221例(0.30%)を要再採血、18例を要精査とした。精査となった18例のうち10例が患者であると診断された。患者の内訳はプロピオン酸血症5例、カルニチントランスポータ異常症2例、グルタル酸尿症2.型1例、MCAD欠損症1例、VLCAD欠損症1例である。このうち1例は亡くなったが、他の9例は良好に経過している。今後は事業として検査レベルを維持する恒常的なシステムの構築と、追跡調査による評価の継続が課題である。

*1手稲渓仁会病院小児科、*2国立病院機構西札幌病院小児科

 

タンデムマスによる新生児スクリーニングにおけるCDC精度管理検体を用いた内部精度管理について

平成21年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)「タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究」研究班全体会議
2010年1月 東京都
花井潤師、野町祥介、雨瀧由佳、福士 勝、矢野公一

 CDCでは年間4回の正確度試験(PT)検体に加えて、年間2回アミノ酸6項目、アシルカルニチン12項目を含む内部精度管理(QC)検体を供給している。QC検体は毎日の検査に使用できる十分な検体が送付される。
 札幌市におけるタンデムマススクリーニングの内部精度管理は、CDCのQC検体によるX-R管理図の評価に加えて、新生児検体のアミノ酸とアシルカルニチンの分布(平均値、標準偏差、パーセンタイル値)、内部標準物質の変動などを総合的に評価することにより行っている。タンデムマスによる新生児スクリーニング精度保証システムの一環として、CDCによるPTに加えて、QAも合わせて実施することにより、検査データの信頼性を向上させることができる。

 

神経芽腫マス・スクリーニング中止後の「副腎の悪性新生物」死亡率

第25回日本小児がん学会
2009年11月 東京都
西 基*1、花井潤師、福士 勝、矢野公一

 全国レベルでの6か月神経芽腫マス・スクリーニング(NBMS)が中止されてから5~6年が経過した。2003年夏以降に出生した児の大部分は、受検機会を失ったことになる。中止による副腎の悪性新生物死亡率の変化について検討した。NBMS の中止は、実際には2003 年秋頃からいくつかの自治体において始まっていた。2007年末においては2歳以下の者のNBMS 受検者の割合はほぼゼロ、3歳では3割程度と思われる。治療の進歩によって延命がなされると死亡年齢は上昇するから、今後の死亡率の増加が顕著となるのは、比較的年齢の高い層となるかも知れない。

*1 北海道医療大学

 

札幌市における1歳6か月児を対象とした神経芽細胞腫スクリーニング

第61回北海道公衆衛生学会
2009年11月 札幌市
太田 優*1、田上泰子*1、阿部敦子*1、花井潤師*1、福士 勝*1、矢野公一*1、金田 眞*2、長 祐子*2、西 基*3

 札幌市では2006年度から神経芽細胞腫スクリーニングの対象を生後1歳2か月児から1歳6か月児に変更した。1歳6か月児におけるこれまでのスクリーニング結果をまとめた。2009年3月末現在、18MS発見例は11例で、発見頻度は2,670人に1人と高頻度となっている。また、INSS病期1の例では予後不良因子を有しない症例もあり、18MSにおいても予後良好な神経芽細胞腫が存在することが示唆された。しかしながら、発見例のうち最終的に全摘できたのは6例のみで、6MSや14MSよりも病期の進行した症例や切除困難例が多かった。

*1札幌市衛生研究所 *2北海道大学病院 *3北海道医療大学

 

妊婦の禁煙・乳幼児の受動喫煙防止に向けた啓発DVD

北海道小児保健研究会
2009年5月 札幌市
花井潤師、太田優、福士勝、矢野公一、他

 受動喫煙・喫煙防止啓発用DVD「パパ、ママ、タバコをやめて!-小さな命のために-」を製作した。アニメ世代の若年の妊婦、母親、父親をターゲットとし、コンピュータ・グラフィクス(CG)および実写を用いた。出生前の胎児を主人公(CG)とし、共に喫煙者である妊娠中の母親と父親が、医師による受動喫煙防止啓発により禁煙に至る筋書きとした。今後、妊婦対象の母親教室や乳幼児健診で活用していく。


 

1歳6か月児のタバコ曝露の実態・バイオマーカーを用いた検討

第112回日本小児科学会
2009年4月 奈良市
矢野公一、福士勝

 1歳6か月児の保護者947人へのアンケート調査および669児の尿中コチニン測定により、1歳6か月児は両親等の家族からタバコ曝露を受け、家族の喫煙行動に強く影響を受けていることが明らかとなった。

 

未成年者・妊産婦への禁煙支援ガイドラインの作成について

第112回 日本小児科学会
2009年4月 奈良市
加治正行*1、原田正平*2、井埜利博*3、矢野公一
*1静岡市保健福祉子ども局保健衛生部、*2国立成育医療センター成育政策科学研究部、*3群馬パース大学保健科学部

 

妊婦の禁煙・乳幼児の受動喫煙防止に向けた啓発DVD

第11回北海道禁煙指導研究会
2009年5月 札幌市
矢野公一、花井潤師、福士勝、太田優、他

 

バイオマーカーを用いた幼児における受動喫煙の実態調査 -保育園児での検討-

日本小児科学会北海道地方会
2009年7月 札幌市
矢野公一、福士勝、花井潤師、吉永美和、他

 尿中コチニンをバイオマーカーとして、家族による保育園児の受動喫煙の実態を明らかにした。父親に比べて母親の喫煙による児へのタバコ曝露の影響がより大きかった。また、屋外での喫煙など児に配慮した家族の喫煙行動によって、児の受動喫煙が軽減されることを示した。児への受動喫煙防止に向けた家族の喫煙に関する啓発活動が重要である。

 

タバコ対策啓発DVD「パパ、ママ、タバコやめて!小さな命のために」の製作

北海道母性衛生学会
2009年9月 札幌市
矢野公一、花井潤師、福士勝、太田優、他

 受動喫煙・喫煙防止啓発用DVD「パパ、ママ、タバコをやめて!-小さな命のためにー」を製作した。アニメ世代の若年の妊婦、母親、父親をターゲットとし、コンピュータ・グラフィクス(CG)および実写を用いた。出生前の胎児を主人公(CG)とし、共に喫煙者である妊娠中の母親と父親が、医師による受動喫煙防止啓発により禁煙に至る筋書きとした。今後、妊婦対象の母親教室や乳幼児健診で活用していく。

 

バイオマーカーを用いた幼児における受動喫煙の実態調査 -保育園児での検討-

第15回日本保育園保健学会
2009年10月 盛岡市
中山雅之*1、矢野公一、福士勝、花井潤師、他
*1札幌市乳幼児園医協議会

 

タバコ啓発DVD「パパ、ママ、タバコやめて!―小さな命のためにー」

第68回日本公衆衛生学会総会
2009年10月 奈良市
矢野公一

 

妊婦の禁煙・乳幼児の受動喫煙防止に向けた啓発用DVDとその活用

第23回公衆衛生情報研究協議会研究会
2010年1月 和光市
福士勝、太田優、花井潤師、矢野公一、他

 

札幌市における結核集団感染疑い事例の分子疫学解析

日本結核病学会
2009年7月 札幌市
矢野公一、三觜雄*1、築島恵理*2、高橋恭子*1、他

 現在の結核菌型別標準法は、restriction fragment length polymorphism (RFLP)分析法である。しかし本法は、大量のDNAを要するために菌を長期間培養する必要があり、集団・院内感染疑い事例が発生した場合での迅速な検査は困難である。また、バンドの差異の判定が電気泳動等の条件により変動し、多施設間での比較が難しい。一方、近年開発されたvariable numbers of tandem repeats (VNTR)分析法は、PCR法を用いて核酸を増幅するため、少量の未精製のDNAを検体として検査を行うことが可能であり、国内株分析に最適化された分析システムも樹立された。札幌市内の結核集団感染疑い事例のうち、1999~2007年に市内協力医療機関2施設で結核菌が分離され、患者の同意の得られた13事例(30株)を対象とし、RFLP法とVNTR法の両方を用いた分析結果を比較した。結核集団感染疑いの13事例でのJATA(12)-VNTR分析法による解析結果はRFLP法とほぼ一致した。VNTR法は、集団感染疑い事例の迅速な解析方法として期待される。

*1札幌市保健所、*2札幌市保健福祉局保険医療・収納対策部健診・医療担当

 

札幌市の新型インフルエンザの現状

第11回札幌マクロライド研究会
2010年1月 札幌市
矢野公一

 2009年4月にメキシコで新型インフルエンザの発生が報告されてからの、札幌市(特に札幌市衛生研究所)で行った新型インフルエンザ対策について報告した。
 札幌市では4月28日に感染症対策本部会議を開催、札幌市衛生研究所は5月3日に新型インフルエンザPCR検査体制を整え、全数把握検査に備えた。札幌市では、6月11日に初めてハワイ渡航歴のある20歳男性でPCR陽性を確認した。さらに7月2日には海外渡航歴のない患者が発生した。7月24日に全数把握からサーベイランス体制に変更になったが、この時点で58例の新型インフルエンザ陽性者を確認した。8月25日には集団サーベイランスでのPCR検査が終了となった。その後、札幌市での患者数が増加し、10月15日に定点当り報告数が30を超え、第42週には74となった。定点報告では、当初10~14歳の患者が40%前後を占めたが、その後5~9歳の患者が増加し、さらに4歳以下の患者が増加する推移を示した。また、PCR陽性を確認している入院患者109人で調査したところ、5~9歳の患者が最多であった。
 第45週までに、新型インフルエンザ脳症が8例届け出され、道内の死亡者は5名であった。なお、当初、医療機関から迅速陽性との報告例に偽陽性が多く見られた。また、8月22日採取の12歳女児から、タミフル耐性新型インフルエンザウイルス(H275Y)が検出されたが、その後の耐性ウイルスの蔓延はなかった。さらに、新型インフルエンザHI抗体価測定系を確立し、医療従事者14名に新型インフルエンザワクチンを1回接種後の、HI抗体価を測定した。その結果、13

 

学校給食におけるヒスタミン食中毒事件の原因調査について

第98回日本食品衛生学会
2009年10月 函館市
水嶋好清、竹下紀子、酒井昌昭、廣地敬、坂本裕美子、矢野公一、森田直秀*1、伊藤奈緒子*1、牧里江*1、川島員登*1、江湖正育*1、山口敏幸*1、吉田靖宏*1、高橋広夫*1

平成21年1月に札幌市内の小学校において「まぐろのごまフライ」によるヒスタミン食中毒が発生した。札幌市内の学校給食では初の食中毒の発生であり、また患者数も279名と多数であったこと等を踏まえ、原因究明と再発防止に向けて精力的に対応し、若干の知見を得たので報告した。

*1札幌市保健所
 

ヒスタミンによる食中毒について

第61回北海道公衆衛生学会
2009年11月 札幌市
坂本裕美子、川合常明、広地敬、竹下紀子、小金沢望、酒井昌昭、水嶋好清、矢野公一、吉田靖宏*1

 2009年1月、札幌市内の集団給食施設において、マグロのゴマフライが原因食と思われるアレルギー様食中毒が起こり279名の有症者が発生した。この食中毒がヒスタミンに起因したことの検証とヒスタミン生成要因について検討し、以下の通り報告した。
 (1)給食残品のマグロ10検体についてHPLC法によるヒスタミン測定を実施した結果、10検体すべてからヒスタミンが検出された。(検出濃度5~270mg/100g)これより、本事例がヒスタミンのよる食中毒であることが推察された。
 (2)当該品と同一ロットのマグロサンプルを用いて給食施設搬入時から調理品完成までの再現実験を実施しヒスタミンを測定したが、不検出であり、原因究明には至らなかった。
 (3)ヒスタミン生成要因検討のためミンチ状マグロとヒスタミン生成培地にヒスタミン生成菌であるPaoultellaplanticolaを低濃度から高濃度に調整(7.7×103~1.3×106CFU/g)したものを添加しサンプルとした。このサンプルを温度を変えて保存し、一定時間後に取り出しヒスタミンを測定した。その結果25℃24時間保存後のすべてのサンプルにおいて310.8mg/100g以上のヒスタミンが測定された。このことより、ヒスタミン生成菌が付着した食品を室温(25℃)に長時間放置することにより食中毒症状が起きるといわれる100mg/100g以上のヒスタミンが産生される可能性が示唆された。
*1札幌市保健所

 

札幌市における主な感染症の発生動向」公開ホームページにおけるアクセス数

第61回北海道公衆衛生学会
2009年11月 札幌市
扇谷 陽子、山本 優、水嶋 好清、矢野 公一

札幌市衛生研究所のホームページに掲載している「札幌市における主な感染症の発生動向」について、今後の提供情報を充実させるため、そのアクセス状況を調査・解析した。この結果、最もアクセス数が多いのは、全ての情報への窓口となるトップページで、平成20年度の総アクセス数は17,806であった。個別情報としてはインフルエンザ関連情報のサイトへのアクセスが多かった。また、5月に公開した新型インフルエンザ関連情報のサイトは、この月のアクセス数が1,191と、トップページに次いでアクセスが多い状況であった。

 

札幌市におけるインフルエンザ定点報告の患者年齢構成

第23回公衆衛生情報研究協議会研究会
2010年1月 和光市
扇谷陽子、水嶋 好清、矢野 公一

 2009年4月に初めて報道された新型インフルエンザ pandemic H1N1 2009 (以下、新型インフルエンザと略) は、多くの人が免疫を保有していないという点において、季節性インフルエンザと異なる。そこで、新型インフルエンザ流行における疫学情報を得ることを目的として、インフルエンザ定点医療機関から報告のあった患者数の年齢構成を調査し、過去4シーズンにおける季節性インフルエンザと比較した。この結果、新型インフルエンザでは10~19歳の患者の報告割合が高く、0~4歳の報告割合が低い傾向にあることが判った。成人については報告数が少なく、年齢構成の変動が、明確に把握しがたい状況であった。

 

食品添加物一日摂取量調査について

第61回北海道公衆衛生学会
2009年11月 札幌市
浦島幸雄、菅原雅哉、酒井 昌昭、水嶋好清、矢野 公一

 本調査は、厚生労働省が中心となり1982年度から継続的に行われているものである。当所では、調査開始時から本事業に参加し、各種の食品添加物を分析してきた。2006年度からは、最新の国民栄養調査に基づいて新たに策定された食品喫食量データを用い、2008年度までの3年間にキシリトール、ソルビン酸、EDTAを分析した。
 この結果、キシリトール一日総摂取量は、36.65mg/人/日であり、個別食品の分析結果及び製品の含有量表示と概ね一致した。また、ソルビン酸の一日総摂取量は、6.35mg/人/日で、個別食品の分析結果から計算上求められる値とほぼ一致し、ソルビン酸表示のある食品由来と考えて矛盾は無く、マーケットバスケット方式の妥当性が確認された。なお、EDTAの分析結果では、いずれの検体からも検出されなかった。

 

 HPLCによるヒスタミン測定法の検討

第46回全国衛生化学技術協議会年会
2009年11月 盛岡市
竹下 紀子、酒井 昌昭、水嶋 好清、矢野 公一

 平成21年1月に発生した市内学校給食のマグロフライによる大規模なヒスタミン食中毒の原因究明の過程において、ヒスタミンの定量試験の改善を目的とした検討を行った。衛生試験法注解の方法に従って測定すると、蛍光誘導体化の過程で無水炭酸水素ナトリウムがサンプルによって不均一に混合し、溶液のpHにばらつきが生じる。無水炭酸水素ナトリウムを飽和炭酸水素ナトリウム溶液に変え、溶液のpHを調整しながら添加回収試験を行ったところ、pH9程度に調整した場合にもっとも感度が良く、ばらつきも小さかった。以上により、HPLCによりヒスタミンを定量する際には、蛍光誘導体化時のpHが添加回収率の向上に大きく影響することが示唆された。

 

O式パッシブサンプラー法におけるSO2捕集剤の検討(第2報)

第50回大気環境学会年会
2009年9月 横浜市
惠花孝昭、野口 泉*1、樋口慶郎*2

 O式パッシブサンプラー法(PS法)は、全環研第4次酸性雨全国調査から採用され、SO2調査にも用いられている。しかし、フィルターパック法(FP法)と比較して、低濃度側でより低値を示す傾向があることが知られている。第1報では、PS法に用いる捕集剤をトリエタノールアミン(PS従来法)から炭酸カリウム(PS改良法)に変更したところ、低濃度側において濃度値の改善が見られたことを発表した。今回、データの積み上げとともに、PS改良法において新たな分子拡散係数を用いた濃度換算式を求め、FP法との比較を行った。その結果、強い正の相関がみられ、低濃度側においても値がよく一致した(y=0.9727x+0.0105、r=0.9923)。また、PS改良法とPS従来法での濃度相関も比較的高く(y=1.3749x、r=0.9304)、PS従来法からPS改良法への濃度変換は可能と考えられた。今後は捕集効率の変動等についても検討を加える予定である。

*1 北海道環境科学研究センター、*2 (株)小川商会

 

LC/MSによる化学物質分析法の基礎的研究【2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)の分析法】

第18回環境化学討論会

2009年6月 つくば市

中島純夫

 MBTは、殺菌剤、防かび剤、防汚剤、合成中間体、加硫剤、加硫促進剤などに使用されている。水質、底質試料についてLC/MS/MSによる分析法の検討を行った。MBTは、濃縮操作等で分解されやすい。水質試料は、固相カートリッジで抽出、メタノール2mLで溶出してSRM測定する。底質試料は1M-KOHで加熱還流抽出し、pH2に調整し、固相抽出しメタノール2mLで溶出しSRM測定する。札幌市内で採取した河川底質試料の全試料からMBTが検出された。

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