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更新日:2016年6月3日

札幌市衛生研究所-調査研究(2006)

ハイリスク・スクリ-ニングにおいてGC/MSとタンデム質量分析計の有用性を示した2診断例(PDF:211KB)

1990年から実施しているハイリスク・スクリーニングにおいて、2005年からタンデム質量分析計によるアミノ酸およびアシルカルニチン分析とガスクロマトグラフ質量分析計による有機酸分析の併用を開始した。この新しいシステムにより、グルタル酸尿症2.型1例を迅速に化学診断できたとともに、プロピオン酸血症の1例についても、より精度の高い化学診断が可能となることが明らかになった。(29-37ページ)

 GC/MS(SIM)標準添加法による尿中メバロン酸の定量(PDF:323KB)

GC/MS/SIMを用い、標準添加法による尿中メバロン酸の定量法を検討した。

前処理法は、Woollen2)らの方法に準じ、リン酸酸性で一晩放置し、尿中のメバロン酸をメバロノラクトンとし、酢酸エチルで抽出、濃縮、定容した。得られた溶液の一定量に、溶媒を加えたものと、メバロノラクトンの標準溶液を加えたものをそれぞれガスクロマトグラフに注入し、標準添加法により尿中の濃度を測定した。尿にメバロノラクトンを添加して行った添加回収試験の回収率は70.6~99.6%と良好であった。

この方法を用いて、ハイリスク検査終了後の凍結保存尿47検体についてメバロン酸濃度とクレアチニン比を定量したところ、平均値±CV%は、それぞれ、0.075 μg/ml urine ± 106%、0.24 μg/mg Creatinine ± 73.3% であり、症状と尿中メバロン酸濃度との間に特に関連性は見られなかった。また、定期的に発熱を繰り返す男児の尿中メバロン酸濃度とクレアチニン比は、それぞれ0.060 μg/ml urine、0.036 μg/mg Creatinineと平均値よりも低く、Hyper-IgD syndromeは否定的であった。(38-41ページ)

 タンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングの試験研究 2005年度実施成績(PDF:841KB)

札幌市では2005年4月から、希望者を対象としたタンデム質量分析計による多項目新生児マス・スクリーニングのパイロットスタディを開始した。2006年3月までの1年間で15,377件を新生児代謝異常症等検査で受付けたが、このうち、15,156件(98.6%)がタンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングの検査を希望した。検査の結果58例を再採血,3例を精密検査としたが,患者は見出されなかった。再採血の内訳はグルタル酸尿症2.型疑いが最も多く29例あった。(42-49ページ)

 植物性たん白使用食品における遺伝子組換え大豆挿入遺伝子の検出状況(PDF:58KB)

遺伝子組換え作物の使用に関する表示の省略が可能な加工食品における遺伝子組換え作物挿入遺伝子の検出状況を把握することを目的として、表示の省略が可能な量の範囲で、植物性たん白・大豆たん白が使用されている市販の加工食品22製品について、ラウンドアップ・レディ・大豆40年3月2日系統(RoundUp ReadyTM Soybean、以下RRSと略)のPCRによる検出を試みた。
定性検査について、プライマーは、大豆に内在するレクチン遺伝子検知用としてLe1-n02、RRS挿入遺伝子検知用としてRRS-01、GMO7月8日、Sttmf3a/r2aの3種を用いた。Le1-n02を用いてPCRを行った結果、全ての食品からレクチン遺伝子が検出され、このことからRRSの含有を調べることが可能と判断した。RRS検知用プライマーを用いてPCRを行った結果、JAS分析試験ハンドブックに示されたRRS-01で22食品中16食品(73%)、11食品(50%)は3種類全てが陽性であった。しかし、目安としての定量検査の結果、意図しない混入が検出されたものと考えられた。現状の定性検査の検知技術で、表示の省略が可能な量の範囲で植物性たん白等を使用した多数の食品において、原料となった大豆に5%未満含まれるRRSを検出できる状況にあることが判明した。(50-56ページ) 

 LC/MSによるアセフェート、オメトエート、メタミドホス同時分析法(PDF:107KB)

検出事例の多いアセフェート、メタミドホス及びこれらと同じ個別検査法が通知されたオメトエートついて、野菜、果実、大豆ではGC/MS一斉分析法で抽出したアセトニトリル溶液を用いて、茶では熱水抽出液を用いて、LC/MSで分析可能かどうか検討した。短時間で分析可能であったが、回収率は40.1~78.4%であった。(57-62ページ)

GC/MSによる農産物中の残留農薬一斉分析法の検討(PDF:103KB)

ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた多種農薬の一斉分析法について、8種の農産物を用いて添加回収試験を行った。アセトニトリルによる抽出後、塩析による水分除去、オクタデシルミニカラムおよびSAX/PSAミニカラムを用いた精製などにより試験溶液を調製した。添加回収試験の結果、161農薬中101農薬(63%)の回収率が50%から120%の範囲にあり、この一斉分析法によりスクリーニング分析が可能と考えられた。(63-76ページ)

札幌市におけるAOT40を用いたオゾン濃度の評価(PDF:86KB)

大気中のオゾンから樹木や農作物を保護するためにオゾン濃度の評価法としてAOT40(Accumulated Exposure Over Threshold of 40ppb)が知られており、樹木に影響が現れるクリティカルレベルは4月から9月までの日中の6ヶ月間で10ppm・hと示され、国内でもこのレベルを超える地点がみられる。

札幌市では光化学オキシダント(主にオゾン)のモニタリングを、一般環境大気測定局のうち通年測定が2地点、6ヶ月測定が8地点で実施しており、AOT40を用いて2004年度、2005年度の2ヵ年のオゾン濃度の評価を行ったので結果を報告する。
年測定の2地点では2004年度、2005年度ともクリティカルレベルの10ppm・hを下回った。また、8地点は3月から8月までの6ヶ月間を測定しており、5ヶ月間のAOT40で評価が可能かを検討した結果、2地点の6ヶ月間のAOT40に対し9月分の寄与率は1%前後であるので、4月から8月までの5ヶ月間でも評価は可能と考えられた。2004年度の1地点で11.3ppm・hであったが、その他の9地点と2005年度のすべての地点で下回り0.23~7.38ppm・hであった。また、夏季から冬季にかけて各月のAOT40は低いが、3月から5月の3ヶ月間のAOT40の寄与率が年間値に対して83~96%を示し、AOT40の増加の原因としては対流圏に降下した成層圏オゾンの流入による影響が考えられる。(77-81ページ)

鉱物油流出事故時のGC/MSによる油種迅速識別法(PDF:159KB)

鉱物油による河川等の公共用水域や土壌の汚染事故時の不明流出油種のGC/MSによる識別には、軽油とA重油の迅速な識別が重要である。鉱物油濃度に応じた簡易な前処理とA重油中に含まれるイオウ化合物等に由来する成分のm/z184、190、198、212によるマスクロマトグラムパターンを比較することで、迅速な油種識別が可能であった。ヘキサンで希釈した試料では、スキャン測定におい8mg/Lレベルでも軽油とA重油の識別が可能であった。(77-81ページ)

ゴルフ場使用農薬のHPLC及びGC/MSを用いた分析方法の検討について(PDF:65KB)

札幌市のゴルフ場において使用されている農薬のうち、使用量が多いにも拘わらずその分析法が定まっていないものについて、HPLC及びGC/MSを用いた分析法の検討を行った。対象とした農薬は、HPLC法でチアメトキサム、クロチアニジン、MCPA、テブフェノジド、ヒメキサゾル、フロラスラム、GC/MS法でテトラコナゾールである。

検討は2段階に分け実施した。最初に濃縮操作を行わずに定量下限0.5mg/Lを目標として行った。次に、固相抽出法を用いてさらに低濃度の定量下限1μg/Lを目標として検討した。その結果何れの検討においても概ね満足すべき結果が得られた。(89-95ページ)


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札幌市保健福祉局衛生研究所保健科学課

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